肺原発悪性リンパ腫(Primary Pulmonary Lymphoma, PPL)は、肺に限局して発生するまれな悪性腫瘍で、特に低悪性度B細胞性リンパ腫(MALTリンパ腫)が多くを占めます。
先に結論:肺原発悪性リンパ腫のCT
- 肺だけにできる悪性リンパ腫はまれで、多くはゆっくり進むMALTリンパ腫です。無症状で健診や他の病気のCTで偶然見つかることが多く、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患との関連が知られています
- CTでは浸潤影や腫瘤の中を空気の入った気管支(air bronchogram)や血管(CT angiogram sign)がそのまま通るのが特徴で、肺炎のように見えるのに抗菌薬で治らない・何か月も変わらないことが手がかりです
- 浸潤性粘液性腺癌・器質化肺炎・慢性好酸球性肺炎などと似るため、診断には気管支鏡やCTガイド下の生検が必要です
※肺炎と言われて治療しても影が消えないときは、呼吸器内科で相談してください。
肺原発悪性リンパ腫の疫学
- 肺の腫瘍全体の0.5〜1%とまれで、最も多い型はMALTリンパ腫(Patel 2025)
- 肺内リンパ組織(BALT:気管支関連リンパ組織)由来の疾患
- 中高年に多い(肺MALTリンパ腫24例の検討で27〜78歳、平均56歳)(King 2000)
- Sjögren症候群などの自己免疫疾患との関連が知られる(24例中6例に自己免疫疾患の既往)(King 2000)
臨床症状
多くの症例では無症状で、健康診断や他疾患のCTで偶然発見されます。24例の検討でも約半数が無症状で、気管支鏡の診断率は30%にとどまり、確定診断に外科的生検(開胸・胸腔鏡)を要した例が66.7%でした(Kim 2004)。
症状がある場合は以下の通り:
- 咳などの呼吸器症状(24例中46%)(Kim 2004)
- 痰、呼吸困難、胸痛(進行例)
- 発熱・体重減少などの全身症状(B症状)は少ない(16.7%)(Kim 2004)
画像診断:典型的CT所見
- consolidation(浸潤影)や腫瘤影:air bronchogram sign を伴うことが多い
- CT angiogram sign:病変内部で血管構造が保たれて浮かび上がる。肺MALTリンパ腫53例のCTでは、多発が79%・両側性が66%で、所見は浸潤影(62%)が最も多く、結節(43%)、腫瘤(21%)の順でした。気管支拡張(特に嚢胞状)を伴う浸潤影は症状のある例にのみみられ、進行した段階の特徴的な所見とされています(Deng 2019)。
- 分葉状の境界不明瞭な腫瘤、微細結節、すりガラス影を伴う場合あり
- 気管支血管束周囲の間質性肥厚や胸膜肥厚もみられる
- 肺門・縦隔リンパ節腫大や胸水・胸膜肥厚を伴う例もあり、これらがあってもMALTリンパ腫は否定できない
CT angiogram signとは?
CT angiogram signは、造影CTで病変(consolidation)内に肺動脈が明瞭に浮かび上がる像です。
- 病変が血管構造を破壊せずに取り囲んでいることを示す
- 血管と病変の密度差によりアンギオグラフィー様に描出される
- MALTリンパ腫をはじめとする低悪性度リンパ腫で高頻度に出現
関連記事:CT angiogram signとは?肺腫瘍やリンパ腫の鑑別に役立つ重要所見
症例 30歳代 肺悪性リンパ腫

引用:Radiopaedia
造影CTにおいて、consolidationを呈する肺実質内に血管構造が明瞭に保持されて描出されており、CT angiogram signと合致。
この所見は、構造を破壊せずに肺実質へ浸潤するリンパ腫の低悪性度腫瘍性病変を示唆する画像所見です。
鑑別診断
肺原発悪性リンパ腫は以下の疾患と画像上類似するため、慎重な鑑別が必要です:
- 浸潤性粘液性腺癌(IMA):air bronchogramやconsolidationを伴い、CT angiogram signももともとこの腫瘍(旧・肺胞上皮癌)で報告された所見であるため、この所見だけでは区別できない
- 器質化肺炎(COP):非腫瘍性だがconsolidationとair bronchogramを伴う
- 出血性・壊死性肺炎:濃度不均一で血管構造が描出されにくい
- 肺結核:空洞形成や石灰化、リンパ節腫大などを伴うことが多い
診断とマネジメント
- CT angiogram signは閉塞性肺炎・肺炎・浸潤性粘液性腺癌などでもみられ特異的ではないため、抗菌薬で改善しない慢性の浸潤影などの経過と合わせてMALTリンパ腫を鑑別に挙げる
- 確定診断には気管支鏡生検・経皮針生検・外科的肺生検が必要
- 治療は病型や広がりに応じて、治療せずに経過をみる・手術・化学療法などから選択する(Borie 2016)
肺MALTリンパ腫とは?経過と予後
- 肺MALTリンパ腫は、肺に最も多いB細胞リンパ腫で、気管支のまわりのリンパ組織(MALT)から生じます。ゆっくり進み、症状のない慢性の浸潤影として見つかることが多く、予後は一般に良好です(Borie 2016)。
- 診断には組織が必要で、気管支鏡やCTガイド下生検など、なるべく体への負担が少ない方法で採取することが勧められています(Borie 2016)。
- 早期(IE/IIE期)の肺MALTリンパ腫96例では、無増悪生存期間の中央値は118か月で、根治的な手術と「生検+化学療法」で生存に差はありませんでした(Ning 2024)。
肺のリンパ腫でよくある疑問(Q&A)
Q. 「悪性リンパ腫の肺病変」と「肺原発悪性リンパ腫」は違いますか?
A. 違います。肺原発は肺だけにできるリンパ腫で、まれです。一方、全身のリンパ節などにできたリンパ腫が肺に広がる(続発性の肺病変)ことがあり、この場合はリンパ節腫大など肺以外の病変もあわせて評価します。
Q. 肺炎と言われて治らない影がリンパ腫のことはありますか?
A. あります。肺MALTリンパ腫は浸潤影として見え、抗菌薬で改善せず何か月も変わらないことが手がかりになります。このようなときは生検で確認します。
まとめ
- 肺原発悪性リンパ腫はまれだが、air bronchogram signとCT angiogram signを伴う浸潤影があれば鑑別に挙げる
- 造影CTが診断に不可欠であり、血管構造の保持を見極めることがカギ
- 非腫瘍性病変や肺癌との鑑別には臨床背景と組み合わせた読影が重要
参考文献
- Cadranel J, Wislez M, Antoine M. Primary pulmonary lymphoma. Eur Respir J. 2002;20(3):750-62. PubMed
- Im JG, Han MC, Yu EJ, et al. Lobar bronchioloalveolar carcinoma: “angiogram sign” on CT scans. Radiology. 1990;176(3):749-53. PubMed
- Shah RM, Friedman AC. CT angiogram sign: incidence and significance in lobar consolidations evaluated by contrast-enhanced CT. AJR Am J Roentgenol. 1998;170(3):719-21. PubMed
- Kim JH, Lee SH, Park J, et al. Primary pulmonary non-Hodgkin’s lymphoma. Jpn J Clin Oncol. 2004;34(9):510-4. PubMed
- King LJ, Padley SP, Wotherspoon AC, et al. Pulmonary MALT lymphoma: imaging findings in 24 cases. Eur Radiol. 2000;10(12):1932-1938. PubMed
- Deng W, Wan Y, Yu JQ. Pulmonary MALT lymphoma has variable features on CT. Sci Rep. 2019;9(1):8657. PubMed
- Borie R, Wislez M, Antoine M, et al. Pulmonary mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma revisited. Eur Respir J. 2016;47(4):1244-60. PubMed
- Ning Y, He H, Li Q, et al. The prognosis of patients with primary pulmonary mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma: Treated with surgery or chemotherapy? Eur J Cardiothorac Surg. 2024;65(3):ezae064. PubMed
- Patel R, Stover D. Pulmonary Mucosa-Associated Lymphoid Tissue (MALT) Lymphoma: A Diagnostic Dilemma. Respirol Case Rep. 2025;13(11):e70386. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
