先に結論:乳腺粘液癌

  • 粘液癌は粘液の中に癌細胞が浮かぶ特殊型の乳癌で、高齢女性に多く、純型は予後良好です
  • 境界明瞭な丸い腫瘤で、MRIではT2で著明な高信号・ADCも高いため、線維腺腫(特に粘液腫様)とよく似ます
  • 超音波では微細分葉状の境界・後方エコーの増強・嚢胞部分と充実部分の混在がよく見られます(Lam 2004)
  • 造影で辺縁からゆっくり染まり、内部に隔壁状の造影が見られるのが手がかりで、迷うときは生検で確認します

粘液癌(Mucinous carcinoma:ムチナス・カルシノーマ)とは?

・乳癌の中ではまれな特殊型。

・高齢者に多い。

・腫瘍性上皮細胞から細胞外へ分泌された粘液巣を特徴とする。

・純型(pure type)と混合型(mixed type)にわけられる。

  • 純型:病巣全体が粘液結節からなり、間質浸潤のないもの。
  • 混合型:部分的に粘液産生を伴わない通常型の浸潤性乳管癌の病巣をみるもの。

・線維腺腫との鑑別はどのモダリティでも困難な場合がある。

画像所見は?

▶マンモグラフィ

・円形、楕円形、分葉形ときに不整形の腫瘤

・境界は明瞭平滑が多いが、時に微細分葉状を呈する。微細分葉状(microlobulated)とは、腫瘤の輪郭に細かい凸凹が連なる境界です。33例の検討では、マンモグラフィで描出された粘液癌の38.5%に微細分葉状の境界がみられ、21.2%はマンモグラフィで描出できませんでした(Lam 2004)。

・時に鋳型状の比較的大きな石灰化を伴う。鋳型状石灰化は、乳管の中を埋めるような線状・枝分かれ状の石灰化を指します。

・混合型は通常の浸潤癌と区別が困難なことが多い。

▶超音波検査

・境界明瞭平滑な腫瘤。

・縦横比が大きい。

・内部は等から高エコー(線維腺腫より高エコー)を呈し、後方エコーは増強する。細胞成分や液体成分が多い場合は低エコーを呈する。

・前述の33例では、超音波で嚢胞部分と充実部分の混在が37.5%、後方エコーの増強が43.8%、微細分葉状の境界が56.3%にみられでした(Lam 2004)。

▶MRI所見

・T2強調像では著明な高信号。

・乳癌でも例外的にADCが高い。この点がより良性腫瘍との鑑別を困難にする。

  • 純型
    • 境界明瞭平滑または分葉状
    • T1強調像では低信号
    • 漸増型(persistent)濃染で辺縁よりはじまり、隔壁状の造影効果が徐々に内部が濃染される。(隔壁状の造影効果が線維腺腫との鑑別点)T2強調像で強い高信号を示す線維腺腫との比較では、遅延相の造影パターン(漸増型)が純型粘液癌を見分ける唯一の独立した因子だったとする報告があります。

 

  • 混合型
    • 境界不明瞭、辺縁不整
    • T1強調像では低から等信号
    • 急峻な早期濃染後、plateauまたはwash out

・鑑別は線維腺腫、葉状腫瘍、充実腺管癌など境界明瞭な腫瘤。

・粘液腫様線維腺腫と粘液癌の鑑別は時に難しい場合がある。(T2強調画像にて著明な高信号。隔壁様構造を伴う。→鑑別が難しい場合は細胞診を勧める。)

・乳管内病変を伴うことがある。

症例 60歳代女性 乳がん検診で右乳房に腫瘤を指摘

乳腺粘液癌 MRI T2強調像(脂肪抑制) 横断像
引用:Radiopaedia(Mucinous breast cancer)

右乳房(画像の左側)の内側に、丸く境界明瞭な腫瘤があり、脂肪抑制T2強調像で著明な高信号を示しています。周囲の乳腺組織と比べて非常に明るく、粘液を多く含む腫瘍の特徴です。生検で粘液癌と確認された症例です。

粘液癌でよくある疑問(Q&A)

Q. 粘液癌の原因は?
A. 粘液癌だけに特有の原因ははっきりしておらず、通常の乳癌と同じようにさまざまな要因が関わると考えられています。

Q. 境界がきれいなしこりなら良性?
A. 粘液癌は線維腺腫と似て見えることがあり、迷うときは生検で確認します。気になるしこりがあれば医療機関を受診してください。

参考文献

  1. Yuen S, Uematsu T, Kasami M, et al. Breast carcinomas with strong high-signal intensity on T2-weighted MR images: pathological characteristics and differential diagnosis. J Magn Reson Imaging. 2007;25(3):502-10. PubMed
  2. Qu N, Luo Y, Yu T, et al. Differentiation between Pure Mucinous Breast Carcinomas and Fibroadenomas with Strong High-Signal Intensity on T2-Weighted Images from Dynamic Contrast-Enhanced Magnetic Resonance Imaging. Breast Care (Basel). 2018;13(1):32-37. PubMed
  3. Pintican R, Duma M, Chiorean A, et al. Mucinous versus medullary breast carcinoma: mammography, ultrasound, and MRI findings. Clin Radiol. 2020;75(7):483-496. PubMed
  4. Li X, Chai W, Sun K, et al. Whole-tumor histogram analysis of multiparametric breast magnetic resonance imaging to differentiate pure mucinous breast carcinomas from fibroadenomas with high-signal intensity on T2WI. Magn Reson Imaging. 2023;106:8-17. PubMed
  5. Lam WW, Chu WC, Tse GM, et al. Sonographic appearance of mucinous carcinoma of the breast. AJR Am J Roentgenol. 2004;182(4):1069-74. PubMed

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