先に結論:脳梗塞のあとに画像で注意すること
- 出血性脳梗塞(出血性梗塞)とは、脳梗塞で傷んだ部分にあとから出血が加わる状態です。最も注意すべき合併症で、血流が再開したとき(塞栓症・血栓溶解療法後など)の発症数日以内と、2週間前後に起こりやすく、大きな出血は症状の悪化につながります
- 大きな梗塞では数日以内の脳のむくみ(脳浮腫・脳ヘルニア)、小脳梗塞では水頭症も重要です。慢性期には皮質に沿ったT1高信号(層状壊死)やワーラー変性が見られますが、これらは新しい病変ではありません
- 造影MRIで梗塞が2日〜2週間をピークに2か月ほど染まることがあり(2-2-2ルール)、腫瘍と間違えないよう注意します
※脳梗塞のあとに頭痛・意識の低下・まひの悪化があるときは、すぐに受診してください。
脳梗塞後に起こる合併症
なんといっても注意すべきは出血性梗塞です。
他には、合併症というより慢性期脳梗塞に起こる変化として、
- 層状壊死(laminar necrosis)
- Waller変性
があります。
関連記事)ワーラー変性のMRI画像診断
出血性梗塞とは?
- 発症直後(2-5日後)に起こるものと、亜急性期(2週間前後)に起こるものに分けて説明されることがある。出血性変化はCTで出血性梗塞(HI1・HI2)と実質内血腫(PH1・PH2)に分類される(ECASS分類)。ECASS Iの検討では、HI1・HI2・PH1は早期の神経症状の悪化や3か月後の死亡と関連しなかったが、大きな血腫(PH2)は早期の悪化(オッズ比32.3)と3か月後の死亡(オッズ比18.0)を大きく増やした。

出血性脳梗塞の分類とCT・MRIでの見え方
| 分類(ECASS) | 画像での見え方 | 経過への影響 |
|---|---|---|
| HI1 | 梗塞の縁に小さな点状の出血 | 早期の悪化・3か月後の死亡と関連しなかった |
| HI2 | 梗塞の中に点状の出血が集まる(圧排はない) | |
| PH1 | 梗塞の一部に血腫があり、圧排は軽い | |
| PH2 | 梗塞の広い範囲を占める血腫で、圧排が強い | 早期の悪化・死亡が大きく増えた |
(Fiorelli 1999)
- CTでは出血は白く(高吸収に)見えますが、小さな出血はわかりにくいことがあります。発症48時間後にCTとMRIを撮った25例では、出血性変化が12例にみられ、CTで指摘できたのは7例(58%)、FLAIR・T2強調像で9例(75%)、T2*強調像では12例(100%)でした(Arnould 2004)。
- MRIのT2*強調像やSWIでは、出血は黒く(低信号に)抜けて見えるため、梗塞の中の小さな出血の確認に向いています。
①直後(2-5日)
- 梗塞に陥った組織に血流の再開通が生じることにより、血管性浮腫の増悪や出血を生じる。
- 塞栓性梗塞で頻度高い。
- 血栓溶解療法によっても一定の確率で起こる。
- early CT signが見られた症例、ADC低下の領域が広い症例でリスクが上がる。ECASSの検討では、CTの早期虚血変化があると出血性梗塞のリスクが高く(オッズ比3.5)(Larrue 1997)、血栓溶解療法前のDWIでADCが強く低下した領域の体積が、治療後の出血の独立した予測因子だった(Selim 2002)。
②亜急性期(2週間前後)
- 梗塞辺縁部の側副血行路の発達により、少量の出血を来す。
慢性期脳梗塞に起こる変化
慢性期脳梗塞に起こる変化として、
- 層状壊死(laminar necrosis)
- Waller変性
があります。
層状壊死(laminar necrosis)
- 発症2週間以後から慢性期にかけて、T1WIで梗塞巣の皮質に沿って高信号域が見られる。画像所見を反映して、cortical hyperintensityとも呼ばれる。
- これを見ると病歴が不明確な場合、梗塞があったという証拠になる所見。T1強調像の皮質高信号は発症約2週から出現して1〜3か月で最も目立ち、その後薄れるが、2年残ることもある。層状壊死部の造影効果は1〜2か月で目立ち8か月程度まで残ることがあり、2-2-2ルールより長く続く場合がある。なお、この皮質のT1短縮は出血性梗塞によるものではない。
- FLAIRでは数カ月は高信号を示すが、液状化するとその部位は低信号を示すようになる。
- 梗塞巣の造影効果は発症から2日後に始まり、2週間でピーク、2ヶ月後までに消失する(2-2-2のルール。)
より細かく・・・!
