先に結論:心原性脳塞栓症
- 心原性脳塞栓症は主に心房細動でできた左心耳の血栓が脳に飛んで起こり、突然発症で重症になりやすい脳梗塞です
- 画像では皮質を含む、血管の支配域に一致した境界明瞭な広い梗塞が典型で、MRAで主幹動脈の途絶、FLAIRで血管内の高信号が見られます。FLAIRの血管内高信号は発症35分後からみられ、約8割でMRAの途絶部位と一致したと報告されています。
- 再開通に伴う出血性梗塞を起こしやすく、急性期には血栓溶解・血栓回収療法の適応をすぐに判断します
- 単純CTでは、血栓の詰まった中大脳動脈が白く見えるhyperdense artery sign(hyperdense MCA sign)が手がかりになります。あれば閉塞の可能性が高いですが、なくても閉塞は否定できません
心原性脳梗塞とは脳梗塞の中でもどういった特徴があるのでしょうか?
また、画像診断のポイントはどのような点でしょうか?
今回は、心原性脳梗塞についてまとめました。
心原性塞栓症の特徴とは?
動画で学ぶ心原性塞栓症の基礎
▶キースライド
心原性塞栓症の特徴は?原因は?
- 基礎疾患に心房細動があることが多い。左房・左心耳に血栓形成→脳に飛んで発症する。

- 心房細動は持続的だけでなく、発作性の心房細動でも左心耳血栓形成の原因となるので注意。心房細動が原因として最多であるが、他、
- 洞不全症候群
- 心筋梗塞
- 拡張型心筋症
- うっ血性心不全
- 心臓弁置換術後
- 僧帽弁狭窄症・逸脱症
- 感染性心内膜炎
などが血栓形成の原因となる。発作性心房細動は短時間の心電図では見逃されやすい。原因不明の脳梗塞441例の無作為化試験(CRYSTAL AF)では、植込み型心電図モニターにより12か月以内に12.4%で心房細動が検出された(通常の経過観察群では2.0%)。
- 大きな塞栓子が動脈分岐部に閉塞をきたす。そのため、日中の活動時に、突然の片麻痺、構音障害、失語などの皮質症状や意識障害などで突然発症する。
- 支配域に一致した境界明瞭な梗塞。皮質を含む。(急に詰まるため、側副路を形成している暇がない。)
- 自然溶解、破砕→末梢を再閉塞することがある。
- 著明な血管性浮腫を示す。
- 再開通により重篤な出血性梗塞をきたしやすい。
- MRAでは血管の途絶、閉塞が典型的。境界明瞭、皮質を含む。
動画で学ぶ心原性塞栓症①
左の頭頂葉および島皮質および島下白質にDWI(拡散強調像)で異常な高信号を認めています。
皮質のspareを認めず、塞栓性を疑う所見です。
MRAでは左の中大脳動脈(MCA)のM1の途中から描出を認めていません。
FLAIR像では、左のMCAに異常な高信号を認めており、主幹動脈の閉塞(遅い血流)を示す、Intra arterial signalを認めています。
CT検査では皮質のspareを認めず、境界が明瞭な低吸収と変化しています。
塞栓性を疑う所見です。
発症10日後のCT画像では、梗塞を認めた部位に出血を示唆する高吸収域の出現を認めており、出血性梗塞を疑う所見です。
動画で学ぶ心原性塞栓症②
DWI(拡散強調像)で右の中大脳動脈ー後大脳動脈(MCA-PCA)領域に広範な異常高信号を認めています。
皮質のspareを認めていません。
拡散強調像(DWI)で高信号を認めている部位と一致して、ADCの信号低下を認めています。
MRAでは右の中大脳動脈(MCA)の途絶を認めています。
塞栓性の脳梗塞を疑う所見です。
FLAIRのintra-arterial signal(IAS)とは?
