先に結論:内ヘルニアの分類
- 内ヘルニアは腸が腹腔内のくぼみや穴(腹膜窩・腸間膜の欠損・Winslow孔など)に入り込むもので、まれですがclosed loopを作って絞扼(腸の血流障害)を起こしやすい危険な病気です
- 傍十二指腸ヘルニアが古典的に多く、日本では腸間膜などの異常裂孔ヘルニアも多く報告されます。胃切除後(Roux-en-Y再建)にも起こります
- CTでは①closed loopを探す→②ヘルニア門と袋を探す→③引き込まれて偏位した血管を探すの順に見ます
- 治療は手術(ヘルニアの整復とヘルニア門の閉鎖)が基本で、絞扼で腸が壊死していれば腸切除が必要になるため、早めの診断が大切です
※強い腹痛・嘔吐・お腹の張りがあるときは、すぐに医療機関を受診してください。
内ヘルニアの定義は?外ヘルニアとの違いは?
腹膜臓器が
- 腹腔内の陥凹部(腹膜窩)
- 腸間膜などの欠損部(異常裂孔)
いずれかに入り込んだ状態。

ここまでわかる急性腹症のCTより引用改変。
・外ヘルニアとの違いは?:腹膜臓器が腹腔外に脱出するのを外ヘルニアと言うのに対して内ヘルニアは、腹腔内の穴に嵌るというイメージです。
・内ヘルニアは腸閉塞全体の0.5〜5.8%程度と稀。・頻度は低いが死亡率は高く、50%を超えるとする報告もある(Martin 2006)。
・closed loopを形成し、腸管虚血から壊死(絞扼性腸閉塞)に陥ることがあるため、速やかに解除する必要があるヘルニア。
・腸間膜などの欠損部の原因としては、先天性の異常裂孔である場合と、手術や外傷などの後天的な要因で形成されるものがある。
・ヘルニアを生じた裂孔部の間膜の部位によりヘルニアの名称が異なる。診断にはヘルニア門の存在する膜の部位を特定することが必要不可欠といえる。

内ヘルニアの分類は?
内ヘルニアは大きく、
- 正常構造部位へ入るもの。=網嚢孔ヘルニア
- 異常構造部位へ入るもの。
・腹膜へできた凹みへ入るもの。=腹膜窩ヘルニア
・異常な穴へ入るもの。=異常裂孔ヘルニア
に分けられる。

