下垂体腺腫(pituitary adenoma)
■疫学 |
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■分類 |
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■診断 | MRI |
下垂体腺腫(microadenomaの場合)のMRI所見
- 正常下垂体は強く増強されるが、腺腫はあまり染まらず相対的に低信号として描出される。腺腫は遅れて染まる。
- 従って、ダイナミックの造影T1WIで診断をする。
- 分布はホルモン分泌細胞の分布にある程度相関する。(あくまで傾向)
–PRLとGH産生腫瘍は下垂体の外側部。
–ACTH、TSH産生腫瘍は正中部に位置する傾向。
Rathke嚢胞との鑑別
- 位置と信号、造影効果の有無が大切。
- 腺腫の7割以上は外側に偏位しており、Rathke嚢胞の9割近くが正中に位置している。
- Rathke嚢胞は蛋白濃度によりさまざまな信号を示すが、T1で高、T2で低はRathke嚢胞に特徴的。
- Rathke嚢胞は境界明瞭で全く造影されない。
症例 50歳代男性 プロラクチン高値
下垂体前葉やや右寄りに4mm大の造影不領域を認めています。
下垂体腺腫(microadenoma)を疑う所見です。
症例 40歳代女性 MEN1型
下垂体前葉やや左寄りに7mm大の造影不領域を認めています。
下垂体腺腫(microadenoma)を疑う所見です。
こちらの症例を動画でチェックする。造影前から徐々に腺腫のところを残して造影される様子がわかります。
下垂体腺腫(macroadenoma)
- 1cm以上の下垂体腺腫。非機能性が多い。
- 視野障害(両耳側半盲)、視力障害、頭痛で発症することが多い。
- 正常下垂体がどちらに変位しているか、海綿静脈洞へ浸潤しているかといったことは、術前に確認しておく必要がある。
下垂体腺腫(macroadenoma)のMRI所見
- 腺腫は充実性のことが多い。
- 内部に出血性嚢胞変性を来すことがある。
- 上方に進展すれば視交叉を圧迫する。
- MRAではA1の挙上と内頸動脈のsiphon部の開大を示すのが典型的である。
- 海綿静脈洞への浸潤を示す所見としては、
▶内頸動脈の狭窄
▶腫瘍が内頸動脈を2/3周以上取り囲んでいること、
▶内頸動脈の下内側部の海綿状脈洞部(carotid sulcus venous component)に浸潤していることなどがある。
症例 70歳代男性
左側はT1強調像冠状断像、右側はT2強調像矢状断像です。
下垂体にダルマ型の腫瘤あり。
下垂体腺腫(macroadenoma)を疑う所見です。
内頚動脈への進展は認めません。
症例 下垂体腺腫
海綿静脈洞への浸潤を示す下垂体腺腫(macroadenoma)の症例です。
チェックすべきポイント
- 大きさ、部位
- 海綿状脈洞進展:上記参照。
- 視交叉の状態
- 正常下垂体の位置-ダイナミックをすると分かりやすい
- 腫瘍の内部性状:特に出血の有無(macroadenomaの1/3に見られたという報告も)
※下垂体と海綿状脈洞の間には硬膜がないので容易に進展しやすい。
機能性下垂体腺腫の腫瘍別MR所見の特徴
PRL産生腺腫
- 男性例では頭蓋底や海綿状脈洞や硬膜へ浸潤傾向が強い。
GH産生腺腫
- 下方進展の傾向
- T2WIで低信号
ACTH産生腺腫(Cushing病)
- ほとんどmicroadenoma
- MRで検出できるのは1/3-2/3
- 下垂体後葉の前方からも発生する
- 静脈洞サンプリングが有用(海綿状脈洞に直にマイクロカテーテルを入れる)
異所性下垂体腺腫
- 下垂体柄周囲の前葉組織から発生すると鞍上部に限局したり、蝶形骨洞内や咽頭粘膜の副前葉組織から発生することもある。
MRIで下垂体に偶然見つかる病変=Pituitary incidentaloma
- 1000例の剖検で2mm以上の病変が61例あり。=6%は偶然見つかる。
- ラトケ嚢胞>腺腫あるいは過形成>>梗塞、出血
- 外側に局在=下垂体腺腫、正中部=ラトケ嚢胞が多い。
関連記事:ラトケ嚢胞のMRI画像診断のポイントは?
参考文献: