乳癌の現在の治療
・stage0-Ⅱ(早期):手術±補助療法(術前化学療法(NAC))
・stageⅢ(局所進行):術前化学療法→手術±術後補助療法
→これらは治癒が目的
・stageⅣ(進行・再発):薬物療法±放射線治療±手術
→延命と症状の緩和が目的。
※手術の意義は腫瘤摘出+リンパ節摘出。局所の治療および薬物療法に対する情報入手のため。
乳癌治療の変遷
- 1890年代 胸筋合併乳房切除(Halstedら)
(1920-30年代 拡大乳房切除) - 1967年〜胸筋温存乳房切除(非定型)
- 1990年〜乳房温存手術 Oncoplastic breast surgery
・乳房切除術と乳房温存療法に生存率に有意な差がないことが確認されており、今では乳房温存術が主流となっており、全体の6割を占める。
・最近は乳房温存手術は横ばい〜やや減少。その背景には乳房再建手術。
・2010年にセンチネルリンパ節生検が保険適応となり、普及している。
※センチネルリンパ節=がん細胞が最初に到達するリンパ節の転移の有無が所属リンパ節全体の転移の有無を反映するという考え方。
・乳癌サブタイプ分類に応じた薬物治療が普及している。特に術前化学療法の発展が著しい。
StageⅠ、Ⅱ乳癌の乳房温存療法の適応
1,局所コントロールの安全性と整容性が重要。
2,日本の温存療法ガイドラインでは腫瘍径3cm以下
3,しかし3cmを超える場合でも切除断端陰性かつ整容性が保たれる場合は適応。
※切除断端陽性は局所再発の危険因子。
StageⅠ、Ⅱ乳癌の乳房温存療法の適応外
1,多発顔を異なる腺葉に認める場合。
2,広範囲に乳癌の進展を認める場合。
3,温存療法への照射を行えない場合。
・絶対的禁忌:患側上肢の挙上が不可能、妊娠中、患側乳房の照射の既往。
・相対的禁忌:強皮症、SLEの合併。
4,温存乳房の整容性が保てない場合。
5,患者が温存を希望しない場合。
※年齢、組織型、腫瘍占拠部位、全身再発のリスクは禁忌因子ではない。
乳房画像診断の特徴
・個人差が大きい:大きさ、乳腺の量。
・女性ホルモンの影響をうける。:月経周期、閉経、ホルモン補充療法。
・表在臓器である。:日本では超音波検査の役割が大きい。画像ガイド下生検の重要性が高い。
・乳腺疾患は多彩で、画像により良性と悪性と 2つに鑑別することが難しい場合が多い。
乳腺疾患の診断の進め方
・治療方針決定のため、組織学的診断が必須:良悪性鑑別、Intrinsic subtypeの検索(HR、HER2、NG、Ki67)。
・診療方針の決定にカテゴリー判定が用いられている。:悪性の可能性の程度を表す。診療方針の標準化と情報の共有化。不必要な生検の回避。
・組織学的診断には画像ガイド下針生検が主に用いられる。臨床所見、画像所見、病理所見の対比が重要。針生検(細胞診)は病変の一部のみを採取しているので。
画像ガイド下細胞診・生検
・画像診断の役割は良悪性の決定より、むしろ生検の適応の決定や画像ガイド下のinterventionにある。
・病変に応じて、どうような方法を使用するか考慮する必要がある。同定されるモダリティ。推定される病理組織像。
使用する画像診断法
- ステレオガイド下
- USガイド下
- MRIガイド下
種類
- 穿刺吸引細胞診(Fine needle aspiration cytology:FNAC)
- 針生検(Core needle biopsy:CNB)
- 吸引式組織生検(Vacuum assisted biopsy:VAB)
※吸引式組織生検が最近は多い。一度でいろんな方向から採取できる利点あり。
乳腺疾患の診断のアルゴリズム
放射線科医はどこで関与するのでしょうか?
実は、乳腺疾患の診断において、
・質的診断にMRやCTが用いられる事は少ない。
ため、質的診断に放射線科医が関与することが少ないのです。
質的診断に基本的には使えず、乳房MRIの役割は
・ほとんどは術前の広がり診断
・最近は薬物療法の効果判定(効果予測)
・対側乳房の評価
>>質的診断
という風に使います。
ただし、乳癌診療(検診を除く)における画像診断の推奨グレードでは、MRIはグレードBですすように勧められています。
適応については、乳房MRIの適応を参照してください。