腎に石灰化を認めた場合、まず重要なのは「どこに石灰化があるか」を確認することである。腎の石灰化は、腎皮質、腎髄質、腎盂腎杯・尿路内の石灰化に大きく分けて考えると整理しやすい。
特にCTでは、単に「腎に石灰化あり」と記載するのではなく、皮質優位か、髄質・腎錐体優位か、腎杯内・尿路結石として見えるのかを意識することが鑑別診断の第一歩となる。
腎実質内石灰化を見るときの基本的な考え方
腎実質内の石灰化は、広義には腎石灰化症(nephrocalcinosis)として扱われることが多い。腎石灰化症は、腎実質内にカルシウム塩が沈着する状態であり、背景には高カルシウム血症、高カルシウム尿症、高リン血症、高リン尿症、高シュウ酸尿症などの代謝異常が関与する。
画像上は、腎髄質に生じる髄質性腎石灰化症が多く、皮質性腎石灰化症は比較的まれである。したがって、腎実質内石灰化を見た場合は、まず髄質・腎錐体に沿った石灰化か、皮質に沿った石灰化かを判定する。
腎皮質の石灰化で考える疾患
腎皮質に沿って石灰化を認める場合、髄質性石灰化とは異なり、慢性的な皮質障害や壊死後の変化を反映していることが多い。
- 急性腎皮質壊死後
- 慢性糸球体腎炎
- 腎梗塞後
- 移植腎の慢性拒絶反応
- Alport症候群
- エチレングリコール中毒
- 原発性または続発性高シュウ酸尿症
腎皮質壊死では、重症ショック、敗血症、産科的合併症、出血、薬剤・毒物などを背景に皮質が壊死し、時間経過とともに皮質に石灰化を来すことがある。画像上は、腎皮質に沿った帯状・辺縁性の石灰化として認められることがある。
慢性糸球体腎炎などでは、腎萎縮を伴いながら皮質に石灰化を認めることがある。したがって、皮質石灰化を見た場合は、腎サイズ、腎皮質の菲薄化、腎機能、既往歴をあわせて評価する。
腎髄質・腎錐体の石灰化で考える疾患
腎髄質・腎錐体に沿って石灰化を認める場合は、髄質性腎石灰化症を考える。腎髄質は尿が濃縮される部位であり、カルシウムやリン酸、シュウ酸などの沈着が起こりやすい。
- 原発性副甲状腺機能亢進症
- 遠位尿細管性アシドーシス
- 海綿腎
- サルコイドーシス
- ビタミンD過剰
- ミルク・アルカリ症候群
- ループ利尿薬の長期使用
- Bartter症候群などの尿細管疾患
- 腎乳頭壊死後の石灰化
- 腎結核などの感染後変化
成人の髄質性腎石灰化症では、原発性副甲状腺機能亢進症、遠位尿細管性アシドーシス、海綿腎などが代表的な原因である。血清カルシウム、リン、PTH、腎機能、尿pH、尿中カルシウム排泄などの臨床情報が鑑別に有用である。
症例 30歳代男性 海綿腎

両側に腎杯部から乳頭部の拡張及び石灰化あり。
海綿腎としてフォローされています。
海綿腎と髄質性腎石灰化症
海綿腎は、腎乳頭部の集合管が拡張する先天性疾患である。拡張した集合管内に小結石が多発し、CTでは腎錐体周囲に小石灰化が集簇して見えることがある。
造影CTの排泄相では、拡張した集合管に造影剤が貯留し、いわゆるbrush-like appearanceやpaintbrush appearanceとして描出されることがある。単純CTで腎錐体部に多発小結石を認める場合は、海綿腎も鑑別に挙げる。
腎盂腎杯・尿路内の石灰化との鑑別
腎実質内石灰化と腎結石は混同されやすいが、両者は分けて考える必要がある。
| 所見 | 主な局在 | 考えやすい病態 |
|---|---|---|
| 腎皮質に沿う石灰化 | 腎皮質 | 皮質壊死後、慢性糸球体腎炎、移植腎拒絶、高シュウ酸尿症など |
