頭部外傷により頭蓋内に出血が起こると、脳ヘルニアが起こり、最悪死に至ることがあります。その原因の一つに、急性硬膜外血腫(AEDH:acute epidural hematoma)という病態があります。

今回はこの急性硬膜外血腫について

  • 症状
  • CT画像診断

についてイラストや実際の症例を交えながらわかりやすく解説したいと思います。

急性硬膜外血腫って、硬膜下血腫とどうちがうの?

頭の骨と硬膜のあいだにたまる出血で、CTではレンズのような凸の形に写ります。いったん意識がもどってから急に悪くなることがあるので要注意ですよ。

先に結論:急性硬膜外血腫のCT

  • 急性硬膜外血腫は、頭を打って頭蓋骨が折れ、その内側の動脈(多くは中硬膜動脈)が切れて、頭蓋骨と硬膜の間に血がたまる状態で、若い人の強い頭部外傷に多いです
  • CTでは頭蓋骨の内側の凸レンズ形(両凸)の白い血腫で、縫合線を越えないのが特徴です(三日月形で縫合線を越える硬膜下血腫との違い)。中に黒っぽい渦(swirl sign)があると出血が続いているサインです
  • 一度意識が戻ったあとに再び悪くなる意識清明期が有名で、血腫が大きい場合は緊急の開頭手術が必要です。Brain Trauma Foundationの指針(Bullock 2006)では、血腫量30 cm³を超える急性硬膜外血腫はGCSにかかわらず手術、30 cm³未満・厚さ15 mm未満・正中偏位5 mm未満でGCS 9以上かつ局所神経症状がなければ、CTの反復と厳重な観察による保存的治療も選択肢とされています。昏睡(GCS 8以下)で瞳孔不同を伴う場合はできるだけ早い血腫除去が強く推奨されています。

※頭を強く打ったあと、頭痛・吐き気・ぼんやりする・意識が悪くなるときは、すぐに救急車を呼んでください。

急性硬膜外血腫(AEDH:acute epidural hematoma)とは?

英語ではacute epidural hematoma、英国式の表記ではextradural haematomaとも書かれ、略語はAEDH(急性硬膜外血腫)、EDH(硬膜外血腫)です。カルテや読影レポートでは「EDH」と略されることが多いです。

まず、頭部打撲などにより多くは受傷部位(coup injury)に頭蓋骨骨折(多くの症例で骨折を伴う)をきたし、中硬膜動脈の破綻により頭蓋骨内板と硬膜の間に出血が起こるのが、急性硬膜外血腫です。

この硬膜は頭蓋骨と比較的密にくっついており、本来硬膜外腔は生理的には存在しません。ピンセットで硬膜を無理やり剥がすとでてくるのが硬膜外腔です。ですので、血腫は広がりにくい・縫合線を超えないのが特徴です。

破綻する血管は中硬膜動脈が最多ですが、他には、板間静脈、上矢状静脈洞、横静脈洞などが破綻することもあります。

epidural hematoma

硬膜動脈は頭蓋骨に埋まったような形で走行しているため、頭蓋骨骨折(線状骨折が主、時に陥没骨折)により損傷して出血が起こります。血腫は骨折部の直下にできやすく、多くは片側性です。

好発部位は側頭から頭頂部で、後頭蓋窩では頭蓋骨と硬膜の癒着が強く、硬膜外血腫は少ないです。なお、中頭蓋窩の前端(蝶形骨大翼の内側)に限局する硬膜外血腫は、蝶形頭頂静脈洞からの静脈性出血と考えられています。外傷性テント上硬膜外血腫200例中21例(10.5%)がこの型で、全例が経過観察で増大せず、手術を要しませんでした(benign anterior temporal EDH、Gean 2010)。

頭部外傷の中での頻度は低く、類似した名前の急性硬膜下血腫の方が頻度が高いです。

好発年齢として、重篤な外傷を負った若年者に多い一方で、高齢者では硬膜と頭蓋骨内板の癒着が強く、乳幼児では骨が柔らかく骨折しにくいうえ血管溝が浅く硬膜動脈を損傷しにくいため、いずれも比較的少ないです。

急性硬膜外血腫の症状は?

一時的な意識回復(意識清明期)が見られることがある症状経過が特徴的です。

  • ①意識混濁→②一旦意識回復(数分〜数時間)→③再度意識混濁

という経過をとることがあるのがこの病態の特徴です。

①意識混濁

外傷を受けた直後は、意識混濁となります。

②一旦意識回復(数分〜数時間)

その後、数分から数時間の間、一旦意識は回復する(これを意識清明期(lucid interval)という。)ことがあります。

この意識清明期(lucid interval)が見られるのは急性硬膜外血腫の一部に限られ、意識清明期がないからといって否定はできません。

また、後頭蓋窩の静脈洞損傷による硬膜外血腫では、意識清明期が数日に及んだのちに急変することがあります。

「ところで、なぜ意識清明期が存在するのでしょうか?」

それは、先ほど申し上げたように硬膜は頭蓋骨にぴったりくっついており、ピンセットなどで無理やり剥がさないとでてこないのが硬膜外腔です。

頭蓋骨を裏打ちする動脈が骨折により損傷を受けて、この硬い硬膜をペリペリと剥がして血腫を作るのに時間がかかるためと言われています。

③再度意識混濁

そしてその後、再度意識混濁に陥ります。その際血腫が大きくなったり、広がれば脳ヘルニアが起こり、

  • 瞳孔不同
  • 除脳硬直
  • 呼吸抑制

などの脳ヘルニア症状が現れます。(脳ヘルニアについて詳しくはこちら→脳ヘルニアの分類、症状、画像診断、治療法のまとめ)

更に頭蓋内圧亢進症状として

  • 頭痛
  • 嘔吐

症状が現れることもあります。その他、血腫の対側に片麻痺を生じ、治療が遅れれば死に至ることもあります。

急性硬膜外血腫のCT画像診断は?

急性硬膜外血腫の診断には頭部CT検査が第一選択となります。

その際、急性硬膜外血腫の特徴としては外傷を受けた部位に一致し硬膜と骨の強固な癒着により凸レンズ型の高吸収域を認めることが多い(反対側には生じにくい)と言われます。

縫合線を越えませんが、正中やテントを超える特徴があります。ただし、静脈洞損傷による血腫の場合は縫合線を越えることがあります。 (※一方で急性硬膜下血腫は縫合線を越えて広がるが、正中やテントは超えない特徴あり)

急性硬膜外血腫と急性硬膜下血腫のCTでの違い

急性硬膜外血腫 急性硬膜下血腫
たまる場所 頭蓋骨の内側と硬膜の間 硬膜とくも膜の間
形 凸レンズ形(両凸)が多い 三日月形が多い
縫合線 越えにくい(硬膜が縫合部で骨に強く付着しているため) 越えて広がる
正中・テント 越えることがある 越えない
主な出血源 中硬膜動脈など(骨折に伴う) 脳表と静脈洞をつなぐ架橋静脈など
頭蓋骨骨折 伴うことが多い 少ない

ただし、硬膜下血腫においても凸レンズ型を示すことがありますので、形ばかりで診断してはいけません。急性硬膜下血腫の方が頻度ははるかに高いので、凸レンズ状の出血を見たらなんでも急性硬膜外血腫とするのではなく、臨床情報と併せて硬膜下血腫の可能性も考えましょう。血腫内部の低吸収域(swirl sign)は活動性出血を示す所見です。手術を受けた急性硬膜外血腫147例の検討では14%にswirl signが見られ、swirl signのある群は死亡率が高く(24% vs 6%)、3か月後の転帰不良の独立した予測因子でした(Guo 2017)。

出血した直後の血液は比較的低めのCT値ですが、血液が固まってヘモグロビンが濃縮されてくるとCT値は上がっていきます(New 1976)。そのため、外傷直後に周りより吸収値が低い部分は、出血した直後で濃縮していないことを示唆し、まだ活動性の出血があるのではないかと推測するポイントになります。(関連記事:脳出血の血腫の増大を予測する所見であるswirl sign、spot signとは?)

受傷直後には血腫を認めないか少量でも、時間経過とともに増大することがあります。臨床的に悪化が見られた場合にはCTで再検します。

また骨の条件にして骨折の有無を確認します(多くの症例で骨折を伴います)。血腫内もしくは近傍に気泡が認められれば、開放骨折または副鼻腔骨折、側頭骨骨折を意味します。また、急性硬膜外血腫の反対側に急性硬膜下血腫や脳挫傷を伴うことが多いので、反対側も確認しましょう。

急性硬膜外血腫のMRI

  • 臨床的に他の脳損傷の合併の可能性が低い場合には、撮影する必要はありません。
  • CTで血腫が硬膜外か硬膜下かの鑑別が困難な症例には有効です。
  • T2強調像で、内側に押された硬膜が線状の低信号として描出されます。

