夜間に突然陰嚢部が痛くなる「精巣捻転症(せいそうねんてんしょう)」。
思春期に好発しますが、新生児でも発生しやすいものです。
そのため、本人だけでなく、親も気になるのが原因や症状ですが・・・
今回は精巣捻転(Testicular torsion)について
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療
などを図(イラスト)や実際のMRI画像を用いて徹底的にまとめました。
参考になさってください。
精巣捻転症とは?
精巣捻転とは陰囊内で起こる病気の中で、比較的頻度が高く、文字通り、精巣が捻れる(ねじれる)病気です。
捻れると、精巣を栄養している血管も捻れ、血流が途絶えることになり、精巣は虚血から壊死へと進行します。
壊死にまで至ると、腐るということですから、精巣を摘出する必要があります。
そのため、そうなる前に病院を受診して、診断、治療を受ける必要があるのです。
精巣捻転が起こりやすい年齢は?
- 新生児期
- 思春期
の2つのピークがあると言われています。
新生児期の場合は、鞘膜外捻転といって全体が捻転してしまうことが多く、気づいた時にはすでに出血壊死を起こしており、精巣の摘出が必要になることが多いと言われます。
精巣捻転症の原因は?
精巣は発生の過程で、下降してきて陰嚢内に固定されます。
この、
- 下降
- 固定
が十分でない場合に、捻転が起こりやすくなると言われています。
とくに停留精巣という下降が十分でない状態の場合は、捻転を数倍起こしやすいと言われています。
ちなみにこの停留精巣は精巣腫瘍のリスクも高くなります。
しかし、明らかな誘因がなくても発症することがあります。
精巣捻転の症状は?
精巣捻転の症状は、以下のようなものがあります。
とくに突然の痛みが特徴です。
- 突然の陰囊の痛み
- 陰囊の腫脹・発赤・腫脹・圧痛
- 精巣挙上
- 同側下腹部への放散痛
- 随伴症状として、悪心・嘔吐・腹膜刺激症状など
このような症状がある場合、泌尿器科が専門科となります。
その他、精巣捻転に似た症状を起こす病気
陰囊の痛みは、精巣捻転のみで起こるわけではありません。
陰囊の痛みや腫脹、発赤を起こす症候群を急性陰嚢症と言います。
これに含まれる病気は精巣捻転以外には、
- 急性精巣上体炎
- 精巣炎
- 精巣腫瘍
- 精巣梗塞
- 外傷
などが挙げられます。
とくに、頻度としては急性精巣上体炎が高いとされます。
精巣捻転症ってどうやって診断する?
突然の陰囊の痛みで泌尿器科を受診したところで、どのように精巣捻転と診断するのでしょうか?
診察と画像検査がメインとなります。
精巣捻転の診断には、
- 立った状態で片側精巣の挙上がある
- Prehn’s signが陽性である
- エコー検査・MRI検査で精巣の血流低下がある
といったところから総合的に診断します。
精巣上体炎と精巣捻転の鑑別に使われる。
精巣捻転の場合は、この方法で、痛みが軽減せず、増強し、Prehn’s singが陽性となる。
精巣捻転のエコー・MRI画像は?
精巣捻転の画像診断で重要なことは、
- 精巣の血流低下
- 精巣内の出血壊死
を同定することです。
それぞれ、MRI及びエコーでのこれらに相当する所見は以下の通りです。
MRI | エコー | |
血流低下 | ダイナミックMRIで造影低下-欠損。 | ドプラーエコーで血流低下-欠損。 |
出血壊死 | T2強調像もしくはT2スター強調像で点状、線状低信号。 | グレースケールで不均一な低エコー。 |
症例 10歳代 男性 突然の左陰囊の痛みで救急外来受診。
造影MRIで右(向かって左)の精巣はよく造影されていますが、左(向かって右)の精巣には造影効果を認めていません。
左精巣捻転と診断されました。
症例 10歳代男性
T2強調像の冠状断像において、左の精巣に出血壊死を疑うような異常な低信号は認めません。
左陰嚢に陰嚢水腫を認めています。
造影MRI T1強調像において右精巣の造影効果に比べて、左は造影されていないことがわかります。
左精巣捻転と診断されました。
精巣捻転症と診断されたら治療は?壊死までのタイムリミットは?
精巣捻転と診断されたら、捻れの解除が必要です。
自然に捻れが解除されることもありますが、基本的には、手術が必要です。
そして、発症から
- 6-12時間以内にこの捻転整復
を行う必要があると言われ、24時間以上経過すると、精巣を温存できる確率が下がるといわれています。
最後に
精巣捻転症について、ポイントをまとめます。
- 精巣がねじれる病気を、精巣捻転症という
- 精巣捻転症は、新生児期や青年期に起こりやすい
- 明らかな誘因がなくても起こる
- 突然起こる陰嚢の痛みが特徴
- 診察と画像検査で診断する
- 手術で捻れの解除が必要
精巣捻転は緊急手術が必要となる、緊急度の高い病気です。
痛みを我慢したり、薬で誤魔化しても、根本治療にはなりません。
根本治療は手術により、ねじれを解除することです。
精巣を摘出しなければならないということを避けるためにも、急な陰囊の痛みには注意が必要で、速やかに泌尿器科を受診しましょう。
精巣捻転の診断でPrehn’s signが陰性、とありますが、陽性の間違いでしょうか?全然専門外なので、間違っていたらすみません…。
コメントありがとうございます。
おっしゃるように陽性でした。
シルエットサインみたいに、ややこしいですね(^_^;)
修正しました。
ご指摘ありがとうございます。