先に結論:大脳皮質基底核変性症(CBD)とは
- 脳の神経細胞にタウ蛋白がたまる進行性の神経変性疾患(タウオパチー)で、多くは60歳以降に発症します。遺伝しない(孤発性)ことがほとんどで、はっきりした原因はわかっていません
- 症状は失行(手がうまく使えない)+パーキンソン症状+認知症。片方の手足の動かしにくさから始まり、はじめは左右差が目立ち、やがて反対側にも広がります
- 進行:病理で確定した14例では、発症から亡くなるまでの期間の中央値は7.9年でした(Wenning 1998)。進むと歩行や飲み込みが難しくなります。症状の組み合わせを指すときは大脳皮質基底核症候群(CBS)と呼びます
- MRIでは、症状と反対側の前頭葉後部〜頭頂葉(中心溝のまわり)の左右非対称な萎縮が特徴で、脳血流シンチでも左右差のある血流低下が見られます
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な症状 | 片側の手足のぎこちなさ・こわばり、失行、他人の手徴候(alien hand)、失語、認知機能の低下 |
| 経過 | ゆっくり進行し、左右差のある症状が両側に広がる。進むと歩行や飲み込みが難しくなる |
| 原因 | 不明(タウ蛋白の蓄積)。ほとんどは遺伝しない |
| 画像 | MRI=中心溝周囲の非対称な萎縮・脳梁萎縮・皮質下白質の高信号/血流シンチ=左右差のある血流低下 |
| 似た病気 | 進行性核上性麻痺(PSP)・アルツハイマー病・Pick病・脳血管障害 |
※手足の動かしにくさやもの忘れが気になるときは、自己判断せず脳神経内科を受診してください。この記事は医療者・学生向けの画像診断の学習用です。
大脳皮質基底核変性症(corticobasal degeneration:CBD)
- 前頭側頭型変性症の中で病理学的にニューロン内部にタウ蛋白が蓄積する疾患群(タウオパチー)の一種。
- 非遺伝性、進行性の神経変性疾患であり、臨床的には左右非対称性の皮質機能障害とパーキンソニズムを来す。ただし、この臨床像(皮質基底核症候群:CBS)はアルツハイマー病や進行性核上性麻痺などでも生じ、逆に病理学的なCBDが前頭葉性の行動異常や非流暢性失語、PSP様の症状で発症することもあるため、2013年の診断基準(Armstrong基準)では臨床症候群と病理診断を区別して扱います。ただし病理で確かめた検証では、CBD 19例のうち初診時にprobable CBDの基準を満たしたのは47%にとどまり、CBD以外の病理によるCBS 14例は全例が基準を満たしたため、この基準だけでは生前診断の特異度が不十分とされています。
- 失行症状+パーキンソン症状+認知症。
- 通常、60歳以降に一側肢の運動障害で発症、初期には症状の左右差が目立ち、やがて対側へも症状が広がる。
- 皮質症状として他人の手徴候(alien hand)と呼ばれる手の使いにくさ、失行(構成失行、観念失行など)や失語、視覚失認も見られる。
症状と進行のしかた(初期〜末期)
病理で確定したCBD 14例の報告では、次のような経過でした(Wenning 1998)。
- 初期:発症は平均63歳。最初の症状は片側の手足のぎこちなさ(こわばりを伴うことも)が50%、ふるえが21%。
- 初診時(発症から平均3.0年):片側の手足の固縮79%、動作緩慢71%、観念運動失行64%、認知症36%。
- 経過:ほぼ全例で左右差のあるパーキンソン症状と歩行障害が現れ、レボドパで目立って改善した例はなし。生存期間の中央値は7.9年(2.5〜12.5年)。
末期には寝たきりに近い状態となり、飲み込みにくさ(嚥下障害)による誤嚥性肺炎が問題になります。手足の動かしにくさや言葉の出にくさが気になる場合は、医療機関に相談してください。
CBS(大脳皮質基底核症候群)と診断基準
CBSは症状の組み合わせ(臨床診断)、CBDは病理診断名です。2013年のArmstrong基準では、CBDの臨床像としてCBS・前頭葉性行動空間症候群・非流暢性失語(naPPA)・PSP様症候群の4型が示され、probable CBDには1年以上の緩徐進行、50歳以上の発症、家族歴やタウ遺伝子変異がないことなどが求められます(Armstrong 2013)。
皮質基底核変性症の画像所見
- 臨床症状と反対側の前頭葉後部から頭頂葉に萎縮が強く(中心溝周囲の萎縮)、特に高位円蓋部での中心前回の萎縮が特徴的。また基底核の萎縮を認める。
- 脳梁の萎縮。
- 一側性の大脳白質の軽度高信号。皮質下白質の病変が重要:U-fiberが消える。
- 脳血流シンチグラフィでは非対称性(左右差が強い)の大脳萎縮と血流低下を認める。
※左右差が強いため、脳血管障害との鑑別が問題となることがあるが、CBDでは多くの場合運動障害を伴うことが鑑別の一助になる(ただし失語や行動異常で発症する例もある)。 - 左右差の見られる基底核や視床の血流低下。認知症の症状を認める場合、アルツハイマー型認知症の血流代謝低下パターンと同様の所見を示すが左右差が強く、基底核・視床・一次感覚運動野の血流代謝が低下するのが特徴的。
症例 70歳代女性

右優位に頭頂葉に血流低下を認めている。
症例 70歳代男性

皮質下白質まで高信号が及びU-fiberの消失を認める。
大脳皮質基底核変性症でよくある疑問(Q&A)
Q. 原因は何ですか?
A. 異常なタウ蛋白が脳にたまる病気ですが、たまる理由はわかっていません。ほとんどは遺伝しません。
Q. MRIだけで診断できますか?
A. 中心溝周囲の左右非対称な萎縮は手がかりになりますが、同じ症状はアルツハイマー病やPSPでも起こるため、経過や脳血流シンチと合わせて判断します。
参考文献
- Armstrong MJ, Litvan I, Lang AE, et al. Criteria for the diagnosis of corticobasal degeneration. Neurology. 2013;80(5):496-503. PubMed
- Koyama M, Yagishita A, Nakata Y, et al. Imaging of corticobasal degeneration syndrome. Neuroradiology. 2007;49(11):905-912. PubMed
- Alexander SK, Rittman T, Xuereb JH, et al. Validation of the new consensus criteria for the diagnosis of corticobasal degeneration. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2014;85(8):925-9. PubMed
- Constantinides VC, Paraskevas GP, Paraskevas PG, et al. Corticobasal degeneration and corticobasal syndrome: A review. Clin Park Relat Disord. 2019;1:66-71. PubMed
- Wenning GK, Litvan I, Jankovic J, et al. Natural history and survival of 14 patients with corticobasal degeneration confirmed at postmortem examination. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1998;64(2):184-189. PubMed
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