内ヘルニアの原因は?
- 先天性の要因:胎生期の回転異常、腸間膜固定の異常
- 後天的な要因:手術や外傷など。
※腹膜窩ヘルニアは腸管が腸間膜を失い後腹膜に固定される部位と、腸間膜を有する部位の境界付近に認められる。そこに腸間膜の固定がゆるく、腹膜窩が生じやすいから。
内ヘルニアの部位と頻度は?
内ヘルニアの部位と頻度は以下の通りです。
- 1位:傍十二指腸ヘルニア 内ヘルニアの約53%(左右合わせて)。右側は左側より少なく、傍十二指腸ヘルニアの約4分の1(Teoh 2026)
- 次いで:傍盲腸ヘルニア、Winslow孔ヘルニア、腸間膜裂孔ヘルニア、骨盤部ヘルニア、S状結腸間膜ヘルニアなど
※一般的に、腹膜窩ヘルニア、中でも傍十二指腸ヘルニアが多いが、本邦では異常裂孔ヘルニアが多いとの報告もあり。
内ヘルニアのCT画像所見は?
- step1 closed loopを探す。
- step2 ヘルニア嚢とヘルニア門を探す。
- step3 ヘルニアによって偏位している血管を同定する。
各内ヘルニア(腹膜窩ヘルニア)の特徴と同定すべき(ランドマークになる)構造
| 内ヘルニア | 特徴(同定するべき構造物) |
| 右傍十二指腸 | SMA/SMVの右背側 |
| 左傍十二指腸 | IMV(上腹部)の左背側 |
| S状結腸間膜 | IMA/IMV(下腹部)・S状結腸の背側 |
| 盲腸周囲 | 盲腸・上行結腸の背外側 |
| 傍直腸 | 直腸の隣 |
| Winslow孔 | 門脈と下大静脈の間から網嚢=胃の背側へ |
| 子宮広間膜裂孔 | 子宮の隣 |
| 腸間膜・大網裂孔 | 部位によって多彩。腸軸捻転を伴うことが多い。 |
ここまでわかる急性腹症のCTより引用改変。
腹膜窩ヘルニアとは?
- 腸管が腸間膜を失い後腹膜に固定される部位と、腸間膜を有する部位の境界付近に認められ、壁側腹膜を押しのけながら、進展する。
- その姿は、蛇が袋の中にいるかのようであり、snake in a bagと表現される。
- Treitz靭帯付近、盲腸付近のものは、中腸回転異常に関連し、中腸回転異常を伴うことあり。
腹膜窩ヘルニアの分類
- Treitz靭帯付近に生じる:①左傍十二指腸ヘルニア、②右傍十二指腸ヘルニア
- 盲腸付近に生じる:③傍盲腸ヘルニア
- S状結腸部に生じる:④S状結腸間膜ヘルニア
傍十二指腸ヘルニア(左・右)の違い
| 左傍十二指腸ヘルニア | 右傍十二指腸ヘルニア | |
|---|---|---|
| ヘルニア門(入り口) | 十二指腸空腸曲の左のくぼみ(Landzert窩) | 十二指腸水平部の下のくぼみ(Waldeyer窩) |
| 小腸の塊の位置 | 膵体尾部・胃の背側〜左上腹部 | 右上〜中腹部 |
| CTで見る血管 | 袋の前縁を下腸間膜静脈(IMV)・左結腸動脈が走る | 袋の前縁を上腸間膜動静脈(SMA/SMV)や回結腸動静脈が走る |
| そのほか | 左側の方が多い | 腸回転異常を伴うことがある |
S状結腸間膜ヘルニアの3つの型
- S状結腸間膜窩ヘルニア(intersigmoid hernia):S状結腸間膜の根元の背側にあるくぼみ(S状結腸間膜窩)に入り込む。腹膜窩ヘルニアの一つ。
- S状結腸間膜貫通ヘルニア(transmesosigmoid hernia):S状結腸間膜の2枚を貫く穴を通り抜ける。異常裂孔ヘルニアの一つ。
- S状結腸間膜内ヘルニア(intramesosigmoid hernia):S状結腸間膜の片側の膜だけの欠損から、2枚の膜の間に入り込む。
いずれもCTでは、S状結腸とその間膜の血管(S状結腸動静脈)の背側や外側に小腸の塊を認め、S状結腸が押し上げられたり偏位したりするのが手がかりになります。

ここまでわかる急性腹症のCTより引用改変。
※⑤網嚢孔(winslow孔)ヘルニア(※⑤だけ正常孔ヘルニア)
異常裂孔ヘルニアとは?

ここまでわかる急性腹症のCTより引用改変。
異常裂孔ヘルニアの好発部位
腸間膜
- 小腸間膜:小腸間膜ヘルニア
- 横行結腸間膜:横行結腸間膜ヘルニア
- S状結腸間膜:S状結腸間膜ヘルニア
関連記事)腸間膜(間膜)の画像診断!間膜の理解には主要な動静脈を同定する。
大網
- 大網ヘルニア
子宮広間膜
- 子宮広間膜ヘルニア
術後重要なもの
- Roux-en-Y術後の内ヘルニア胃バイパス術や肝移植などの普及により術後の内ヘルニアは増加しており、腸間膜(transmesenteric)・結腸間膜(transmesocolic)・吻合部後方(retroanastomotic)の欠損部に生じるものが重要です。

症例:60歳代女性 小腸間膜欠損部への内ヘルニア(closed loop形成あり)
小腸間膜に異常裂孔を作ってclosed loopを形成した内ヘルニアの症例です。
単純CTの冠状断像で、ピンク色がclosed loop、水色が口側腸管、茶色が肛門側腸管です。
シェーマで書くとこんな↓感じです。

