脂肪腫(lipoma)
- 最も高頻度に遭遇する軟部腫瘍の1つ。
- 成熟した脂肪細胞。
- 皮下にも深部(筋間など)にも発生する。
- 表在性(皮下)脂肪性腫瘍の96%程度が脂肪腫。一方、ALT/WDLは深部に存在することが多い。
- 多発性(5%)。
- 時に著しく巨大化。
脂肪腫(lipoma)の画像所見
- 境界明瞭な脂肪のかたまり+隔壁。隔壁、被膜は2mm以下と薄く一様で結節状部分を持たないことが多い。
- 脂肪抑制で完全に抑制される。
- 内部は造影されない。
症例 30歳代
右腰部皮下に薄い被膜を有して、T1WI、T2WIにて高信号、脂肪抑制T1WIにて信号低下をきたす腫瘤あり。
脂肪腫を疑う所見。
▶︎鑑別診断:高分化型脂肪肉腫
・以下の所見を伴う場合、分化型脂肪肉腫(well-differentiated liposarcoma)の可能性あり、注意。
- より大きなサイズ(>10cm)
- 厚い隔壁(>2cm)
- 脂肪以外の軟部成分
- 脂肪成分<75%
- 高齢(>66歳)の男性
特徴的な所見や特徴を呈する良性脂肪性腫瘤
- 筋肉脂肪腫(intramuscular lipoma)
- 紡錘細胞性脂肪腫(spindle cell lipoma)
- 褐色脂肪腫(hibernoma)
- 樹枝状脂肪腫(lipoma arborescens)
筋肉脂肪腫(intramuscular lipoma)
- T1WI・T2WIで筋線維と同様の信号が腫瘍の内部に認められる
紡錘細胞性脂肪腫(spindle cell lipoma)
- 中高年男性の後頸部、肩、上背部皮下に発生することが多い。そのためShawl are(ショール:肩掛け)に好発するとされる。
- 境界は明瞭で、卵円形>二葉の形態を示す。
- 画像上、腫瘍内に腫瘍を同定できることが多いが、できないこともある。
症例 50歳代男性 後頚部腫脹
引用:radiopedia
後頚部皮下腫瘤を認めており、腫瘍の下極の内部に一部脂肪成分を認めています。
紡錘細胞性脂肪腫(spindle cell lipoma)と診断されました。
褐色脂肪腫(hibernoma)
- 熱産生に関与する褐色脂肪への分化を示す脂肪性腫瘍。
- 大腿が好発部位。
- 20-40歳代に好発。
- FDG-PETで鑑別が可能。画像での鑑別は困難。
症例 20歳代女性
引用:radiopedia
右大殿筋と中殿筋の間に境界明瞭な腫瘤を認め、 栄養血管を示唆するflow voidを有しています。
腫瘤はT1WI/T2WIで皮下脂肪よりやや低信号、脂肪抑制T1WIで信号低下を認めます。
褐色脂肪腫(hibernoma)と診断されました。
樹枝状脂肪腫(lipoma arborescens)
- 滑膜下に成熟脂肪組織が増生する疾患。
- 95%が膝関節膝蓋上嚢(suprapatellar pouch)に発生する。他には、肩の三角筋下滑液包や、肘の上腕二頭筋橈骨滑液包に生じることがある。
- MRIでは関節内腔もしくは滑液包内に脂肪を示唆する信号域が葉状ないし多結節状に認める。
症例 10歳代男性 膝の痛みと腫脹(外傷はなし)
引用:radiopedia
膝蓋上嚢を中心に関節液貯留を認め、内部に樹枝状の突起構造が多数あります。
一部はT1WI/T2WIで高信号で脂肪抑制で低信号となっており、脂肪の存在を示唆する所見です。
典型的な(年齢は典型的ではないが)、樹枝状脂肪腫(lipoma arborescens)と診断されました。
関連記事:異型脂肪様腫瘍(ALT)、高分化脂肪肉腫(WDL)のMRI画像所見のポイント