胆嚢の構造
- 胆嚢には粘膜下層(粘膜下組織=粘膜筋板)に相当する部分がない。
→癌が漿膜側に浸潤し、周囲臓器への直接浸潤、リンパ節転移が起こりやすい。
胆嚢癌の一般的事項
- 胆嚢、胆嚢管から発生。大部分は腺癌。
- 50歳以上,女性に多い(1:3)。
- リスクファクター:胆嚢結石、膵管胆管合流異常。
※ただし症状がない胆石の群ではevidence(-)
壁深達度診断
- 粘膜層(m)
- 固有筋層(mp)
- 漿膜下層(ss)
- 漿膜面(se)
- 多臓器浸潤(si)
胆嚢壁には粘膜筋板がない。→容易に漿膜下層に浸潤する。
鑑別診断
- 慢性胆嚢炎
- 陶磁様胆嚢
- 黄色肉芽腫性胆嚢炎
- 胆嚢ポリープなど
胆嚢癌疫学エビデンス
- 無症候性胆嚢結石
- 陶磁器様胆嚢
- 胆嚢腺筋腫症
いずれも、胆嚢癌になりやすいというエビデンスはない!
壁深達度診断はEUS
- 壁深達度診断はEUSで行なう。
- 胆嚢良性疾患vs.胆嚢癌鑑別:感度92-97%
深達度診断正診率
- m、mp →83-100%
- ss →75%
- se以深 →75-100%
なので、深達度ではCTやMRIはEUSにはかなわない。
CTやMRIによる深達度評価で見るべきポイント
- 肝床浸潤の有無
- 胆嚢の引きつれ(=筋層浸潤あり)
を見逃さなければよい、と割り切る。
CT(単純+造影)の正診率
肝内直接浸潤の正診率
- Hinf0(肝への浸潤を全く認めないもの)→94.7%
- Hinf1(肝への浸潤が疑わしいもの)→83.3%
- Hinf2(肝への浸潤は明らかであるが、肝門部胆管周辺にとどまるもの)→66.7%
- Hinf3(肝への浸潤が肝門部胆管周辺にとどまらず、さらに肝内に及ぶもの)→77.8%
リンパ節転移の検出率 38-65%
- 短径10mm、リング状濃染
胆嚢内隆起性病変に対する単純+造影CT
- 感度88%、特異度87%、正診率87%
※MRも似たようなもん。
これらを踏まえた上で胆嚢癌画像所見
胆嚢癌の肉眼所見
- 内腔突出型:ポリープ状に突出、良性ポリープ,コレステロール結石との鑑別が必要
- 壁肥厚型:胆嚢壁のびまん性肥厚、胆嚢腺筋症との鑑別が難しい。
- 腫瘤形成型:胆嚢の位置に不整な腫瘤。正常胆嚢が認められない。肝直接浸潤があると,肝との境界不明瞭。
いずれの型でも高率に胆嚢結石を合併(50~70%)。
胆嚢癌を疑う所見
形態では,有茎性が良性,広基性は悪性が多い。
胆嚢隆起性病変において
- 径10mm以下→コレステロールポリープが多い。
- 径11〜15mm→癌、腺腫、ポリープがほぼ同程度。
- 径16mm以上→腫瘍が多い。
※10mm以上で増大傾向を認める場合は要注意。
コレステロールポリープは体部や頚部に多発。胆嚢管には見られない。5mm以下が多数。稀に1cmを超える。
胆嚢の良性腫瘍の頻度は低い。
- Papillary adenoma:多発
- simple adenoma:単発で多くは有茎性。
が多い。いずれも10mm以下が多い。前癌病変とも考えられている。
症例 50歳代女性
胆嚢に12mm大の広基性腫瘤あり。
手術の結果、胆嚢がんと診断されました。
胆嚢癌のT因子
胆嚢癌の病期診断で重要なのはT因子。∵各段階ごとに予後が異なり、術式も異なるため。
- T1:胆嚢壁内(筋層まで)
- T2:胆嚢周囲結合織(腹腔側では漿膜下層)まで
- T3:漿膜浸潤、肝、または肝外の1臓器(胆管、膵、胃、十二指腸、大網)浸潤
- T4:固有肝動脈、門脈、あるいは肝外の2臓器以上の浸潤
壁浸潤のヒント
- 壁深層に浸潤するに従い、線維性間質が増える。→遷延性〜遅延性濃染が認められる。※線維性ポリープ、肉芽腫性ポリープでは、非腫瘍性であっても遷延性、遅延性濃染を呈することがある。
- それ以前の段階では形態学的特徴にて、size>1cm、広基性→悪性を示唆。
M因子
- 重要なのは肝転移。
- 早期より胆嚢静脈経由で起こるとされる。→T2病変での胆嚢静脈還流域(S4、5)の系統的切除の根拠とされている。
N因子
肝門部付近のリンパ流経路を把握しておくと有用。
肝門部のリンパ流は大きく2つある。
- 肝十二指腸間膜の頭側を通り、総肝動脈〜腹腔動脈根部に向かうもの。
- 肝十二指腸間膜の足側を通り、Wilson孔周辺から膵頭部周囲へ向かうもの。 いずれのルートも最終的には膵頭レベルのaortocaval nodeへdrainされ、そこから傍大動脈群と連絡する。
関連記事:胆嚢癌のリンパ節転移の画像診断で重要な胆嚢のリンパ路の流れとは?
切除不能な胆道癌(手術できない)
- 肝臓、肺への血行性転移。
- 腹膜播種。
- 遠隔リンパ節転移(傍大動脈リンパ節転移)。
局所進展の範囲についてはコンセンサスなし。