小腸間膜に穴が空いており、ここに腸管が入り込んでいました。
幸いこの症例は早期に手術され、腸管は壊死には陥っておらず、ヘルニアの解除のみを行いました。

小腸間膜ヘルニア(異常裂孔ヘルニアの1つ)による内ヘルニアと診断されました。
症例 50歳代男性 腹痛

腹部造影CTの横断像で前方に小腸閉塞を認めており、正中部にヘルニア門を認めています。

冠状断像では、逸脱した腸管の様子がよくわかります。

矢状断像ではヘルニア門及び逸脱した腸管の様子がよくわかります。
大網裂孔ヘルニア(異常裂孔ヘルニアの一つ)による内ヘルニアと診断されました。
内ヘルニアによる絞扼性腸閉塞の治療は?
- 内ヘルニアは腸の絞扼・虚血に進むことがある外科的な緊急疾患とされ(Doishita 2016)、closed loopを作った腸閉塞では早めの手術が考慮されます(Takeyama 2005)。
- 手術では、入り込んだ腸を引き戻し(整復)、腸の色や動きで血流が保たれているかを確かめます。血流が戻らず壊死していれば、その部分の腸を切除してつなぎます。
- 再発を防ぐため、ヘルニア門を縫って閉じるか、逆に大きく開放します。傍十二指腸ヘルニアの腹腔鏡手術をまとめた報告では、左側の88%でヘルニア門を閉鎖し、右側の81%でヘルニア門を大きく開放(右側結腸の授動を含む)していました(Lampropoulos 2024)。
- 状態が安定していて腸の虚血がない場合は、腹腔鏡での修復も行われています(Lampropoulos 2024)。
内ヘルニアでよくある疑問(Q&A)
Q. 内ヘルニアとは、簡単に言うとどんな病気ですか?
A. お腹の中にあるくぼみや、腸間膜・大網などにあいた穴に腸が入り込んで抜けなくなる病気です。外から見えるふくらみはなく、腸閉塞(イレウス)として見つかることがほとんどです。
Q. 内ヘルニアの原因は何ですか?
A. 生まれつきのくぼみや穴(胎児期の腸の回転・固定の異常)と、手術や外傷のあとにできた穴の2つがあります。胃バイパス術(Roux-en-Y再建)や肝移植などの手術後の内ヘルニアは増えているとされます(Martin 2006)。
Q. CTで内ヘルニアを疑う手がかりは?
A. 腸閉塞があるのに、ふつう腸がない場所に小腸が袋に包まれたように集まっていること、ヘルニア門に向かって腸間膜の血管が集まり・引き伸ばされ・ねじれていることが手がかりです(Takeyama 2005、Doishita 2016)。
Q. 手術をしたことがなくても起こりますか?
A. 起こります。傍十二指腸ヘルニアのように生まれつきのくぼみが原因のものは、手術歴のない若い人にも見られます。手術歴のない人の腸閉塞でも、内ヘルニアを鑑別に入れることが大切です(Takeyama 2005)。
参考文献)
・ここまでわかる急性腹症のCT 植木力先生
・マルチスライスCTによる腹部救急疾患の画像診断 山崎道夫先生
・腹部間膜と内ヘルニア(画像診断2011年10月) 大分大学 本郷哲央先生
・消化管閉塞 2.内ヘルニア(画像診断2012年12月)昭和大学藤が丘病院 竹山信之先生
- Martin LC, Merkle EM, Thompson WM. Review of internal hernias: radiographic and clinical findings. AJR Am J Roentgenol. 2006;186(3):703-717. PubMed
- Takeyama N, Gokan T, Ohgiya Y, et al. CT of internal hernias. Radiographics. 2005;25(4):997-1015. PubMed
- Doishita S, Takeshita T, Uchima Y, et al. Internal Hernias in the Era of Multidetector CT: Correlation of Imaging and Surgical Findings. Radiographics. 2016;36(1):88-106. PubMed
- Teoh R, McClen R, Iorgulescu D. Acute small bowel obstruction secondary to a right-sided paraduodenal hernia: a case report and review of operative management. J Surg Case Rep. 2026;2026(8):rjag752. PubMed
- Lampropoulos C, Kehagias D, Bellou A, et al. Minimally invasive surgery for paraduodenal hernias: report of a case and mini-review of operative techniques. Acta Chir Belg. 2024;124(3):234-242. PubMed
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