先に結論:浸潤性乳管癌
- 浸潤性乳管癌は乳癌の大部分を占める型で、日本の乳癌取扱い規約では長く乳頭腺管癌・充実腺管癌・硬癌の3亜型に分けられてきました(第18版(2018)では腺管形成型・充実型・硬性型・その他と呼称変更)
- 旧規約の亜型とMRIの関係では、硬癌は鋸歯状(スピキュラ様)の辺縁、充実腺管癌は遅延相のrim enhancement、乳頭腺管癌は線状の造影(乳管に沿った広がり)が多いと報告されています(Kitagawa 2004)
- invasive ductal carcinoma(IDC)の日本語は浸潤性乳管癌で、WHO分類 第5版(2019)では浸潤性乳癌・特殊型でない(invasive breast carcinoma of no special type:IBC-NST)にあたります(Ozaki 2021)。WHO分類には旧規約の3亜型に相当する区分はありません
- 治療方針は形態よりサブタイプ(ホルモン受容体・HER2・Ki-67)で決まるため、画像の役割は主に広がり診断です
浸潤性乳管癌(Invasive ductal carcinoma)
- 乳癌の中で最も多い組織型。
- ・癌細胞が間質(筋上皮細胞層および基底膜を破って進展)に浸潤しているもの。そのため、リンパ節転移や他臓器転移のリスクあり。
- 浸潤癌においてもしばしば乳管内進展をする。
- 特殊型やまれな乳癌に分類できないもの。
- 乳癌取扱い規約では、第18版まで以下の3つの亜分類が使われてきた。日本独自の分類。第18版(2018年5月)では「腺管形成型」「充実型」「硬性型」「その他」と呼称変更された(国立がん研究センター がん登録資料 2023)。
旧規約(第18版まで)の3亜型
- 乳頭腺管癌
- 充実腺管癌
- 硬癌
- 1>2>3の順で分化度が高い。これらが混在する場合も多い。
- 2種類以上の組織型が見られる場合は優位な組織型に分類。
- しかし、subtypeで治療をするので、形態学的な亜分類にはこだわらなくてよい。サブタイプとの関係では、トリプルネガティブ乳癌は単発の腫瘤・平滑な辺縁・rim enhancement・漸増型の造影パターン・T2強調像での腫瘍内の著明な高信号(壊死を反映)と有意に関連したと報告されている(Uematsu 2009)。
- WHO分類(第5版, 2019)にはこの3亜型はなく、浸潤性乳管癌は浸潤性乳癌・特殊型でない(invasive breast carcinoma of no special type:IBC-NST)に相当する(Ozaki 2021)。
invasive ductal carcinomaの日本語・意味と関連する用語
invasive ductal carcinomaは、invasive(浸潤性)+ductal(乳管の)+carcinoma(癌)で、「乳管から発生し、乳管の外(間質)へ広がった癌」という意味です。
| 英語 | 日本語 | ポイント |
|---|---|---|
| invasive ductal carcinoma(IDC) | 浸潤性乳管癌 | 乳癌で最も多い型 |
| invasive breast carcinoma of no special type(IBC-NST) | 浸潤性乳癌・特殊型でない(非特殊型) | WHO分類(第5版, 2019)での呼び名(Ozaki 2021) |
| ductal carcinoma in situ(DCIS) | 非浸潤性乳管癌 | 乳管の中にとどまり、基底膜を越えていない癌 |
| invasive lobular carcinoma(ILC) | 浸潤性小葉癌 | NSTに次いで多く、乳癌の最大15%程度(Van Baelen 2022) |
| papillotubular / solid-tubular / scirrhous carcinoma | 乳頭腺管癌 / 充実腺管癌 / 硬癌 | 日本で従来使われてきた浸潤性乳管癌の亜分類(第18版では腺管形成型 / 充実型 / 硬性型) |
以下の表は、旧規約の3つの亜分類のおおまかな傾向です。実際の症例では混在することも多く、当てはまらない場合もあります。

| 進展形式 | 組織形態学的分化度 | リンパ節転移 | 予後 | |
| 乳頭腺管癌 | 管内進展性 | 高分化 | 低率 | 良好 |
| 充実腺管癌 | 管外圧排性 | 中-低分化 | 中間 | 中間 |
| 硬癌 | 管外浸潤性 | 低分化 | 高率 | 不良 |
乳頭腺管癌(papillotubular carcinoma)
- 浸潤性乳管癌の中で最も分化度が高く予後が良い。
- 乳管の中の病変がメインである乳管内進展型乳癌と、間質浸潤が主体のものに分けられる。
- 横に伸びる、雲みたいな形態で進展。
- 円形、楕円形、分葉形の辺縁粗造〜不明瞭な腫瘤像あるいは非腫瘤性、区域性の濃染像を呈する。
- 乳管内成分が主体の場合はductalな分布を呈し、DCISとの鑑別は困難。(サイズが大きい場合や、T2WIで高信号を示す場合は乳頭腺管癌がより疑わしい)
- ダイナミックにおいて、多くはrapid- washoutのパターンを呈するが、漸増性に造影されるものもある。
充実腺管癌(solid-tubular carcinoma)
- 圧排性に発育。周囲との境界は比較的明瞭。
- 充実性腫瘤を呈するものが多く、その場合、線維腺腫、葉状腫瘍、粘液癌との鑑別を要する。
- rapid-washoutを呈することが多い。後期相でrim enhancementを伴うことがある。造影MRIの検討では、遅延相のrim enhancementは充実腺管癌の85.7%(12/14)に見られた一方、硬癌ではまれ(4.5%)で、硬癌は90.9%(20/22)で鋸歯状の辺縁を示しました。線状の造影は乳頭腺管癌の50%(13/26)に見られました(Kitagawa 2004)。
硬癌(scirrhous carcinoma)
- 細胞がバラバラと線維化を伴いspiculaを伴う古典的乳癌の形態を呈する事が多い。
- 乳管内成分が乏しく間質浸潤が高度な狭義の硬癌と、乳頭腺管癌や充実腺管癌由来で間質浸潤部分が面積的に優位になったものに分けられる。
- 辺縁不整な腫瘤像を呈する。中心部は線維化を反映してT2WIで低信号を呈することがある。
- ダイナミックでは中心部は線維化が多いのでplateau-persistent型の造影効果を呈する事が多い。辺縁部はrapid-washout型の造影効果。
症例 60歳代女性

左AC領域に径25mm大のspiculaを伴う腫瘤。TICにてrapid washout-plateauの造影パターンを呈しており、乳癌を疑う
【病理診断】浸潤性乳管癌、硬癌
浸潤性乳管癌でよくある疑問(Q&A)
Q1. 浸潤性乳管癌にはどんな種類がありますか?
日本では形の違いから乳頭腺管癌・充実腺管癌・硬癌(第18版では腺管形成型・充実型・硬性型・その他)に分けられてきました。WHO分類(第5版, 2019)では浸潤性乳癌・特殊型でない(IBC-NST)とまとめて呼びます。一方、治療を考えるうえでは、ホルモン受容体・HER2・Ki-67などで分けるサブタイプのほうが重視されます。
乳房のしこりなど気になる症状があれば、乳腺外科などの医療機関を受診してください。
あわせて読みたい:乳腺腫瘍の組織学的分類:乳癌の組織型(浸潤性乳管癌・特殊型)の種類と頻度
参考文献
- Kitagawa K, Sakuma H, Ishida N, et al. Contrast-enhanced high-resolution MRI of invasive breast cancer: correlation with histopathologic subtypes. AJR Am J Roentgenol. 2004;183(6):1805-9. PubMed
- Takeda Y, Yoshikawa K. Contrast-enhanced dynamic MR imaging parameters and histological types of invasive ductal carcinoma of breast. Biomed Pharmacother. 2005;59(3):115-21. PubMed
- Tan PH, Ellis I, Allison K, et al. The 2019 World Health Organization classification of tumours of the breast. Histopathology. 2020;77(2):181-185. PubMed
- Uematsu T, Kasami M, Yuen S. Triple-negative breast cancer: correlation between MR imaging and pathologic findings. Radiology. 2009;250(3):638-47. PubMed
- Van Baelen K, Geukens T, Maetens M, et al. Current and future diagnostic and treatment strategies for patients with invasive lobular breast cancer. Ann Oncol. 2022;33(8):769-785. PubMed
- Ozaki Y, Miura S, Oki R, et al. Neuroendocrine Neoplasms of the Breast: The Latest WHO Classification and Review of the Literature. Cancers (Basel). 2021;14(1):196. PubMed
- 国立がん研究センター がん情報サービス. 院内がん登録 部位別資料 乳房(C50)(2023年6月20日更新;乳癌取扱い規約 第18版に基づく組織型表記). PDF
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
