胸のCTで「肺気腫があります」と言われました。どんな病気ですか?
たばこの煙などで肺の小さな袋(肺胞)がこわれた状態で、COPDという病気の一つの形です。進まないようにするには、禁煙がいちばん大切ですよ。
先に結論:COPD(肺気腫)とは
- 肺の奥の小さな袋(肺胞)がこわれて、空気をうまく出し入れできなくなる病気。CTでは肺の中に黒く抜けた部分として写ります
- 原因のほとんどはたばこ(受動喫煙も含む)
- 症状は坂や階段での息切れ・長引くせき・たん。初めは気づきにくい
- 禁煙がいちばんの治療。こわれた肺は元に戻りませんが、進むのを遅らせられます。吸入薬・ワクチン・リハビリも
- CTでは肺気腫を小葉中心性・汎小葉性・傍隔壁型の3つの型に分け、型と程度を評価します。レントゲンでは、進んだ例で肺の過膨張(横隔膜が平らになる・肺が黒っぽく見える)として写ります
- CTで言われたら、呼吸器内科で呼吸機能検査(スパイロメトリー)を受けて程度を確認しましょう
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは?

- 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)という概念は、従来は慢性気管支炎・肺気腫による閉塞性換気障害とされてきたが、GOLD 2023では、気道(気管支炎・細気管支炎)や肺胞(肺気腫)の異常によって慢性の呼吸器症状を生じ、持続性でしばしば進行性の気流閉塞をきたす不均一な肺の状態と定義されている。
- 肺病変としては肺気腫、気道性病変としては末梢気道の炎症性変化、狭窄および中枢気道の炎症性変化。
- 近年は臨床的、あるいは形態的にCOPDは肺気腫優位型(気腫型COPD)、気道優位型(非気腫型COPD)とphenotype分類されるようになってきている。両者が混合することもある。
- 混合している場合、呼吸困難などの症状が強く、呼吸機能も低下しやすい。またCOPDの増悪による入院も多いと報告されている。
- CT画像診断では、気腫の状態、気道病変の状態を評価する。
- COPDでは気道病変+肺気腫病変といった換気障害だけではなく、比較的早期から肺末梢の血管障害が生じる。
- 重度のものでは二次的な肺高血圧を来す。
COPDの肺病変=肺気腫(pulmonary emphysema)のCT所見は?

- 肺気腫は、病理組織学的には肺胞壁の破壊、消失による終末細気管支より末梢の気腔の非可逆的拡張。
- 亜分類として、小葉中心性肺気腫、汎小葉性肺気腫、および傍隔壁型肺気腫の3つがある。Fleischner Societyの分類では、小葉中心性肺気腫をtrace・mild・moderate・confluent・advanced destructiveの5段階に、傍隔壁型をmild・substantialの2段階に分けて評価します。COPDGene研究の喫煙者3,171例では、この視覚評価で trace を超える肺気腫があると死亡リスクが高く(調整ハザード比:mild 1.7、moderate 2.5、confluent 5.0、advanced destructive 4.1)、定量評価(LAA-950)で補正しても関連が残りました。読影レポートでも型と程度を記載する意義があります。
小葉中心性肺気腫
- 呼吸細気管支周囲を主体として肺胞壁破壊が生じ気腔拡大を呈する。
- 上葉内層優位に明瞭な壁を持たない小葉中心部の低吸収域。
- 進行に応じて全肺野に広がる。
- 最も多いタイプ。
- 喫煙と強く関連。

症例 50歳代女性

症例 50歳代女性

汎小葉性肺気腫
- 末梢肺胞レベルでの破壊が特徴。
- 下葉優位に二次小葉全体が均質に破壊されて低吸収域となる。
- 本邦ではほとんどがα1アンチトリプシン欠損症とは関連しないもの。

症例 70歳代男性

両側下肺野優位に、透過性の亢進を認める。
傍隔壁型肺気腫
- 上葉胸膜直下の肺胞壁の破壊により低吸収域を呈する。
- 小葉中心性肺気腫との併存が多い。
- 他のタイプと比較して、気流制限を来す事は少ない。
- 気胸の原因になりうる。

症例 60歳代男性

肺気腫の3つの型のCT所見の特徴(まとめ)
| 型 | できやすい場所 | CTの見え方 |
|---|---|---|
| 小葉中心性肺気腫 | 上葉 | 小葉の中心に壁のない小さな低吸収域が散らばり、進むと融合する |
| 汎小葉性肺気腫 | 下葉 | 小葉全体が均一に低吸収になり、血管が細く少なく見える |
| 傍隔壁型肺気腫 | 上葉の胸膜直下 | 胸膜に沿って一列に並ぶ低吸収域。気胸の原因になりうる |
▶動画でチェック:正常肺と汎小葉性肺気腫の比較
COPDの気道病変のCT所見は?
- 気管支壁肥厚、および呼気CTでの気管支内腔の狭小化
- 気管支壁の吸収値上昇
- 呼気CTにおけるエア・トラッピング
COPD(肺気腫)の胸部レントゲン(X線)所見は?
胸部レントゲンでは、主に肺の過膨張と肺の血管影の減少として写ります。
- 横隔膜の平低化(ドーム状のカーブが平らになる)
- 肺野の透過性亢進(肺が全体に黒っぽく見える)
- 肺の外側の血管影の減少、ブラ
- 心臓が縦に細長く見える滴状心
- 側面像での胸骨後腔の拡大、胸郭の前後径の増大(樽状胸)
これらは進んでから目立つ所見で、軽い肺気腫はレントゲンではわからないことが多く、CTのほうが早くとらえられます。COPDの診断は呼吸機能検査(スパイロメトリー)で行います。息切れやせき・たんが続くなど気になる症状があれば、呼吸器内科を受診してください。
COPD急性増悪でCTを撮るのはなぜ?
急性増悪(息切れやたんが急に悪化した状態)では、肺炎・気胸・心不全・肺塞栓症が隠れていないかをCTで確認します。造影CTで調べたメタ解析では、原因不明の急性増悪の16.1%に肺塞栓症が見つかっています(Aleva 2017)。
▶ ほかの所見も調べる:健診・人間ドックの画像検査で言われやすい所見一覧
関連記事:肺のブラ・ブレブとは?肺気腫(気腫性変化)との違いとCT画像、自然気胸との関係
あわせて読みたい:COPD総論(IPAG、診察、重症度分類、合併感染)
参考文献
- Lynch DA, Austin JH, Hogg JC, et al. CT-definable subtypes of chronic obstructive pulmonary disease: a statement of the Fleischner Society. Radiology. 2015;277(1):192-205. PubMed
- Agustí A, Celli BR, Criner GJ, et al. Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease 2023 Report: GOLD Executive Summary. Eur Respir J. 2023;61(4):2300239. PubMed
- Lynch DA, Moore CM, Wilson C, et al. CT-based Visual Classification of Emphysema: Association with Mortality in the COPDGene Study. Radiology. 2018;288(3):859-866. PubMed
- Park J, Hobbs BD, Crapo JD, et al. Subtyping COPD by Using Visual and Quantitative CT Imaging Features. Chest. 2020;157(1):47-60. PubMed
- Aleva FE, Voets LWLM, Simons SO, et al. Prevalence and Localization of Pulmonary Embolism in Unexplained Acute Exacerbations of COPD: A Systematic Review and Meta-analysis. Chest. 2017;151(3):544-554. PubMed
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