先に結論:Valsalva洞動脈瘤破裂
- Valsalva洞(バルサルバ洞)は大動脈弁のすぐ上の3つの膨らみ(右冠動脈洞・左冠動脈洞・無冠動脈洞)です
- Valsalva洞動脈瘤は大動脈基部の膨らみ(Valsalva洞)が瘤状に拡張したもので、右冠動脈洞に多く、アジア人の男性に比較的多く見られます
- 破裂すると右室・右房へ血液が流れ込み(左→右シャント)、突然の胸痛・息切れ・連続性雑音と心不全を起こします。心室中隔欠損を合併することがあります
- 診断は心エコー・心電図同期造影CTで、瘤の形と破裂部位を評価し、手術(またはカテーテル治療)で修復します
症例 50歳代女性 胸部圧迫感

引用:Radiopaedia(Ruptured sinus of Valsalva aneurysm)
心電図同期造影CTの斜冠状断像です。大動脈基部の無冠尖洞(右後洞)から生じたValsalva洞動脈瘤が右房(RA)側へ突出し、破裂部(白矢印)で右房と交通しています。Aoは大動脈、LVは左室、PAは肺動脈です。
Valsalva洞動脈瘤破裂
- 大動脈の起始部のValsalva洞が瘤状に拡張し、破裂する疾患。
- Valsalva洞動脈瘤は大動脈起始部と右心系の中隔の部分に生じ、右冠動脈洞から生じることが最も多く、破裂は主に右心系(右室>右房)に生じ、左→右シャントを生じる。
- 先天性と後天性のいずれでも発生するが、先天性Valsalva 洞動脈瘤は、先天性心疾患のなかでは発生率が低く、男性・アジア人に多い。
- 後天性Valsalva洞動脈瘤の原因として、感染(梅毒、結核、細菌性心内膜炎)、動脈硬化、外傷、Marfan症候群などがある。
- 破裂は成人期に生じることが多い。手術を受けた129例の報告では男性88例・女性41例、平均年齢39.1歳だった(Takach 1999)。
- 単独で生じることもあるが、心室中隔欠損に合併することもあり。
- 破裂するまでは無症状。
- 破裂症状は軽症~重症と様々。突然の胸痛、呼吸困難。破裂を期に進行する心不全が出現することもある。
- 脈圧増大、心雑音(突発性、多様性、右下方への伝播性のある雑音) を生じる。
- 胸部単純X線では、右房、右室に破裂したものは、肺動脈弓の突出、肺血流量の増加による肺血管陰影の増強、同時に左室の拡大を伴うため、心陰影は拡大。
- 心電図同期のCT撮影で、Valsalva洞動脈瘤の形態および周囲組織との関係を明瞭に把握できる。
- 造影CT で、Valsalva洞動脈瘤と上行大動脈瘤や縦隔腫瘍との鑑別ができる。
- 治療は早期に開心術にて心内修復術。近年は外科修復に加えて、カテーテルによる閉鎖術も治療の選択肢に加わっている。また術前に心電図同期CTAで冠動脈疾患を除外できれば、侵襲的冠動脈造影を省略できることが多い。

突然の胸痛や息切れがあれば、早めに医療機関(救急)を受診してください。
Valsalva洞の解剖(どこにある?)
- 大動脈の付け根で、大動脈弁の3枚の弁尖のすぐ上にある膨らみ。右冠動脈洞から右冠動脈、左冠動脈洞から左冠動脈が出て、無冠動脈洞からは冠動脈が出ない。
- 右冠動脈洞は右室流出路に、無冠動脈洞は右房に接するため、それぞれ右室・右房へ破れやすい(上の症例は無冠動脈洞→右房)。
心破裂のCTとの違い
- 「心破裂」は心筋梗塞のあとなどに心室の壁が裂ける別の病気で、CTでは心嚢内の血液(CT値の高い心嚢液)や仮性瘤がみられることがある。
- 左室の仮性瘤は破裂して心タンポナーデ・ショックにつながりやすく、真性の心室瘤との区別が大切(Cho 2006)。
関連記事:大動脈瘤破裂のCT画像所見|後腹膜血腫・crescent sign(切迫破裂)と治療適応
参考文献
- Bricker AO, Avutu B, Mohammed TL, et al. Valsalva sinus aneurysms: findings at CT and MR imaging. Radiographics. 2010;30(1):99-110. PubMed
- Takach TJ, Reul GJ, Duncan JM, et al. Sinus of Valsalva aneurysm or fistula: management and outcome. Ann Thorac Surg. 1999;68(5):1573-1577. PubMed
- Weinreich M, Yu PJ, Trost B. Sinus of valsalva aneurysms: review of the literature and an update on management. Clin Cardiol. 2015;38(3):185-189. PubMed
- Cho MN, Mehta SK, Matulevicius S, et al. Differentiating true versus pseudo left ventricular aneurysm: a case report and review of diagnostic strategies. Cardiol Rev. 2006;14(6):e27-30. PubMed
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