先に結論:傍関節唇嚢胞による肩甲上神経絞扼
- 肩の関節唇の断裂に伴ってできる傍関節唇嚢胞(ガングリオン)が、肩甲上切痕や棘窩切痕に広がると、肩甲上神経を圧迫します
- 棘窩切痕の嚢胞では棘下筋だけ、肩甲上切痕では棘上筋と棘下筋が障害され、MRIでは筋のT2高信号(脱神経性浮腫)→脂肪変性・萎縮が見られます
- 傍関節唇嚢胞はT2強調像で最もよく見える関節唇に接した嚢胞で、多くは関節唇断裂を伴います
- 肩の痛みや外旋の筋力低下があるときは、MRIで関節唇の後上方の断裂と嚢胞を探します
傍関節唇嚢胞
・関節唇の断裂に伴って生じる嚢胞。肩関節のMRI 2211件のうち51個(2.3%)に見られ、57%は後方の関節唇に接していた。関節唇断裂はMRIで53%、関節鏡で88%に確認された(Tung 2000)。
・MRIでは境界明瞭の単房性あるいは多房性で造影効果を示さない液体貯留。
・肩甲棘よりも上方の肩甲上切痕(suprascapular notch)および下方の棘窩切痕(spinoglenoid notch)に進展し、肩甲上神経を圧迫することがある。
・肩甲上神経(棘上・下筋を支配)の圧迫→棘上・下筋の萎縮(肩甲上神経絞扼症候群)
・この肩甲上神経絞扼症候群の原因としては、最多である傍関節唇嚢胞(ガングリオン、多くは棘窩切痕)のほか、スポーツ選手の繰り返しの微小外傷が多く、腫瘍、肩甲骨骨折、外傷による牽引はまれな原因である。慢性的な肩の痛みの2%ほどがこの絞扼によるとされる(Clavert 2014)。
・神経絞扼を来すのは肩甲上神経のほか、腋窩神経にも起こりうる(外側腋窩間隙症候群)。
傍関節唇嚢胞による神経絞扼症候群
p:posterior paraglenoid labral cysts→肩甲上神経絞扼症候群の原因。
i: inferior paraglenoid labral cysts→外側腋窩間隙症候群の原因。
神経絞扼症候群
・解剖学的に狭い部分になんらかの圧迫が加わり絞扼されることにより生じる障害。
- 肩関節:肩甲上神経絞扼症候群、外側腋窩間隙症候群
- 肘関節:肘部管症候群、前骨間神経症候群、後骨間神経症候群
- 手関節:手根管症候群、尺骨管症候群(Guyon管症候群)
肩甲上神経絞扼症候群のMRI画像診断
・麻痺を来した棘上筋もしくは棘下筋は、脱神経・浮腫によりT2WIで高信号を呈する。
・関節唇嚢胞は、関節唇に接する嚢胞として認められる。関節唇嚢胞は関節腔と直接交通しないことが多く、MR関節造影では造影剤が嚢胞内に入らないことがあるため、T2強調像(脂肪抑制)を併せて撮像して評価する。多房性の場合もあり。
・治療は関節鏡での関節唇修復が中心で、14研究206例の系統的レビューでは、嚢胞の除圧を追加した群で嚢胞の消失95.5%、修復のみの群でも92.2%と、どちらも良好な成績であった(Kim 2023)。
嚢胞の場所と障害される神経・筋の対応
| 嚢胞の場所 | 圧迫される神経 | 萎縮・浮腫が出る筋 |
|---|---|---|
| 肩甲上切痕(棘上窩側) | 肩甲上神経 | 棘上筋と棘下筋 |
| 棘窩切痕(関節唇の後上方) | 肩甲上神経の棘下筋枝 | 棘下筋だけ |
| 関節唇の下方(四辺形間隙側) | 腋窩神経 | 小円筋・三角筋 |
神経を圧迫した嚢胞8個は平均3.1cmと大きく、後方か下方の関節唇の隣にありました(Tung 2000)。
傍関節唇嚢胞でよくある疑問(Q&A)
Q. 関節ガングリオンと同じものですか?
A. 肩の関節唇のそばにできるガングリオンを、場所に注目して傍関節唇嚢胞と呼んでいます。
Q. 針で吸い出せば治りますか?
A. 症状は一時的に軽くなりますが、4例中3例で再発しました(Tung 2000)。原因の関節唇断裂を関節鏡で修復するのが治療の中心です。肩の痛みや力の入りにくさが続くときは整形外科で相談してください。
参考文献
- Tung GA, Entzian D, Stern JB, et al. MR imaging and MR arthrography of paraglenoid labral cysts. AJR Am J Roentgenol. 2000;174(6):1707-15. PubMed
- Saran S, Shirodkar K, Gavvala SN, et al. Supraspinous Fossa: Anatomy and Pathology. Indian J Radiol Imaging. 2024;35(1):139-147. PubMed
- Rubin DA. Nerve and Muscle Abnormalities. Magn Reson Imaging Clin N Am. 2020;28(2):285-300. PubMed
- Kim DH, Sohn HJ, Kim JH, et al. Clinical Outcomes Following Arthroscopic Decompression and Repair versus Repair Alone in Patients with a Concomitant Spinoglenoid Cyst and SLAP Lesion: A Systematic Review. Diagnostics (Basel). 2023;13(14):2364. PubMed
- Clavert P, Thomazeau H. Peri-articular suprascapular neuropathy. Orthop Traumatol Surg Res. 2014;100(8 Suppl):S409-11. PubMed
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