
症例47
【症例】30歳代男性
【主訴】右睾丸腫脹、疼痛
【データ】WBC 10000、CRP 1.72
画像はこちら
急性陰嚢症の症例です。
脂肪抑制T2強調像の冠状断像で、右の精巣上体〜精索に異常な高信号を認めています。
また右陰のう水腫を少量認めています。
ダイナミック撮影による脂肪抑制T1強調像では、右の精巣上体〜精索に異常な造影効果を認めています。
左右差を見比べれば右が強いことがわかりますね。
またダイナミック造影にて、両側の精巣の染まり具合に左右差は認めていません。
同程度に造影されています。
右の精巣上体炎と診断され、抗生剤加療されました。
診断:右精巣上体炎
精巣上体炎は、下の図のように上行性に感染を起こした疾患です。
今回の症例のように、画像診断では、精索ー精巣上体にかけての
- 脂肪抑制T2強調像(STIR)での高信号、腫大
- 造影効果増強
が診断に有用となります。
また、同じく急性陰嚢症に分類され手術の適応にもなるのが、精巣捻転です。
精巣捻転を除外するためには、両側の精巣が同程度に造影されていることを確認します。
その他所見:とくになし。
精巣、精巣上体、精管、精嚢のMRI所見
精巣のMRI所見
精巣は
- T1強調像で筋肉よりやや高信号
- T2強調像で強い高信号
を呈します。
中枢側の精巣縦隔と呼ばれる部位は断面によっては低信号のバンドとしてみられます。
精巣上体のMRI所見
精巣上体は、頭部、体部、尾部からなりますが、体部・尾部は同定困難で、
精巣上体頭部はT2強調像で低信号の構造として認めます。
精管のMRI所見
精管のMRIでの同定は困難です。
精嚢のMRI所見
精嚢は前立腺の後方に、
- T1強調像で均一な信号
- T2強調像で高信号の分葉状の構造
として認めます。
症例47の解説動画
精巣上体炎について
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
見慣れない部分のせいか、全然だめでした。
今回のを記憶して、何が正常で何が異常なのかわかるようにしていきたいです。
・陰嚢水腫は正常でも多少はあるということでよいでしょうか?(今回の左の陰嚢くらいに)
・今回のDWI, ADC mappingはどのように評価すればよかったでしょうか?
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
アウトプットありがとうございます。
この分野の救急疾患は基本的に限られているので典型例のみを覚えておけば大丈夫だと思います。
>・陰嚢水腫は正常でも多少はあるということでよいでしょうか?(今回の左の陰嚢くらいに)
どこまでが正常というのは難しいですが、正常でも生理的に少量あることはあります。
>・今回のDWI, ADC mappingはどのように評価すればよかったでしょうか?
卵巣、精巣ともにDWIで高信号を示します。
卵巣の場合は卵巣の場所を探すためにDWIを参照することなどがありますが、精巣の場合は、場所は基本的に明らかなのでさらっとみてあまり診断には使われない事が多いですね。
そういう意味では掲載する意味もあまりないですね(^_^;
ですので、DWIの表示をなくしました。
精索→精管、精巣上体炎→陰のう炎などの表記に誤りはありましたが、おおむね読影できていたのではないかと自己満足しております。
造影すると明らかですが、必ず造影を行うべきでしょうか?精巣捻転の確認のためには必須でしょうか?救急外来ではなく一般外来でも遭遇する症例ではないかと思うのですが、その際に造影まで行うべきかどうかの判断基準などありましたらご教示いただきたいです。
アウトプットありがとうございます。
>精巣捻転の確認のためには必須でしょうか?
そうですね。精巣上体炎を診断することよりも、精巣捻転を除外するために造影は必要ですね。
・エコーととりあえず造影MRIで評価される場合
・エコーで血流が評価され、エコーで微妙で、造影MRIに回される場合
両方がありますが、とくに後者ですと、造影は必須ですよね。
いずれにせよMRIに回ってくる時点で、捻転を除外したいという意図があると思われますので、造影は必須だと思います。
精巣付近の解剖がよくわかっていなかったため、水がありそう、炎症がありそうだということぐらいしかわかりませんでした。
しかし、よくみれば精巣には腫大はなく造影効果も左右差がなかったということで、精巣は大丈夫そうだとわかるべきでした。
アウトプットありがとうございます。
>よくみれば精巣には腫大はなく造影効果も左右差がなかった
そうですね。ここが大事ですね。
最初炎症かと思ってみていましたが、リング状に染まる腫瘤状のもの(Corの98、134など)で腫瘍性病変と混乱してしまいました。炎症による膿瘍形成などでしょうか?もしくは肥大した精巣上体がいびつに染まっているだけでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>炎症による膿瘍形成などでしょうか?もしくは肥大した精巣上体がいびつに染まっているだけでしょうか?
後者だと思われますが、小さな膿瘍もおっしゃるように否定できないですね。
MRI画像は光っているものがどのように悪いなど基本的な部分が分かっていなかったので今回の解説でT2,DWIが重要であることと炎症か捻転かを疑っているのかなと思いながら見ていけたらと思います。
アウトプットありがとうございます。
造影効果の有無、精巣上体の腫大や脂肪抑制T2強調像での高信号などに着目してください。
「造影効果不良がない」ことが書けて、鑑別につながり、まずはよかったと思います(^▽^)/
今回は、さらに、「造影効果が増強」していたのですね。よく見直しておきます(^▽^)/
精巣上体炎も「上行性」なんですね(^-^;
矢印も下向きですし笑、絵的には明らかに「下行性」なんですねどね(;’∀’)笑
こういうこと(イメージと言葉が逆)が起こるのって、陰茎周囲の感染くらいですかね(*’▽’)?
