先に結論:ULP(ulcer-like projection)とULP型大動脈解離とは
- ULP(ulcer-like projection:潰瘍様突出像)とは、偽腔が血栓で埋まった(偽腔閉塞型)大動脈解離で、造影CTで真腔から血栓化した偽腔の中へ、造影剤が潰瘍のように小さく突き出して見える所見のことです(画像所見の名前です)
- 偽腔に部分的に血流が入っている状態で、経過中に拡大・瘤化・偽腔開存型への移行・破裂を起こしやすいため、日本のガイドラインではULP型として別に扱い、厳重に経過を見ます
- 医療(画像診断)の略語でULPといえば、ほぼこのulcer-like projectionを指します
- まぎらわしいものに、IBP(intramural blood pool):肋間動脈などから偽腔に流れ込んだ小さな血流で、真腔とはつながらず予後良好なもの、PAU(穿通性アテローム性潰瘍):動脈硬化の潰瘍が壁の深くまで達したもので解離はないもの、があります
ULP型大動脈解離

- 日本のガイドライン(大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン)ではULP型大動脈解離として別に扱われる。
- 血栓化解離腔内へ突出することがあり(上図参照)、ulcer like projection(ULP)と呼ばれている(画像所見である)。
- ULPは経過中に拡大・瘤化・偽腔開存型に変化・破裂することがあるので厳重な注意が必要である。
- CTにてULPの有無、位置、数、形態の評価をする。初期に内科治療を行ったB型壁内血腫(偽腔閉塞型)238例の検討では、初回CTのULP(HR 2.47)に加え、経過観察CTで新たに出現したULP(HR 4.44)や血腫の厚さの増加も、大動脈関連イベントの独立した予測因子であった。初回CTだけでなく、経過観察CTでのULPの新規出現にも注意する。
- ULPと混同しがちな病態にIBPs(Intramural blood pools)、PAU(penetrating atherosclerotic ulcer)がある。
- PAUは大動脈の粥状硬化性病巣が潰瘍化して中膜以下にまで達した状態。解離は存在しない。PAUは内弾性板を越えて中膜内の血腫を伴う粥状硬化性潰瘍で、古典的な大動脈解離とは異なる病態です。破裂などの重篤な合併症はまれですが、特に発症後1か月は注意深い経過観察が必要とされます。
症例 60歳代男性
Intramural blood pools(IBPs)とは?
- 解離の際に断裂した肋間動脈などから偽腔内に血流が流れ込んだ病態。真腔との連続性がない点でULPと鑑別する。
- ULPと異なり予後は良好。

- 急性の壁内血腫(IMH)65例の検討では、IBPは28%にみられ、57%は経過で吸収された。IBPは予後不良とは関連せず、ULPと区別すべきとされている(Wu 2011)。
ULP・IBP・PAUの違い(比較表)
| ULP | IBP | PAU | |
|---|---|---|---|
| 正体 | 偽腔閉塞型解離(壁内血腫)で、真腔から血栓化した偽腔へ突き出す造影剤のたまり | 血栓化した偽腔の中にある、島状の造影剤のたまり | 粥状硬化の潰瘍が内弾性板を越えて壁内へ食い込んだもの |
| 真腔(大動脈内腔)とのつながり | あり(入口がある) | はっきりしない。肋間動脈・腰動脈とつながることが多い | あり(潰瘍の口) |
| 背景 | 偽腔閉塞型解離・壁内血腫 | 壁内血腫 | 動脈硬化の強い大動脈。古典的な解離とは別の病態 |
| 経過 | 拡大・瘤化・偽腔開存型への移行・破裂に注意 | 吸収されることが多く、予後不良とは関連しない(Wu 2011) | 重篤な合併症はまれだが、発症後1か月は特に注意(Hayashi 2000) |
- 研究によって定義は少しずつ異なり、急性B型壁内血腫574例の検討では、大動脈内腔から突出し3mmを超える交通口をもつものを内膜の局所断裂(FID、ULPに相当)、血腫の中の局所的な造影剤のたまりをIBPと定義した。FIDのある例はIBPのある例より進行しやすく、特に近位下行大動脈のFIDが大動脈イベントと関連した(Jiang 2024)。
ULPの頻度と予後への影響(Q&A)