- 大脳の皮質は6層から構成され、本疾患では第3層次いで第5、6層が障害を受け皮質内に層状の壊死巣を生じるため層状壊死(laminar necrosis)とよばれる。
- これは主幹動脈間の境界領域である分水嶺領域、特に主幹動脈から最も遠い頭頂後頭葉で強く、また脳溝深部で目立つ傾向がある。
- 組織学的には神経細胞の壊死・脱落がみられ、ミエリン代謝産物を貪食した大食細胞が分布している。
- 壊死巣内への出血はまれであり、層状壊死によるT1緩和時間の短縮の原因には壊死巣内の変性した蛋白、星細胞など膠細胞の反応性増多、大食細胞からのフリーラジカルの過剰産生などの関与が考えられている。
症例 20歳代男性 もやもや病による慢性期脳梗塞

左優位に両側後頭葉に陳旧性脳梗塞あり。
梗塞部位の脳表に沿ってT1強調像で高信号あり。
laminar necrosis(層状壊死)を疑う所見です。
症例 70歳代男性 慢性期脳梗塞
左MCA領域の脳表に沿って陳旧性脳梗塞部位にT1強調像で高信号を認めています。
laminar necrosisを疑う所見です。
動画で学ぶlaminar necrosis
Waller変性
- 梗塞に伴う2次性変性。
- 神経細胞の障害に伴う2次性の順行性変性。
- 錐体路に沿って萎縮とT2WIで高信号が認められることが多い。
症例 80歳代男性 慢性期脳梗塞
左大脳脚に萎縮及びT2強調像で異常な高信号域あり。
waller変性を疑う所見です。
動画で学ぶwaller変性(錐体路のWaller変性)
出血性脳梗塞でよくある疑問(Q&A)
Q. 出血性脳梗塞と脳出血は何が違いますか?
A. 脳出血は血管が破れて出血するのが始まりですが、出血性脳梗塞は先に脳梗塞が起こり、傷んだ部分にあとから血液がもれ出るものです。画像では、梗塞の範囲の中や縁に出血が見えるのが特徴です。
Q. 出血性梗塞と言われたら、症状は悪くなりますか?
A. 梗塞の中の点状の出血(HI)や小さな血腫(PH1)は、早期の悪化や死亡と関連しなかったと報告されています。大きな血腫(PH2)は症状の悪化や死亡が増えるため注意が必要です(Fiorelli 1999)。
参考文献
- Komiyama M, Nishikawa M, Yasui T. Cortical laminar necrosis in brain infarcts: chronological changes on MRI. Neuroradiology. 1997;39(7):474-9. PubMed
- Komiyama M, Nakajima H, Nishikawa M, et al. Serial MR observation of cortical laminar necrosis caused by brain infarction. Neuroradiology. 1998;40(12):771-7. PubMed
- Elster AD. MR contrast enhancement in brainstem and deep cerebral infarction. AJNR Am J Neuroradiol. 1991;12(6):1127-32. PubMed
- Kuhn MJ, Mikulis DJ, Ayoub DM, et al. Wallerian degeneration after cerebral infarction: evaluation with sequential MR imaging. Radiology. 1989;172(1):179-82. PubMed
- Fiorelli M, Bastianello S, von Kummer R, et al. Hemorrhagic transformation within 36 hours of a cerebral infarct: relationships with early clinical deterioration and 3-month outcome in the European Cooperative Acute Stroke Study I (ECASS I) cohort. Stroke. 1999;30(11):2280-4. PubMed
- Allen LM, Hasso AN, Handwerker J, et al. Sequence-specific MR imaging findings that are useful in dating ischemic stroke. Radiographics. 2012;32(5):1285-97. PubMed
- Larrue V, von Kummer R, del Zoppo G, et al. Hemorrhagic transformation in acute ischemic stroke. Potential contributing factors in the European Cooperative Acute Stroke Study. Stroke. 1997;28(5):957-60. PubMed
- Selim M, Fink JN, Kumar S, et al. Predictors of hemorrhagic transformation after intravenous recombinant tissue plasminogen activator: prognostic value of the initial apparent diffusion coefficient and diffusion-weighted lesion volume. Stroke. 2002;33(8):2047-52. PubMed
- Arnould MC, Grandin CB, Peeters A, et al. Comparison of CT and three MR sequences for detecting and categorizing early (48 hours) hemorrhagic transformation in hyperacute ischemic stroke. AJNR Am J Neuroradiol. 2004;25(6):939-44. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →




