
症例48
【症例】10歳代男性
【主訴】左陰嚢痛(AM3時頃、就寝中に突発する痛みで救急搬送)
【身体所見】左陰嚢皮膚触知するだけで疼痛強く訴えあり、左睾丸の挙上あり、精巣挙筋反射+/-
【データ】WBC 10400、CRP 0.01
画像はこちら
今回もMRI画像のみです。
T2強調像の横断像で、左の精巣の付け根が捻れている様に見えます。
精巣捻転の可能性があります。
また、左のみに陰のう水腫を認めています。
精巣内の信号に左右差はありません。
(※精巣捻転の際に、精巣が出血壊死に陥ると内部にT2強調像で低信号の点状ー線状構造が見られることがありますが、今回はそのような所見は認めません。)
造影脂肪抑制T1強調像の冠状断像です
右側の精巣の造影効果と比べて、左で造影効果が認めていないことがわかります。
精巣が捻転し、虚血に陥っている状態が示唆されます。
診断:左精巣捻転
※捻転の解除が必要となりますので、泌尿器科コンサルトの上、緊急手術となります。
今回の症例も緊急手術となりましたが、精巣鞘膜を切開し観察すると、捻転は解除されていました。
硬膜下麻酔をしたのちに術前診察で用手的に解除できていたと考えられます。
左の精索の固定のみが行われ、精巣は温存されました。
その他所見:とくになし。
症例48の動画解説
精巣捻転について
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
記憶にあるうちに陰嚢2例目ありがとうございます。
どのように評価していくかは前より分かったと思います。
かつ、今回は「画像診断まとめ」サイトを見ながらやりましたので、所見自体はうまく拾えたのではないかと思います。
今後は、「T2WIで精巣に出血性壊死を疑う所見を認めない」こと、「精巣上体や精索に左右差が見られず、精巣上体炎は否定的である」ことなど合わせて読影できるようにしたいです。
アウトプットありがとうございます。
>「T2WIで精巣に出血性壊死を疑う所見を認めない」こと、「精巣上体や精索に左右差が見られず、精巣上体炎は否定的である」ことなど合わせて読影できるようにしたいです。
そうですね。この分野のこの典型的な2症例を抑えておけば基本問題ないかと思います。
MRI画像ありがとうございます。普段見慣れているせいか、心の平穏を保ったまま観察できます(笑)。
ほぼほぼ読影できていたとは思うのですが、今後は、T2WIで出血性壊死に関する所見、精巣上体炎との鑑別等についてきちんと説明できるようにボトムアップしたいです。
アウトプットありがとうございます。
>心の平穏を保ったまま観察できます(笑)。
参加者の中で唯一だと思われます(^▽^)
>T2WIで出血性壊死に関する所見、精巣上体炎との鑑別等についてきちんと説明できるようにボトムアップしたいです。
典型例2例を見ましたので、鑑別できるようにしておいてください。
お世話になっております。
急性陰嚢症診療ガイドラインなどによると「鞘膜内と鞘膜外」で分類されていますが、分類することにより壊死の危険性や手術の際の参考となり得るのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>「鞘膜内と鞘膜外」で分類されていますが、分類することにより壊死の危険性や手術の際の参考となり得るのでしょうか?
解剖学的に分類されるというだけだと思います。ですので、手術の際に内か外がわかり、画像での鑑別は困難だと思います。
精巣上体炎の症例から続けて精巣捻転ということで、相違点がよく理解できました。
精巣捻転のgolden time は6-12時間で、それ以内に捻転の解除ということですが、
感覚的にはできるだけ速やかにopeで捻転解除した方がよいと考えてしまいます。
血流があるかないかであれば、エコーのドップラーで評価できそうと思ってしまうのですが、
MRI撮影の時間は惜しむ必要はないのでしょうか。
MRIで評価するのが普通なのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>感覚的にはできるだけ速やかにopeで捻転解除した方がよいと考えてしまいます。血流があるかないかであれば、エコーのドップラーで評価できそうと思ってしまうのですが、MRI撮影の時間は惜しむ必要はないのでしょうか。
これは担当した泌尿器科の先生やその病院の方針などにもよると思います。
エコーで微妙だと思われる場合にMRIに回ってくることもありますが、できるだけMRIも撮影したいという先生もおられるかと思います。
ただ、golden timeは長めなので、病院まで来ているのならば、MRIの撮影を惜しむ必要はそこまでないような気もします。
精巣のMRIを撮像する機会もあまりなく,見慣れませんでしたが,今回の2症例で少し慣れてきました.
