先に結論:腹部内臓動脈瘤
- 腹部内臓動脈瘤は脾動脈(約6割)に最も多く、次いで肝動脈です。多くは無症状で、CTで偶然見つかります
- 仮性動脈瘤(膵炎・外傷・術後・感染など)は破裂しやすく、大きさにかかわらず治療の対象です。膵十二指腸動脈アーケードの動脈瘤も小さくても治療を考えます(腹腔動脈起始部の狭窄に伴うことが多い)
- 真性動脈瘤は2cmを超える・増大する・妊娠可能年齢の女性・症状がある場合に、主に血管内治療を考えます
- 脾動脈瘤の治療の目安は、米国血管外科学会(SVS)が3cm超、欧州のCIRSEが2cm超と学会によって異なります
腹部内臓動脈瘤
- 腹部大動脈より分岐する血管もしくはその分枝の異常拡張。
- 破裂時以外は無症状のことが多いが、破裂すると致死的となりうる。
- 破裂時以外は症状に乏しい。
腹部内臓動脈瘤の分類
真性動脈瘤:動脈の外膜が保たれている。
CIRSEの定義では、その部位・性別で予想される径より50%を超えて局所的に拡張し、動脈壁の3層すべてを含むものを真性動脈瘤とし、外膜や周囲組織だけで囲まれた破綻を仮性動脈瘤としている(Rossi 2024)。
- 動脈硬化
- 先天性動脈瘤
- 血流依存性(門脈圧亢進、腹腔動脈狭窄)
仮性動脈瘤:外膜が破れ、周囲に血液が漏れた状態。出血性ショックの危険あり。
- 膵炎・感染などの炎症
- 外傷・術後など医原性
- ベーチェット病
- 結節性多発動脈炎(PN)
- 大動脈炎症候群
- 分節性動脈中膜融解(segmental arterial mediolysis:SAM)
腹部内臓動脈瘤の発生頻度
- 脾動脈(60%)>>肝動脈(20%)>上腸間膜動脈、腹腔動脈、胃および胃大網動脈(それぞれ5%)、空腸結腸動脈、膵十二指腸動脈、胃十二指腸動脈、下腸間膜動脈。
- 破裂の頻度は、肝動脈>膵十二指腸動脈(膵十二指腸動脈アーケード)>上腸間膜動脈>>脾動脈。
治療適応
- 仮性動脈瘤は絶対的治療適応となる。
- サイズが重要:瘤径が20mm以上のとき。腎動脈瘤も同様に2cm超が治療の目安とされる。
- また、膵十二指腸動脈アーケードはサイズによらず適応。正中弓状靱帯症候群(腹腔動脈起始部の圧迫)に伴う膵十二指腸動脈・胃十二指腸動脈の真性瘤72例の文献レビューでは、破裂例の瘤径(平均12.3mm)は非破裂例(30.8mm)より小さく、大きさだけでは破裂を予測できないため、サイズにかかわらず早めの治療が支持されている。
- 壁在血栓、壁の石灰化なども考慮される。
脾動脈瘤の頻度と治療適応(学会による違い)
- 脾動脈瘤は内臓動脈瘤の60〜80%を占めて最も多く、女性に多い。門脈圧亢進症と妊娠が危険因子で、妊娠中はホルモンの変化により破裂の危険が高まるとされる(Rossi 2024)。
- 無症候性の脾動脈瘤・腎動脈瘤の治療の目安は、従来2cmとされてきた。米国血管外科学会(SVS)の2020年のガイドラインは3cm超での治療を推奨しているが、CIRSE(2024年)は2cmから3cmへ引き上げる根拠は強くないとして、2cm超(特に嚢状・末梢側・治療しやすい解剖)での血管内治療を支持している(Rossi 2024)。
- どちらの学会も、妊娠可能年齢の女性の瘤や仮性動脈瘤は、より小さいサイズでも治療を考えるとしている(Chaer 2020、Rossi 2024)。
血管内治療の適応
- 症候性の内臓・腎動脈瘤(VAA)はすべて
- 妊娠可能年齢の女性における無症候性の内臓・腎動脈瘤(VAA)はすべて
- 内臓・腎動脈仮性瘤(VAPA)はすべて
- 無症候性であっても、胃動脈、胃大網動脈、膵十二指腸動脈、胃十二指腸動脈、腸間膜動脈、結腸動脈の動脈瘤(VAA)はすべて
- 無症候性の脾動脈瘤または腎動脈瘤で 2 cm超
とくに嚢状で、末梢側に位置し、かつ/または治療に有利な解剖学的条件がある場合 - 無症候性の肝動脈瘤、腹腔動脈瘤、空腸動脈瘤、回腸動脈瘤で 2 cm超
- 無症候性の動脈瘤(VAA)で、年間0.5 cm超の増大を示すもの
Cardiovascular and Interventional Radiology. 2024;47(1):26-35.
参考文献
- Rossi M, Krokidis M, Kashef E, et al. CIRSE Standards of Practice for the Endovascular Treatment of Visceral and Renal Artery Aneurysms and Pseudoaneurysms. Cardiovasc Intervent Radiol. 2024;47(1):26-35. PubMed
- Chaer RA, Abularrage CJ, Coleman DM, et al. The Society for Vascular Surgery clinical practice guidelines on the management of visceral aneurysms. J Vasc Surg. 2020;72(1S):3S-39S. PubMed
- Jesinger RA, Thoreson AA, Lamba R. Abdominal and pelvic aneurysms and pseudoaneurysms: imaging review with clinical, radiologic, and treatment correlation. Radiographics. 2013;33(3):E71-96. PubMed
- Karanasios E, Ragab Z, Cavenagh H, et al. Characteristics and Trends in Median Arcuate Ligament Syndrome (MALS) Associated Visceral Artery Aneurysms: A Systematic Descriptive Review of the Literature. Vasc Endovascular Surg. 2024;58(5):512-522. PubMed
- Leone N, Migliari M, Baresi GF, et al. Visceral artery aneurysms: A shred of light on rare entities. Scand J Surg. 2025;114(3):390-399. PubMed
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