
【頭部】TIPS症例35
【症例】50歳代女性
スクリーニング
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左半卵円中心レベルの深部白質に新しい脳梗塞がある?ない?
拡散強調像(DWI)で左半卵円中心に高信号を認めています。
周囲脳実質と比較すると高信号となっています。
新規脳梗塞でしょうか?
実は、新規脳梗塞(すなわち拡散制限を反映している)かどうかは、ADCをチェックする必要があります。
つまり、
- 拡散強調像(DWI):高信号
かつ - ADC map:信号低下
となっている場合に拡散制限があるといえ、脳梗塞などの可能性があります。
では、今はどうでしょうか?
拡散強調像(DWI)で高信号を示しているところをADCで確認すると、信号低下を来していません。
中心部はむしろ信号上昇を来しています。
FLAIRとT2WIをチェックしてみましょう。
FLAIRではリング状の高信号となっており、中心部に抜けを認めています。
一方でT2WIではFLAIRのリング部分を含んで全体的に高信号となっています。
DWI/ADCの信号と併せて、陳旧性ラクナ梗塞のパターンといえます。
では、なぜ(拡散制限がないのに)DWIでやや高信号に見えるのでしょうか?
実はDWIは拡散制限のみを反映した画像ではなく、T2WIの要素も画像として反映されるためです。
つまり、
- DWIは、「拡散を反映したT2WI」である。
ということができます。
つまり、拡散制限があるときに高信号となるだけでなく、T2WIで高信号の場合に高信号となることがあるということです。
今回も拡散制限はありませんが、T2WIの高信号を拾って、拡散強調像(DWI)でやや高信号になっているということです。
これを、T2 shine through といいます。
拡散強調像(DWI)の高信号をみたら何でも「新しい脳梗塞だ!」としないように注意が必要です。
今回のようにニセモノの拡散制限(T2 shine through)が紛れていることがあるため、DWIのみで判断せず、ADCやT2WIで同部位はどうなっているかをしっかり観察してから判断するようにしましょう。
診断:新規脳梗塞ではない(陳旧性ラクナ梗塞によるT2 shine through)
関連:T2 shine throughとは?脳梗塞との鑑別について解説
【頭部】TIPS症例35の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
DWIは特有のMPGパルスを最低2回は印可するため、TEが長くなってしまします。そのため、どうしてもT2の要素がシーケンスに含まれてしまいます。(本当は、T2の要素なんて入れたくないのに、DWIの構造上、入ってしまう感じです。)
アウトプットありがとうございます。
このあたりの知識は技師さんの方が詳しそうですね(^_^;)
T2 shine throughはADCの重要性の説明のときに何度か目にしていたので答えることができました。
DWIは拡散制限以外にも様々な要素が介入してくるので、難しいです。
DWIだけの解説本で相当分厚いものを目にしたことがありますが、どれだけ奥が深いんだろうと思いました。(読めてませんが 汗)
アウトプットありがとうございます。
>DWIだけの解説本で相当分厚いものを目にしたことがありますが、どれだけ奥が深いんだろうと思いました。(読めてませんが 汗)
私も姑息的に理解しています(^_^;)
T2 shine throughの存在を忘れてました(汗
ADCで??と思ったのにあまり深く考えず回答してしまいました。反省です(-“-)
アウトプットありがとうございます。
忘れた頃に?T2 shine throughですね。ADCとセットで見るようにしましょう。
いつも引っかかるのがT2 shine throughです.今回も忘れていました.反省です.
アウトプットありがとうございます。
ADCとセットでDWIを見て、さらにT2WIで明瞭な高信号(古い梗塞)になっていないかをチェックしましょう。
今日もありがとうございます。
DWIとADCmapはセットですね!いい復習になりました。
そうですね。常にセットで見るようにしましょう。
こんにちは。本日もお世話になります。
再びでできましたT2shine through!
新しい脳梗塞なのかどうかは治療方針に関わりますし、しっかり画像を読めるようにしておきたいです。
昨年出た静脈血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針第3販では、
「発症時刻が不明な時でも、頭部 MRI 拡散強調画像の虚血性変化が FLAIR 画像で明瞭でない場合には発症 4.5 時間以内の可能性が高い。このような症例に静注血栓溶解療法を行うことを、考慮しても良い グレードC1」
とも記載されており、発症時刻の見極めのためにも画像が読めることがより重要になるのだなぁと、感じました。
アウトプットありがとうございます。
>再びでできましたT2shine through!
新しい脳梗塞なのかどうかは治療方針に関わりますし、しっかり画像を読めるようにしておきたいです。
救急でも出てきましたね。
ADCが重要だということを覚えておきましょう。
>FLAIR 画像で明瞭でない場合には発症 4.5 時間以内の可能性が高い。このような症例に静注血栓溶解療法を行うことを、考慮しても良い
最新版での補足ありがとうございます。
大変勉強になりました. 当院ではADCmapを撮っていませんでした. 今回の勉強会でDW/ADCの重要性を教えていただきましたので早速応用させていただいております. ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>当院ではADCmapを撮っていませんでした.
私の勤務している施設も古い機会ではADCはありませんでした。
もしADCがあるのならば、必ずチェックが必要ですね。
T2 shine throughとの鑑別に重要です。
お世話になります。
DWI 高信号、ADC等信号、T2高信号の場合、
脳梗塞だとDWIが1ヶ月くらい高信号が続くと思うのですが、DWIが消えかかってT2が高信号になってきている時期をみているのか(急性期をすぎた1ヶ月の間の亜旧性梗塞)と判断するのか、DWIはT2 shine throghによるものなので、かなり時間がたった陳旧性梗塞と判断すればいいのかわかりません。FLAIRで内部低信号&周囲高信号であれば陳旧性梗塞ということで見分けるしかないのでしょうか。ご教授何卒よろしくお願いいたします。
アウトプットありがとうございます。
このレベルになると、信号パターンよりも、そもそも脳梗塞を疑うような臨床症状が最近あったのかが重要になると思いますが、画像だけでとなると、
T2高信号が淡い高信号なのか著明な高信号なのか
あとはおっしゃるようにFLAIRで内部低信号&周囲高信号であれば陳旧性梗塞
といった点が重要になります。
頭部救急画像の復習をしているものです。
脳梗塞疑いの患者さんで、DWIのb値0では高信号・b値1000では等信号という方がいました。ADC mapが高信号であったのでT2 shine throughなのではないかとお思いましたが、このDWIのb値の違いによる所見の差異はどう判断するのでしょうか?
(T2は撮影されていませんが、FLAIRは高信号でした。)
アウトプットありがとうございます。
>DWIのb値0では高信号・b値1000では等信号という方がいました。ADC mapが高信号であったのでT2 shine throughなのではないかとお思いましたが、このDWIのb値の違いによる所見の差異はどう判断するのでしょうか?
b値1000では、拡散制限もT2WIの要素も拾ってきますので、T2 shine throughを起こすほどのT2WI高信号ではないということだと考えられます。
つまり嚢胞や髄液ほどの高信号ではないのだと考えられます。
基礎的な知識も乏しいので、毎日勉強させていただいています。T2 shine throghとは関係なく、基本的な質問で申し訳ないのですが、この陳旧性の脳梗塞がある部分は、左の放線冠レベルなのでしょうか?半卵円中心レベルなのでしょうか?
問題は放線冠レベルですが、解説は半卵円中心レベルでしたので、どこまでの範囲を放線冠レベル、どこからの範囲を半卵円中心レベルと呼ぶのか疑問に思ってしまいました。
アウトプットありがとうございます。
>問題は放線冠レベルですが、解説は半卵円中心レベルでしたので、どこまでの範囲を放線冠レベル、どこからの範囲を半卵円中心レベルと呼ぶのか疑問に思ってしまいました。
混同させて申し訳ありません。
厳密な境界というのはおそらくないのですが、通常側脳室が見え、基底核レベルではない部分を放線冠レベル、基底核が見えないレベルを半卵円中心レベルということが多いので、今回は半卵円中心レベルと表現した方がよいですね。
また修正しておきます。