それでは実際の症例のCT画像を見ていきましょう。

症例 50歳代男性 外傷 CT検査

横断像

左側に凸レンズ型の高吸収(白い)を示す血腫があるのがわかります。また、脳溝に沿った高吸収域も認められ外傷性くも膜下出血も合併していることがわかります。さらには脳内に点々のSalt and pepper状の高吸収域も認められ脳挫傷(脳内出血)の合併もあります。

冠状断像

この症例を冠状断像で見てみると、凸レンズの形態がわかりやすくなります。また骨条件にすると骨折線を伴っていることがよくわかります。

つまりこの症例では、急性硬膜外血腫(+頭蓋骨骨折)+脳挫傷+外傷性くも膜下出血があると診断することができます。脳ヘルニア所見は認めません。

骨折を探すときは骨条件にしないと全然わからないですね。

症例 40歳代男性 外傷 CT検査

右の前頭部にこちらも凸レンズ型の形状を示す高吸収域を認めています。さらに辺縁には空気を示す低吸収域を認めており、骨折をして空気が入ったことが示唆されます。またこの症例では、正中構造の偏位を認めています。

骨条件で見てみると、

やはり骨折を伴っていることがわかります。

動画で見る症例 50歳代男性 頭部外傷

【診断】急性硬膜外血腫+頭蓋骨骨折、外傷性SAH、脳挫傷

ポイント画像

acute epidural hematoma acute epidural hematoma1 acute epidural hematoma2 acute epidural hematoma3

関連記事:急性硬膜下血腫(ASDH)とは?CT、MRI画像診断のポイントは?

 

最後に

  • 頭部外傷が原因で、頭蓋骨と硬膜の間に出血が起こる
  • 意識混濁→意識回復→意識混濁と陥る
  • 頭痛や嘔吐、脳ヘルニア症状、頭蓋内圧亢進症状、対側に片麻痺、最終的には呼吸停止となる
  • 診断にはCT検査が必須
  • 通常凸レンズ型の高吸収域を認める

急性硬膜外血腫でよくある疑問(Q&A)

Q1. 急性硬膜外血腫はレントゲン(頭部X線写真)でわかりますか?

頭部X線写真では骨折線が見えることはありますが、血腫そのものは写りません。頭部外傷で血腫を確認する検査はCTが基本で、血腫は頭蓋骨の内側に凸レンズ型の白い(高吸収の)領域として写ります。

Q2. 画像で硬膜下血腫とどう見分けますか?

硬膜外血腫は凸レンズ型で縫合線を越えにくく、骨折の直下にできやすいのに対し、硬膜下血腫は三日月型で縫合線を越えて広がります(上の表を参照)。CTで判断しにくいときは、MRIで内側に押された硬膜が線状の低信号として見えるかが手がかりになります。

Q3. 血腫が小さければ手術しなくてもよいですか?

米国のガイドラインでは、容積30mL未満・厚さ15mm未満・正中偏位5mm未満で、GCS 9以上かつ局所神経症状がなければ、CTを繰り返しながら脳神経外科の施設で慎重に経過をみることができるとされています(Bullock 2006)。ただし短時間で大きくなることがあるため、症状の変化に注意が必要です。

 

参考になれば幸いです。

参考文献

  1. Bullock MR, Chesnut R, Ghajar J, et al. Surgical management of acute epidural hematomas. Neurosurgery. 2006;58(3 Suppl):S7-15. PubMed
  2. Bisen YT, Korde P, Dighe O, et al. Decompressive Craniectomy in the Management of Low Glasgow Coma Score Patients With Extradural Hematoma: A Review of Literature and Guidelines. Cureus. 2023;15(1):e33790. PubMed
  3. Servadei F. Prognostic factors in severely head injured adult patients with epidural haematoma’s. Acta Neurochir (Wien). 1997;139(4):273-278. PubMed
  4. Guo C, Liu L, Wang B, et al. Swirl sign in traumatic acute epidural hematoma: prognostic value and surgical management. Neurol Sci. 2017;38(12):2111-2116. PubMed
  5. Heit JJ, Iv M, Wintermark M. Imaging of Intracranial Hemorrhage. J Stroke. 2017;19(1):11-27. PubMed
  6. New PF, Aronow S. Attenuation measurements of whole blood and blood fractions in computed tomography. Radiology. 1976;121(3 Pt 1):635-40. PubMed
  7. Gean AD, Fischbein NJ, Purcell DD, et al. Benign anterior temporal epidural hematoma: indolent lesion with a characteristic CT imaging appearance after blunt head trauma. Radiology. 2010;257(1):212-8. PubMed
  8. Al-Nakshabandi NA. The swirl sign. Radiology. 2001;218(2):433. PubMed

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