アウトプットありがとうございます。
>今回は、さらに、「造影効果が増強」していたのですね。
そうですね。
・腫大
・造影効果増強
がポイントです。
>矢印も下向きですし笑、絵的には明らかに「下行性」なんですねどね(;’∀’)笑
陰茎からは上行性ですね。
その後下行性になりますね。
作ったけど公開していなかった精巣上体炎の感染のイメージ図がこちらです。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/training/wp-content/uploads/2019/02/Epididymitis.png
これ分かりやすいですね〜(^∇^)!
意外と下部尿路とか全抜けしてるのでありがたいですヾ(๑╹◡╹)ノ”
載せなかったのは、今回の焦点から少し広がるから、ですか?
性器の描出があり、Googleからはじかれる可能性があるから、、という理由です。
解説ありがとうございます。
当院では精巣のMRIは全然撮ることがないのですが、
造影はダイナミックで撮像したほうがよいのでしょうか?
おっしゃるように理想はダイナミックですが、一相でも構いません。
単純のみでは精巣捻転の評価ができないので、造影は必要ですね。
MRIは当施設にはなく
CTしかないのですが
CTでも異常はわかりますでしょうか?
そうですね。
MRIほど詳細にはわかりませんが、精巣上体の腫大および造影効果増強はCTでもある程度はわかると思います。
精巣捻転を考えてしまいました。
MRIになると途端に所見が読めなくなってしまいます…。MRIがやっぱり苦手です。
アウトプットありがとうございます。
MRI難しいですよね。救急で求められる疾患はある程度限られているので、
まずはそのパターンを一度体験して頂きたいと思います。
造影MRIで精巣頭側の精索で血管がねじれてみえてしまい,捻転と解答していまいました.精巣の造影効果を確認することが大事なんですね.精巣捻転症例のMRIがどのようになるか拝見できましたら幸いです.
アウトプットありがとうございます。
>精巣捻転症例のMRIがどのようになるか拝見できましたら幸いです.
了解です(^o^)
今回も貴重な画像をありがとうございました。婦人科や泌尿器科はあまり見る機会がないのでとても勉強になります。素朴な疑問ですが、緊急で精巣軸捻転除外目的でMRI造影検査を行う際、可動性に富む臓器で本人も痛がってじっと出来ずに、撮影画像の読影が困難だった経験はお持ちでしょうか。その時はCT造影(同日に造影2回になってしまいますが)へ切り替えるのでしょうか。よろしくお願いいたします。
アウトプットありがとうございます。
>婦人科や泌尿器科はあまり見る機会がないのでとても勉強になります。
そういっていただけると提示した甲斐があります!
>緊急で精巣軸捻転除外目的でMRI造影検査を行う際、可動性に富む臓器で本人も痛がってじっと出来ずに、撮影画像の読影が困難だった経験はお持ちでしょうか。
精巣で痛がってと言うケースや、精巣以外では、意識障害で暴れてというケースもありますね。
その場合は、そのときできる代替検査などで対応するしかないですね。
今回ですとドプラーエコー(むしろこちらが第一選択ですが)となるでしょうか。
造影CTにするかどうかは部位によりますね。
女性骨盤や男性でも陰嚢はやはりMRIが強いですね。
これらの部位でもMRIが不可だった場合は、造影CTで代用するケースもあるかと思います。
ただし、当院では原則、造影CTと造影MRIは同日には行いません。
本題から少し外れますが、そもそも”脂肪抑制”というのは=stirのことですか?頭部のMRIでよく撮像するT2*というのはこのstirと同じものなのでしょうか? また脂肪抑制T2で精索や精巣上体がhighになるというのは炎症に伴った浮腫性変化を反映するからでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
脂肪抑制=STIRというわけではありません。
ややこしいのですが、脂肪抑制画像には3種類あります。
1、周波数による脂肪抑制画像(いわゆるFatSat画像)
2、緩和時間による脂肪抑制画像(STIR画像)
3、位相差による脂肪抑制画像(out of phase画像、opposed画像)
>脂肪抑制T2で精索や精巣上体がhighになるというのは炎症に伴った浮腫性変化を反映するからでしょうか?
おっしゃるとおりです。その浮腫を際立たせるために脂肪を抑制します。
>頭部のMRIでよく撮像するT2*というのはこのstirと同じものなのでしょうか?
同じものではありません、T2*強調像は基本頭部のみで撮像されるシークエンスです。
関連:頭部救急画像診断の際に公開した動画です。
パスワードはswiです。
ちょうど実習で泌尿器科を回っていたので正解することができました。
明日はダヴィンチでの前立腺全摘があるので頑張ります!
アウトプットありがとうございます。
タイムリーでしたね。
実習お疲れ様です。
前立腺全摘の前に今日の症例(症例48)にも是非取り組んでください。
他の先生も書いていますが、見慣れていないのでMRIは苦手意識があります。でも、解説動画をみると、あらあら不思議、よ~く理解できました。CTより優れていますね。
それと、精巣上体炎の感染のばい菌ちゃんのイメージ図は素晴らしいですね。
アウトプットありがとうございます。
MRIは難しいので、救急では最低限で良いと考えます。
この講座の婦人科疾患、泌尿器疾患で出てきたMRIを読影にあたり、どのように評価しているのかを確認していただけたら十分です。
>精巣上体炎の感染のばい菌ちゃんのイメージ図は素晴らしいですね。
ありがとうございます(^^)
このばい菌ちゃんもイラストレーターにお願いしたものですが、いろんな感染症の説明で使っています。