
症例44
【症例】20歳代男性
【主訴】4日前から続く右下腹部痛(虫垂炎疑いで他院より紹介受診)
【身体所見】BT 37.1度、BP 139/69mmHg、SpO2 99%、P73、腹部:板状硬、右下腹部に圧痛あり、反跳痛あり。腸蠕動音減弱。
【データ】WBC 10200、CRP 6.07
画像はこちら
右腹部にレンズ状の脂肪織濃度上昇を認めています。
隣接する腹膜の局所的な肥厚を認めており、局所的な腹膜炎が疑われます。
また上から下へとスクロールすると脂肪内部の血管は回転している様に見えます。
これを渦巻状の所見ということで、Whirl sign(ワールサイン)と呼びます。
※Whilr signは絞扼性イレウスを疑う腸管や腸間膜の捻れでも使われる用語です。
冠状断像で見ても右の腹部に局所的な被包化されたような脂肪織濃度上昇を認めていることがわかります。
さて、この脂肪濃度の正体は何でしょうか?
上行結腸の前側に認めますが、腸管との連続性は認めません。
正体はこれです。
胃から垂れ下がる2つの腸間膜がくっついてできた大網(読み方は「だいもう」もしくは「たいもう」)です。
この大網の一部が捻転している状態です。
大網捻転は右側に多いとされ、今回も右側です。
捻転と言う名前からすると重篤な感じがして、緊急手術か!と思うかも知れませんが、大網捻転の場合は通常保存的に加療されます。
この方も保存的に加療されました。
診断:大網捻転
その他所見:S状結腸に液貯留あり。下痢症などの可能性あり。
関連:大網捻転のCT画像診断(omental torsion)
症例44の動画解説
大網捻転について
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
腸間膜捻転、初耳でしたが、読影自体はそこそこできていたかな、と思います。
ワールサイン、表現力が広がります。
アウトプットありがとうございます。
>読影自体はそこそこできていたかな、と思います。
脂肪織濃度上昇を指摘できて、緊急性がなさそうであることがわかれば良いと思います。
いつもありがとうございます
腹膜垂炎との鑑別は、大腸との位置関係でしょうか?whirl signもそれほどきつくなく、十分な理解ができていない状況と考え焦っています。
アドバイスございましたらお願いいたします。
アウトプットありがとうございます。
>腹膜垂炎との鑑別は、大腸との位置関係でしょうか?
そうですね、位置関係と今回の場合はサイズでしょうか。
ただ、おっしゃるように、鑑別が困難な場合もしばしばある(※)ようです。
(※マルチスライスCTによる腹部救急疾患の画像診断 P100)
はじめての投稿です。
いつもありがとうございます。
上の方の投稿と同じですが、私も腹膜垂炎と大網捻転の区別がつきません。
普段は救急勤務なので、この鑑別まで付けなくても良いと開き直ってはいますが、、、
なかなか大腸との連続性もあるようなないような、、、といつも感じていました。
が、やはりサイズで何となく鑑別しています。
これからも楽しみにしています。
アウトプットありがとうございます。
>私も腹膜垂炎と大網捻転の区別がつきません。普段は救急勤務なので、この鑑別まで付けなくても良いと開き直ってはいますが、、
今回はとくにサイズが大きいので大網と診断することができますが、サイズが小さい場合は微妙ですね。
また、おっしゃるようにともに治療は保存的であり、微妙な場合に詳細な鑑別は必要はなさそうですね。
大網捻転は以前、同様の所見を経験した為に何とか回答する事ができましたが、局在性に脂肪織のみが上昇している画像所見を目にする為、今回の解説を見てよく理解する事ができました。
アウトプットありがとうございます。
大網捻転は稀な症例ですが、ここがおかしい!と脂肪織の上昇から指摘できることがまずは大事ですね!
大網捻転、初めて見ましたし、腹膜垂炎との鑑別が難しいことも初めて知りました
脂肪識濃度上昇には気づいたもののwhirl signに気づかず診断もできませんでした
腹膜垂炎の症例ももしありましたら今後提示頂けるとありがたいです
アウトプットありがとうございます。
>腹膜垂炎の症例ももしありましたら今後提示頂けるとありがたいです
(;゚ロ゚)
しょ、症例33ですでに出ています。
また復習しておいてください(^o^)
大網捻転,もちろん知りませんでしたが,内部の濃度は脂肪に近い?ことから腸管ではなさそうだし,何らかの付属器が炎症を起こしているのかなあくらいに思っていました.知っていて,診断できて,保存で大丈夫と分かっていれば,救急で夜中に見ても安心ですね.
アウトプットありがとうございます。
そうですね、腹膜垂炎も大網捻転も結構見逃されている事があると思います。
ここがおかしい!けど腸管壊死や穿孔ではなさそうだし、保存的でいけそうと判断できればOKですね。
板状硬、反跳痛があっても、保存的加療になることもあるのですね。かなりヤバイ状態なのかと思ってしまいました。
病変部の場所、腸管と連続性がなさそうなことはなんとか読み取れたのですが、
内部の濃度が脂肪に近いこと、血管がぐるぐる回転していることは、疾患を知らなくても読み取れるべきだったと反省しています。
アウトプットありがとうございます。
>内部の濃度が脂肪に近いこと、血管がぐるぐる回転していることは、疾患を知らなくても読み取れるべきだったと反省しています。
辺縁および内部の脂肪織濃度上昇を認めていることが異常ですね。
大網捻転ですかぁ。(T_T)
Inputしておきます。腹膜の肥厚、脂肪濃度の上昇は指摘できました。
脂肪織内の高吸収域が血管とは・・・。虫垂穿孔して糞石が見えているのかと
思ってしまいました。ただ、位置関係にちょっと無理があるかなとも思いつつ・・・。
結腸の穿孔は無さそうだしということで都合よく解釈してしまいました。
アウトプットありがとうございます。
>腹膜の肥厚、脂肪濃度の上昇は指摘できました。
ここの異常に気づけたら次は診断できますね。
↑
コメントを見ていても、「腹膜垂炎」と迷われた方が多いようですね(安心しました(^-^;)
動画も見たんですが、
whirl signは、絞扼性イレウスで見られるものよりは判断が難しいですね(;’∀’)
こちらについては、「慣れ」が必要かな、と思います(;’∀’)
しかし、、、、、今回は、
「なんじゃこりゃ(;´Д`)?」ってなって、自分が知っている、「腹膜垂炎 疑い」としてしましました(;´Д`)
大網捻転。。。見たことはある、、、ハズなんですけどねぇ・・・・・(;’∀’)
復習は重要ですね(^▽^)/!!!
アウトプットありがとうございます。
>whirl signは、絞扼性イレウスで見られるものよりは判断が難しいですね(;’∀’)
こちらについては、「慣れ」が必要かな、と思います(;’∀’)
おっしゃるとおりだと思います。
こじつけ感はありますね。
>「なんじゃこりゃ(;´Д`)?」ってなって、自分が知っている、「腹膜垂炎 疑い」としてしましました(;´Д`)
脂肪織の捻転ということで腹膜垂炎の仲間みたいなものですね。
消化管は関与していないという点が重要ですね。
大網捻転、あまり見たことないです。
貴重な症例ありがとうございます。
腸管との連続性がないので
結腸の病変ではないだろうと感じました。
肝臓と腹壁の間にできた脂肪腫?
みたいなものかなと思いましたが
臓器との連続性もないので
なにが分からずじまいでした。
回答を拝見すると、腸間膜の解剖がよく分かっていないことがわかりました。
まだ腸間膜関係の病変はよくわかりませんが大網捻転の症例は覚えておきます。
知らないことが多く、CT検査をするのが怖くなってきました(汗)
アウトプットありがとうございます。
>腸管との連続性がないので
結腸の病変ではないだろうと感じました。
肝臓と腹壁の間にできた脂肪腫?
みたいなものかなと思いましたが
臓器との連続性もないので
なにが分からずじまいでした。
ここがポイントですので、あとは知っているかどうかでしょうか。
腸管との連続性がなく、腸管虚血などを疑う所見はなく、手術適応や緊急性はなさそうということが判断できればOKです。
>知らないことが多く、CT検査をするのが怖くなってきました(汗)
稀な疾患ですので大丈夫です(;゚ロ゚)
今回も難しかったです。脂肪腫?と思いましたが腹膜も肥厚していたりで悩み答えがでませんでした。
横断像スライス74で精嚢?が腫大していると感じたのですがこれは正常範囲でしょうか?
よろしくお願いします。
アウトプットありがとうございます。
>脂肪腫?と思いましたが腹膜も肥厚していたりで悩み答えがでませんでした。
いい線行っていると思います。
あとは知っているかだけの問題ですね。
>横断像スライス74で精嚢?が腫大していると感じたのですがこれは正常範囲でしょうか?
よろしくお願いします。
おっしゃるようにかなり大きく見えますが、正常上限くらいでしょうか。
これくらいの方もたまにおられます。
今回も難しかったです。
大網とはわかったのですが、捻転だったのですね。
ヘルニアのように飛びだしていると考え、横行結腸間膜か?と思ったのですが、よくよく考えれば、大網が横行結腸の背側に入ってくるはずですから、肝臓の前にあるのはおかしいですね(汗)。
落ち着いて、
よく考えてから解答を出すようにします。
アウトプットありがとうございます。
>大網とはわかったのですが、捻転だったのですね。
大網とわかれば十分だと思います。あとは知っているかどうかだけですね。
腹膜垂炎同様、それほど重症度は通常高くないので、ここがおかしい!でも腸管は関係なさそう、緊急度は高くなさそうとわかればOKです。
いつもありがとうございます。
腹膜から連続した腫瘤性病変と判断して、腹膜偽粘液腫とこじつけで診断してしまいました。大網捻転は寡聞にして知りませんでした!