T2での出血の所見も探すようにします.
アウトプットありがとうございます。
そうですね。1度でも見たことがあるという経験が、次の臨床現場で役立つと思います。
>>「鞘膜内と鞘膜外」で分類されていますが、分類することにより壊死の危険性や手術の際の参考となり得るのでしょうか?
>解剖学的に分類されるというだけだと思います。ですので、手術の際に内か外がわかり、画像での鑑別は困難だと思います。
僕も参考にします!!
さて、個人的に単純の評価、精巣上体の評価はやはり甘く、
やっぱり陰部の画像は慣れていないな、って感じです(;’∀’)
復習して、どういうポイントを見ればいいか焼き付けないとですね(;’∀’)
以前、放射線科の先生に、
「『CTよりMRIの方が優れている』『単純より造影の方が優れている』という考えをまずは捨ててください。」
と言われました。おっしゃる通りで、
今回も、「造影を見て、捻転と診断して終了」では100点の読影は出来ないわけですね(;’∀’)
アウトプットありがとうございます。
>「『CTよりMRIの方が優れている』『単純より造影の方が優れている』という考えをまずは捨ててください。」
まさにこれですね。
この認識を未だに持っている先生が多いですね。
腹痛精査→MRI とかですね(^_^;
>今回も、「造影を見て、捻転と診断して終了」では100点の読影は出来ないわけですね(;’∀’)
今回はCTよりもMRIの撮影が必要でかつ造影も必要な症例ですね。
造影のMRIを撮影するべき症例です。そういう意味では数少ない症例とも言えますね。
あとは多いところでは脳の転移検索などでは造影MRIを撮影するべきですね。
いつもありがどうございます。
今度こそ、「精巣捻転」を正しく同定できました。
受講生の方のお声にもある通り、私も闇雲に検査をオーダーするのではなく、その意義を考えて目的意識をもって読影するように心がけたいです…!
DWIとADC-mapは腫瘍や膿瘍検索の為に撮影されるのでしょうか。よろしくお願いいたします。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。腫瘍や膿瘍検索の他、生殖器ですと、卵巣も精巣もDWIで高信号になるのが正常ですので、その高信号がきちんと保たれているかもチェックします。
女性の場合、卵巣の場所がT2WIなどでわかりにくい場合にDWIで高信号を探すこともあります。
いつも勉強になっております。
精巣のMRIは慣れておらず勉強になりました。
精巣捻転は緊急手術が適応になり、エコーや病歴から推測できるとも考えるのですが、MRIが必要な場面とはどんな状況なのでしょうか
アウトプットありがとうございます。
>精巣捻転は緊急手術が適応になり、エコーや病歴から推測できるとも考えるのですが、MRIが必要な場面とはどんな状況なのでしょうか
おっしゃるとおりです。MRIに回ってくるのは一部で、エコーで判然としない場合や主治医が念のためという意味合いもあるかと思います。
精巣上体炎と精巣捻転の2症例を提示してくれて、その違いがよくわかりました。
精巣捻転は「下腹部痛」が主訴で来院することがあるようで、気を付けないといけないですね。
立位で診察すると、捻転している精巣は縦から横になっていることがある、と本で読んだ記憶があります。
見て(視診)、ちょっと軽く触って(触診)、見当がつけばいいですね。
アウトプットありがとうございます。
>精巣捻転は「下腹部痛」が主訴で来院することがあるようで、気を付けないといけないですね。
そうですね。きちんと下まで考えないといけないという意味では閉鎖孔ヘルニアに似ていますね。
精巣上体炎との鑑別にはPrehn徴候が知られていますね。
患側の精巣を挙上する
→疼痛が軽減しない、あるいは増強する→精巣捻転
→疼痛が軽減する→精巣上体炎
ですね。
いつも勉強になりありがとうございます。精巣の大きさに左右差(左>右)があるように思いますが、炎症により腫大しているからでしょうか?左右差は特に有意な所見ではないのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>精巣の大きさに左右差(左>右)があるように思いますが、
確かに冠状断像でみたら左が大きく見えますが、横断像でみると体積は左右差はそれほどなさそうです。
調べてみましたが捻転側が腫大するという記載はなくたまたまではないかと考えます。