| 腎錐体・髄質に沿う石灰化 | 腎髄質 | 副甲状腺機能亢進症、遠位尿細管性アシドーシス、海綿腎、サルコイドーシスなど |
| 腎杯・腎盂内の結節状高吸収 | 腎盂腎杯・尿路内 | 腎結石、尿管結石 |
腎杯内に明瞭な結石として存在するものは尿路結石であり、腎実質内にびまん性・多発性に沈着する腎石灰化症とは病態が異なる。読影時には、石灰化が腎盂腎杯内にあるのか、腎実質内にあるのかを丁寧に確認する。
若年健常者で腎錐体が高吸収に見える場合
単純CTで、若年者や健常者に腎錐体・腎髄質がびまん性に高吸収に見えることがある。この場合、必ずしも病的な腎石灰化症とは限らない。
脱水傾向、尿濃縮、撮影条件、腎髄質の濃縮効果などにより、腎錐体が左右対称性に軽度高吸収を示すことがある。明らかな点状石灰化や結石形成、腎機能障害、血清カルシウム異常、尿路症状を伴わない場合は、病的意義が乏しいこともある。
ただし、腎錐体部の高吸収が強い場合、点状石灰化を伴う場合、左右差がある場合、腎結石を合併する場合、若年であっても反復する尿路結石や代謝異常が疑われる場合には、髄質性腎石灰化症として原因検索を考慮する。
関連記事:健常人においても単純CTで腎錐体/腎髄質が高吸収となることがある
読影レポートでの記載例
髄質性腎石灰化症を疑う場合
両側腎髄質・腎錐体部に沿って多発する微細石灰化を認めます。髄質性腎石灰化症を疑う所見です。副甲状腺機能亢進症、遠位尿細管性アシドーシス、海綿腎、サルコイドーシスなどが鑑別に挙がります。臨床的には血清Ca、P、PTH、腎機能、尿所見などとの対比が望まれます。
皮質性石灰化を疑う場合
腎皮質に沿った石灰化を認めます。皮質性腎石灰化症の所見であり、腎皮質壊死後変化、慢性糸球体腎炎、移植腎拒絶、高シュウ酸尿症などが鑑別に挙がります。腎萎縮や腎機能障害の有無を含め、臨床情報との対比が必要です。
病的意義が乏しい腎髄質高吸収と考える場合
両側腎錐体部に軽度高吸収を認めますが、明らかな結石形成や腎実質内石灰化としての粗大な沈着は指摘できません。尿濃縮などに伴う非特異的変化の可能性があります。腎機能、血清カルシウム値、尿路症状などとあわせてご確認ください。
まとめ
- 腎の石灰化は、まず皮質、髄質、腎盂腎杯・尿路内のどこにあるかを確認する。
- 腎皮質石灰化では、腎皮質壊死後、慢性糸球体腎炎、移植腎拒絶、高シュウ酸尿症などを考える。
- 腎髄質石灰化では、副甲状腺機能亢進症、遠位尿細管性アシドーシス、海綿腎、サルコイドーシス、ビタミンD過剰などを考える。
- 腎盂腎杯内の明瞭な高吸収は、腎実質内石灰化ではなく尿路結石として評価する。
- 若年健常者で腎錐体が軽度高吸収に見える場合、尿濃縮などによる非病的変化のこともある。
出典
- StatPearls. Nephrocalcinosis. NCBI Bookshelf.
- Radiopaedia. Medullary nephrocalcinosis.
- Radiologica. Cortical Nephrocalcinosis – Overview.
- StatPearls. Medullary Sponge Kidney. NCBI Bookshelf.
- BMC Nephrology. Medullary nephrocalcinosis, distal renal tubular acidosis and polycythaemia in a patient with nephrotic syndrome.
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