FLAIR像では、正常の脳動脈は血流が速いため黒く(flow void)見えます。閉塞や遅い血流があると血液の信号が残り、脳溝やシルビウス裂の動脈に沿った線状・点状の高信号になります。これがintra-arterial signal(IAS)で、FLAIR vascular hyperintensity、hyperintense vessel signとも呼ばれます。
- 主幹動脈閉塞60例では、IASは58例(96.7%)で検出されました。IASの範囲がDWIの高信号域より広い例が41.7%あり、その範囲は血流低下域とよく一致しました(Toyoda 2001)。DWI病変の外側のIASは、まだ救える可能性のある領域(ペナンブラ)を示唆します。
CTでのサイン:hyperdense artery sign
単純CTで血栓の詰まった動脈が白く見える所見です。1175例のメタ解析では動脈閉塞に対する感度52%・特異度95%で、薄いスライスほど感度が上がりました(Mair 2015)。見えなくても閉塞は否定できません。
※中大脳動脈の起始部からシルビウス裂までの水平部がM1で、M1閉塞では基底核を含む広い梗塞になりやすくなります。突然のまひ・ろれつが回らないなどの症状があれば、すぐに救急車を呼んでください。
関連記事:carotid web(頸動脈ウェブ)とは?CTA・MRA画像所見と若年性脳梗塞の原因
参考文献
- Adams HP, Bendixen BH, Kappelle LJ, et al. Classification of subtype of acute ischemic stroke. Definitions for use in a multicenter clinical trial. TOAST. Trial of Org 10172 in Acute Stroke Treatment. Stroke. 1993;24(1):35-41. PubMed
- Kamel H, Healey JS. Cardioembolic Stroke. Circ Res. 2017;120(3):514-26. PubMed
- Toyoda K, Ida M, Fukuda K. Fluid-attenuated inversion recovery intraarterial signal: an early sign of hyperacute cerebral ischemia. AJNR Am J Neuroradiol. 2001;22(6):1021-9. PubMed
- Arboix A, Alió J. Cardioembolic stroke: clinical features, specific cardiac disorders and prognosis. Curr Cardiol Rev. 2010;6(3):150-61. PubMed
- Sanna T, Diener HC, Passman RS, et al. Cryptogenic stroke and underlying atrial fibrillation. N Engl J Med. 2014;370(26):2478-86. PubMed
- Mair G, Boyd EV, Chappell FM, et al. Sensitivity and specificity of the hyperdense artery sign for arterial obstruction in acute ischemic stroke. Stroke. 2015;46(1):102-7. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →











気づいた点をコメントします。
http://遠隔画像診断.jp/archives/16022
spectacular shrinking deficit(SSD)とは、自然再開通や線溶療法の再開通で、皮質枝の血流が改善し、症状が急激に改善する状態を示すのではなかったでしょうか。
塞栓症が、自然再開通することがある、との記載については、かなりの頻度、中大脳動脈などでは半数近く再開通します。
http://遠隔画像診断.jp/archives/15976
脳梗塞の分類や、治療薬を述べておられます。
あえて rt-PA ではなくて、t-PA と書かれてるのは、生物由良に意味があるのでしょうか?
ガイドラインも rt-PA アルテプラーゼ、と記載しています。
治療薬のところでは、アテローム血栓症の下段に、血栓症、塞栓症、がありますが、これはアテローム血栓性の狭搾部に、塞栓がひっかかったような病態を示すのでしょうか?
そこの、オザグレルの、塞栓症△の記載ですが、豊富な経験を積んだ医師が限られた病態で使用することは想定されますが、添付文書でも、塞栓症は(心原性、血管原性を区別せず)禁忌です。
なお、オザグレル(キサンボン、カタクロット)は、発症数日後でも投与可能という利点があります。
rt-PAの心原性塞栓症◎についてですが、これは血栓親和性のことを書かれているのでしょうか?
rt-PAは、静注も、動注も、心原性塞栓のような大きな梗塞では、効果が期待できません。
心原性のような大きな塞栓が多い、内頸動脈閉塞ですが、ステント型デバイスが治療効果が高くなっています。
私の経験では、rt-PA静注がいちばん著効するのは、穿通枝ラクナ梗塞と思います。
そのほかの記載も、全体として釈然としません。
心原性塞栓にウロキナーゼ〇、という記載も検討が必要かと考えます。
ウロキナーゼは6万単位静注7が保険適応になっており、1990年代頃までに多用、国産t-PAが特許訴訟で負けて使用できない時などは、私も多数例、動注しましたが、いまは臨床現場での使用は皆無です。
ウロキナーゼは、そのような使用に対しても、エビデンスレベルはC1です。
なお、塞栓症については、近時、心原性でもない原因不明なESUSという概念があり、多くの研究者が解明に邁進しており、奥は深いです。
優れた画像診断指針を公開されていますので、聞きかじった情報ではなく、上にも書きましたが、血管内治療などについての情報が、放射線科医にとっても役立つと思います。
コメントいただきありがとうございます。
該当箇所を削除しました。
また治療方法によっては、治療に精通しておりませんので、ガイドラインをリンクしました。