先に結論:乳癌の放射線治療後の肺の変化
- 乳癌の放射線治療の後には、照射範囲(胸壁に接した接線方向)に一致した境界のはっきりした浸潤影(放射線肺臓炎)が数週〜数か月後に出て、その後線維化します
- 乳癌の照射後には、照射範囲の外や反対側の肺に移動する斑状影が出る器質化肺炎が起こることがあり、ステロイドがよく効きます
- これらはFDG-PETで集積することがあり、肺転移・肺炎と間違えないよう、照射範囲と時期を確認します
- 乳房温存療法後の放射線肺臓炎は約1%とまれで、多くは1〜12か月で元の状態に戻ります。化学療法を照射と同時に行うと起こりやすくなります
乳癌の放射線治療
- 乳癌の放射線治療には、術前照射と、術後照射がある。
- 特に乳房温存療法では、温存術の後に放射線治療を行なう。
- 合併症は急性障害と晩期障害に分けられる。
乳がんの放射線治療の急性障害
- 放射線皮膚炎
- 乳房痛
- 放射線肺臓炎(radiation pneumonitis)など
乳がんの放射線治療の晩期障害
- 上腕浮腫
- 放射線肺線維症(radiation lung fibrosis)
- 器質化肺炎(OP,secondary OP)(乳房温存療法後の約2%(702例中16例)に発症し、診断基準では照射後12か月以内の発症とされる)
- 肋骨骨折など
※頻度は、上腕浮腫>>その他。
乳がん治療後の放射線肺臓炎
- 放射線治療の後に、照射野に一致する境界明瞭な間質性陰影。
- 放射線治療直後-数週で、放射線肺臓炎(radiation pneumonitis)→数ヶ月後に放射線肺線維症(radiation lung fibrosis)となることがある。
- 注意すべきこととして、時間がかなり経過したあとで出てくることがある。
- また、一旦消えた後、再び出てくることがある。
- 症状としては、咳。発熱が多い。
- 乳癌の場合、照射野外あるいは対側肺に斑状の非区域性多発性陰影を示すことがある(放射線治療後の器質化肺炎(OP))。また陰影が移動することがある。ステロイドが著効しますが、漸減・中止時の再燃が多く(15例中12例)、発症のリスク因子として50歳以上と内分泌療法の併用が報告されています。
- FDG-PETで集積することがあるので、肺癌などと間違えないように注意。
- 乳癌照射後の器質化肺炎の頻度は1.0〜3.0%と報告され、多くは照射終了後12か月以内に、照射野内だけでなく照射していない肺にもすりガラス影として出ます。リスク因子として年齢、喫煙、照射される肺の量(central lung distance)が挙げられています。
放射線肺臓炎の頻度と経過
- 乳房温存療法後に照射した1624例では、放射線肺臓炎は17例(1.0%)でした。症状は咳(88%)が多く、陰影は全例で照射範囲に一致し、17例中12例は1〜12か月で元に戻りました(Lingos 1991)。
- 化学療法を照射と同時に行った3門照射では8.8%と多くなりました(Lingos 1991)。
乳がん放射線治療の副作用の画像での見え方
| 放射線皮膚炎 | CTで皮膚の肥厚・皮下脂肪の濃度上昇 |
| 放射線肺臓炎 | 照射範囲に一致したすりガラス影・浸潤影 |
| 放射線肺線維症 | 直線的な境界の索状影・容積減少 |
| 器質化肺炎 | 照射範囲外・対側に移動する斑状影 |
症例 40歳代女性 左乳癌温存療法術後→放射線治療後

左側乳房温存術後です。
放射線治療をした接線方向に沿って浸潤影を認めています。
放射線肺臓炎を疑う所見です。
半年後…
浸潤影は瘢痕化していることが確認できます。
動画でチェック!!
症例 60歳代 女性 右乳癌術後、最終放射線治療より8ヶ月経過 OP疑い

こちらは右側乳房温存術後の症例です。
放射線治療から8ヶ月後に、新たに斑状影が2箇所に出現しています。
咳嗽はあるも炎症所見は認めず。感染に伴う肺炎などではなく、放射線治療後の器質化肺炎(OP)と診断されました。
器質化肺炎についてはこちらにまとめました。→特発性器質化肺炎(COP)のCT画像診断の特徴は?原因は?
放射線治療後の肺炎でよくある疑問(Q&A)
Q. いつまで続きますか?
A. 多くは1〜12か月で元に戻り、一部は線維化(瘢痕)として残ります(Lingos 1991)。
Q. 咳や熱が出たら?
A. 感染による肺炎などとの区別が必要です。気になる症状があれば、治療を受けた医療機関に相談してください。
参考文献
- Crestani B, Valeyre D, Roden S, et al. Bronchiolitis obliterans organizing pneumonia syndrome primed by radiation therapy to the breast. Am J Respir Crit Care Med. 1998;158(6):1929-35. PubMed
- Katayama N, Sato S, Katsui K, et al. Analysis of factors associated with radiation-induced bronchiolitis obliterans organizing pneumonia syndrome after breast-conserving therapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2009;73(4):1049-54. PubMed
- Choi YW, Munden RF, Erasmus JJ, et al. Effects of radiation therapy on the lung: radiologic appearances and differential diagnosis. Radiographics. 2004;24(4):985-97. PubMed
- Epler GR, Kelly EM. Post-Breast Cancer Radiotherapy Bronchiolitis Obliterans Organizing Pneumonia. Respir Care. 2020;65(5):686-692. PubMed
- Benveniste MF, Gomez D, Carter BW, et al. Recognizing Radiation Therapy-related Complications in the Chest. Radiographics. 2019;39(2):344-366. PubMed
- Lingos TI, Recht A, Vicini F, et al. Radiation pneumonitis in breast cancer patients treated with conservative surgery and radiation therapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1991;21(2):355-60. PubMed
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