目次
結節性多発動脈炎(PAN:polyarteritis nodosa)とは?
- 中等度の太さの動脈と細い太さの動脈に炎症が生じる疾患。
- 全身臓器に分布する血管に動脈炎をきたし、様々な症状を起こす。
- 壊死性血管炎を起こすため、動脈壁の拡張や動脈瘤の形成、狭窄や閉塞などを起こし、各臓器に虚血や出血を起こすことがある。
- MPO-ANCAは通常陰性。(一方で同じ結節性動脈周囲炎に分類される顕微鏡的多発血管炎(MPA)では陽性となることが多い)
結節性多発動脈炎の症状は?
症状は発症した臓器により多彩。
- 全身症状(発熱・体重減少・高血圧)
- 筋肉関節症状
- 皮膚症状(紫斑、潰瘍、結節性紅斑)
- 腎障害
- 末梢神経炎
- 中枢神経症状(脳梗塞、脳出血)
- 消化器症状(消化管出血、穿孔、梗塞)
- 心症状(心筋梗塞、心外膜炎)
- 肺・胸膜症状
- 眼症状
などが見られる。
結節性多発動脈炎の診断基準は?
主要症候
- 発熱(38°C以上,2週間以上)と体重減少(6か月以内に6kg以上)
- 高血圧
- 急速に進行する腎不全、腎梗塞
- 脳出血、脳梗塞
- 心筋梗塞、虚血性心疾患、心膜炎、心不全.
- 胸膜炎
- 消化管出血、腸閉塞
- 多発性単神経炎
- 皮下結節皮膚潰瘍、壊痕、紫斑
- 多関節痛(炎)、筋痛(炎)、筋力低下
組織所見
中・小動脈のフィブリノイド壊死性血管炎の存在
血管造影所見
腹部大動脈分枝(特に腎内小動脈)の多発小動脈瘤と狭窄・閉塞
判定
- 確定(definite) :主要症候2項目以上と組織所見のある症例。
- 疑い(probable) :
a)主要症候2項目以上と血管造影所見の存在する例。
b)主要症候のうち発熱と体重減少を含む6項目以上存在する例。
参考となる検査所見として、白血球数増加、血小板増加、CRP高値、血沈亢進などがある。
(厚生労働省特定疾患難治性血管炎班2006年改訂)
結節性多発動脈炎の画像所見は?
- 消化器:粘膜の肥厚、腸閉塞、SMA/IMAの動脈瘤、肝動脈瘤、脾動脈瘤、肝梗塞、脾梗塞
- 泌尿器:腎動脈瘤、尿管閉塞、腎周囲血腫、膀胱壁肥厚など
症例 20 歳代の男性。
不明熱,倦怠感および頭痛を主訴に来院。蛋白尿,血尿,高血圧症,腎機能低下を指摘され,精査となった。赤沈は亢進しているが,ANCAは陰性で ある。診断時の左腎動脈造影写真と治療開始後1年目の左腎動脈造影写真を示す。
2016年放射線科診断専門医試験63より引用。
治療前は、腎内小動脈に多発小動脈瘤を認めているが治療後にはそれらが消失。
ANCA陰性などからPANが疑われる。
症例 20歳代の男性。発熱がある。
2018年放射線科診断専門医試験55より引用。
腎動脈造影にて多数の小さな動脈瘤を認めている。
結節性多発動脈炎(PAN:polyarteritis nodosa)を疑う所見です。
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