Q. ULPはどのくらいの頻度で出てきますか?
A. 内科治療を始めた偽腔閉塞型のB型大動脈解離170例の検討では、62例(36%)で発症から30日以内に新たにULPが出現した。ULPが出た例は生存率が低く、大動脈関連のイベントも多かった。特に近位下行大動脈のULPと、初回の大動脈径が強い予測因子であった(Kitai 2010)。
Q. ULP以外に経過観察で注意する指標はありますか?
A. 大動脈壁内血腫(IMH)180例の検討では、発症2週間後のCRPが7.2mg/dL以上(ハザード比3.16)と、ULPの出現(ハザード比2.68)が、それぞれ独立して大動脈関連イベントを予測した(Kitai 2014)。
Q. 偽腔閉塞型(IMH)に内膜の裂け目はないのですか?
A. 高分解能のCTでは、IMHの70〜80%で内膜の亀裂・欠損が見つかると報告されている。合併症のないB型IMHは降圧などの内科治療が基本だが、痛みが続く場合や大きなULPがある場合は別の対応を考える(Tanaka 2017)。
Q. CTでULPとIBPはどう見分けますか?
A. 真腔(大動脈の内腔)とつながる入口があり、内腔から外へ突き出していればULP、血腫の中に島状に浮いていて内腔とのつながりがなく、肋間動脈や腰動脈とつながっていればIBPを考えます。複数の断面や再構成画像で、入口の有無を確かめると判断しやすくなります。
関連記事:大動脈のPAUとULPの違いとは?穿通性動脈硬化性潰瘍とulcer-like projectionのCT画像
参考文献
- Ogino H, Iida O, Akutsu K, et al. JCS/JSCVS/JATS/JSVS 2020 Guideline on Diagnosis and Treatment of Aortic Aneurysm and Aortic Dissection. Circ J. 2023;87(10):1410-1621. PubMed
- Hayashi H, Matsuoka Y, Sakamoto I, et al. Penetrating atherosclerotic ulcer of the aorta: imaging features and disease concept. Radiographics. 2000;20(4):995-1005. PubMed
- Li Z, Lu B, Chen Y, et al. Acute type B aortic intramural hematoma: the added prognostic value of a follow-up CT. Eur Radiol. 2019;29(12):6571-6580. PubMed
- Herrán FL, Bang TJ, Restauri N, et al. CT imaging of complications of aortic intramural hematoma: a pictorial essay. Diagn Interv Radiol. 2018;24(6):342-347. PubMed
- Kitai T, Kaji S, Yamamuro A, et al. Impact of new development of ulcer-like projection on clinical outcomes in patients with type B aortic dissection with closed and thrombosed false lumen. Circulation. 2010;122(11 Suppl):S74-80. PubMed
- Kitai T, Kaji S, Kim K, et al. Prognostic value of sustained elevated C-reactive protein levels in patients with acute aortic intramural hematoma. J Thorac Cardiovasc Surg. 2014;147(1):326-31. PubMed
- Tanaka A, Leake S, Estrera AL. Management strategies in acute type B aortic intramural hematoma. Curr Opin Cardiol. 2017;32(6):687-691. PubMed
- Wu MT, Wang YC, Huang YL, et al. Intramural blood pools accompanying aortic intramural hematoma: CT appearance and natural course. Radiology. 2011;258(3):705-13. PubMed
- Jiang X, Pan T, Liu Y, et al. Prognostic Implications of Initial Focal Contrast Enhancement in Acute Type B Intramural Hematoma. J Am Coll Cardiol. 2024;83(4):503-513. PubMed
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