先に結論:偽腔閉塞型大動脈解離(壁内血腫)
- 偽腔閉塞型は偽腔が血栓で埋まり造影されないタイプの大動脈解離で、壁内血腫とほぼ同じ意味で使われます。「偽腔閉鎖型」「血栓閉塞型」も同じものを指す呼び方です
- 急性期は単純CTで大動脈壁の三日月状の高吸収(hyperdense crescent sign)として見え、造影CTだけでは見逃すことがあるため、単純CTが必須です
- 上行大動脈に及ぶものや、ULP(潰瘍様突出)が出現・拡大するものは進行しやすく、注意深い経過観察や治療が必要です
偽腔閉塞型大動脈解離
・偽腔は血腫で充満し、造影されないタイプ。
・ただし、急性期では、血栓閉鎖した偽腔が単純CTで濃度の高い肥厚した壁(hyperdense crescent sign)として描出されることが重要である。
・なので単純CTが必須と言える。
▶動画で学ぶ血栓閉鎖型の大動脈解離
hyperdense crescent sign(クレセントサイン)とは
単純CTで大動脈壁に沿う三日月状の高吸収域のことで、血腫で埋まった偽腔を表します。造影CTでは造影されない平滑な壁肥厚に見え、血腫のCT値は時間とともに下がります(Chao 2009)。
定義と分類
日本循環器学会などの2020年合同ガイドラインでは、大動脈解離を偽腔の血流状態により偽腔開存型・ULP型・偽腔閉塞型に分類している(日本循環器学会ほか 2020)。欧米では壁内血腫(intramural hematoma: IMH)として扱われることが多い。壁内血腫の臨床症状は大動脈解離と区別できず、CTが診断と治療方針の決定に重要な役割を果たす。
| 分類 | 偽腔の状態(日本循環器学会ほか 2020) |
|---|---|
| 偽腔開存型 | 偽腔に血流がある |
| ULP型 | 大部分に血流はないが、限局した血流(ULP)がある |
| 偽腔閉塞型 | 三日月形で、ULPも血流もない |
予後に関わるハイリスク所見
Kruseらの総説では、ULP(潰瘍様突出)、大動脈径の拡大、血腫の厚さの増大、Stanford A型が、解離・瘤化・破裂などの合併症への進展と関連するとされる。一方、血腫内の小さな造影域(intramural blood pool)や胸水・心嚢液の意義ははっきりしていない。
- 壁内血腫の経過は一定ではなく、退縮・不変・進展のいずれもありうる
- 初回CTになく、経過観察のCTで新たに出現するULPもある
- 心嚢血腫や心タンポナーデなど、命に関わる合併症は読影レポートに記載する
偽腔閉塞型大動脈解離でよくある疑問(Q&A)
Q. 大動脈瘤の切迫破裂でみるcrescent signと同じですか?
A. どちらも単純CTの三日月状の高吸収ですが、瘤の切迫破裂では限局した部位に、偽腔閉塞型では長軸方向に連続して見えることが多いとされます(日本循環器学会ほか 2020)。
※突然の激しい胸や背中の痛みが出たときは、すぐに救急車を呼んでください。
関連記事:大動脈瘤破裂のCT画像所見|後腹膜血腫・crescent sign(切迫破裂)と治療適応
関連記事:ULPとは?ULP型大動脈解離(ulcer-like projection)のCT画像所見とIBP・PAUとの違い
参考文献
- Ogino H, Iida O, Akutsu K, et al. JCS/JSCVS/JATS/JSVS 2020 Guideline on Diagnosis and Treatment of Aortic Aneurysm and Aortic Dissection. Circ J. 2023;87(10):1410-1621. PubMed
- Kruse MJ, Johnson PT, Fishman EK, et al. Aortic intramural hematoma: review of high-risk imaging features. J Cardiovasc Comput Tomogr. 2013;7(4):267-72. PubMed
- Jang YM, Seo JB, Lee YK, et al. Newly developed ulcer-like projection (ULP) in aortic intramural haematoma on follow-up CT: is it different from the ULP seen on the initial CT? Clin Radiol. 2008;63(2):201-6. PubMed
- Herrán FL, Bang TJ, Restauri N, et al. CT imaging of complications of aortic intramural hematoma: a pictorial essay. Diagn Interv Radiol. 2018;24(6):342-347. PubMed
- Chao CP, Walker TG, Kalva SP. Natural history and CT appearances of aortic intramural hematoma. Radiographics. 2009;29(3):791-804. PubMed
- 日本循環器学会, 日本心臓血管外科学会, 日本胸部外科学会, 日本血管外科学会. 2020年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン. 2020. PDF
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