頭に叩き込んでおきます!
アウトプットありがとうございます。
>腹膜から連続した腫瘤性病変と判断して、腹膜偽粘液腫とこじつけで診断してしまいました
見るべき所見は取れていたけど何が起こっているのかわからなかったということですね。
ぜひ覚えておいてください。
解説ありがとうございます。
腸管とは連続性のない脂肪組織の炎症があるな?とは思いましたが
大網が捻転していたとは。。本日も勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
>腸管とは連続性のない脂肪組織の炎症があるな?とは思いました
見るべき所見としては取れていますね。
腹膜垂炎と同様に特徴的な所見ですので、覚えておいてください。
大網内に網状の軟部組織濃度上昇を認めていて、原因は分からないながらも腹膜炎と診断してしまいました。。
Whilr signは指摘できず、大網捻転も恥ずかしながら知りませんでした。。
とても勉強になりました。今日もありがとうございました。復習します!
アウトプットありがとうございます。
>大網内に網状の軟部組織濃度上昇を認めていて、原因は分からないながらも腹膜炎と診断してしまいました。。
あと一歩ですね。
局所的な腹膜炎も今回ありますし。
後は知っているかどうかですね。腹膜垂炎と同様に覚えておいてください。
復習しています。
虫垂が見つからないのですが、術後か何かでしょうか。
復習ありがとうございます。
冠状断像ですと23-28
横断像ですと50-55
辺りに内部にairを含んだ細い管腔構造を認めており虫垂と思われます。
すみません。ありがとうございました。
わかりました。
症例ありがとうございます。大網捻転、知りませんでした。腹膜垂炎、大網脂肪織炎と一緒にインプットしておきます。
アウトプットありがとうございます。
>腹膜垂炎、大網脂肪織炎と一緒にインプットしておきます。
脂肪塊の捻転という意味では同じカテゴリーですね。
腹部CTにおける脂肪織濃度上昇を見つける点がいかに重要かがわかりますね。
ありがとうございます。
今回の症例で前立腺の頭側に塊があるのですが、これは何でしょう?
小腸かと思いましたが、連続性がありませんので判断に困っております。
よろしくお願いします。
アウトプットありがとうございます。
精嚢ですね。
ちょっとこの方は精嚢が目立ちますね。
大網捻転はじめて知りました。腹膜炎と答えました。
腹膜垂炎や大網捻転は腹膜炎の一種と考えていいのでしょうか?臓器からの炎症波及などもあれば急性腹膜炎も考慮が必要ですか?
アウトプットありがとうございます。
腹膜炎に至るかどうかは腹膜に炎症所見があるかと、臨床症状にもよりますね。
今回は腹膜にも炎症が至っていると考えられ、反跳痛もありますので、局所的な腹膜炎があると判断して良いと考えます。
症例ありがとうございます。過去の症例で、腸間膜の血管がwhirl sign様に見えても正常な場合をいくつか見ていたので、今回の大網内の血管のねじれがwhirl signであり捻転と断定できるのかどうか迷いました。最終的には、腸間膜動脈の造影効果に比して、大網内の血管の造影効果が低下している考え捻転を疑ったのですが、造影効果は低下していると言えるでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>過去の症例で、腸間膜の血管がwhirl sign様に見えても正常な場合をいくつか見ていたので、
そうですね。whirl signは判断が難しいことが多いですね。
血管のねじれだけ見て有意とは判断してはいけないですね。腸管のねじれを伴っているかや今回のように大網にねじれを伴っている場合は有意ですね。
>最終的には、腸間膜動脈の造影効果に比して、大網内の血管の造影効果が低下している考え捻転を疑ったのですが、造影効果は低下していると言えるでしょうか。
おっしゃるように他部位の動静脈と比較すると造影効果が不良に見えますので、虚血の状態にあると考えることはできますね。
腸管捻転と異なりこの症例も保存的に加療されました。
上行結腸の上に脂肪織濃度の腫瘤があり、腹膜の肥厚と腫瘤周囲の脂肪織濃度上昇から炎症が起きていることがわかりました。横断像で上下にスクロールして渦巻状の層構造(Whirl sign)は確かに見えてきました。スクロールでなく、連続写真を見る場合だとWhirl signは捉えにくいですね。
アウトプットありがとうございます。
>上行結腸の上に脂肪織濃度の腫瘤があり、腹膜の肥厚と腫瘤周囲の脂肪織濃度上昇から炎症が起きていることがわかりました。
素晴らしいです。
大網捻転は決して頻度が高くないので知らない方も多いと思いますが、このように的確に所見を取って表現できれば知らない疾患でもコンサルトすることができますね。
よくわからないけど、ここに脂肪織濃度上昇が目立つのでここに炎症があるのだろうと予測できることが重要ですね。
>スクロールでなく、連続写真を見る場合だとWhirl signは捉えにくいですね。
そうですね。Whirl signに限らず連続性を観察することが重要ですね。