
【頭部】TIPS症例21
【症例】多尿
【現病歴】半年くらい前から口渇を自覚。1日5Lくらい飲んでいる。夜間尿3回。体重減少なし。テレビでたまたま尿崩症の番組をやっており当てはまるのではないかと考え受診。
【既往歴】A型肝炎(保存的治療)
【身体所見】:身長168cm、体重50kg、BP111/69、HR87、視野異常の自覚なし、頭痛なし、自覚できる皮疹なし、食事は普通にできる。
画像はこちら
異常所見は?
下垂体後葉は正常ではT1WIで高信号でなければなりませんが、今回はこの所見がはっきりしません。
下垂体柄の腫大は認めません。
このような所見を見たときに考えなければならないのが、下垂体機能低下による中枢性尿崩症です。
診断:中枢性尿崩症の疑い(下垂体後葉のT1WI高信号の消失)
※精査目的で入院となりました。入院後の経過です。
入院日の1日尿量は5158mlと3000mlを越えており、基礎値の尿浸透圧は194mOsm/Lと300mOsm/L以下であった。
高張食塩水負荷試験では血漿AVPの上昇を全く認めず、完全型中枢性尿崩症のパターンであった。また、血清Na値と血漿AVP値の関係も、中枢性尿崩症の手引きの基準を全て満たした。
AVP負荷前の尿量は519ml(150分間)、負荷後の尿量は233ml(120分間)であり、尿量の低下を認めた。また尿浸透圧も500mOsm/L以上まで上昇を認めた。
頭部MRIの画像所見も下垂体後葉の高信号消失しており中枢性尿崩症と矛盾しない所見であった。このため、完全型中枢性尿崩症と診断した。
治療は、デスモプレシン・スプレー2.5μgを眠前に2噴霧行うように指示し、帰宅とした。
高張食塩水負荷試験では血漿AVPの上昇を全く認めず、完全型中枢性尿崩症のパターンであった。また、血清Na値と血漿AVP値の関係も、中枢性尿崩症の手引きの基準を全て満たした。
AVP負荷前の尿量は519ml(150分間)、負荷後の尿量は233ml(120分間)であり、尿量の低下を認めた。また尿浸透圧も500mOsm/L以上まで上昇を認めた。
頭部MRIの画像所見も下垂体後葉の高信号消失しており中枢性尿崩症と矛盾しない所見であった。このため、完全型中枢性尿崩症と診断した。
治療は、デスモプレシン・スプレー2.5μgを眠前に2噴霧行うように指示し、帰宅とした。
では、正常例を見てみましょう。
【症例】40歳代男性 スクリーニング
正常では後葉はこのように高信号になります。
後葉の後方や側方の高信号は斜台の骨髄による高信号ですので、これを後葉と判断しないことも重要です。(わかりにくい症例もありますが・・・)
ということで下垂体をとくに矢状断像でチェックする際には(横断像でも見えますが)、T1WIで後葉の高信号がきちんと見えるかを確認するようにしましょう。
よりわかりやすい症例を見つけたので追加します。
40歳代女性 正常例です。
【頭部】TIPS症例21の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
MRIでは下垂体の確認のために、矢状断T1、T2が撮影されてます。崩尿症と言えば、下垂体後葉のチェックが必要ですね。
ところで、崩尿症疑いと検査目的がわかっていたので下垂体後葉を確認しましたが、もし、わかっていない場合は確認していませんでした。少しの手間なので、ルーチンワークとして位置決め画像(T1)の矢状断などで下垂体後頭の確認をしていきたいと思いました。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。矢状断像では主に下垂体に異常がないか、T1WIで後葉の高信号がしっかりあるかをチェックすることが重要ですね。
パッと見では斜台が後葉に見えてしまいました。
Axで下垂体を見るのは苦手なので、T1 sagでしっかりチェックするよう心掛けます。
T2で錐体路が低信号に見えましたが、他の症例を見てみるとみんなそんなもんでした。(汗
アウトプットありがとうございます。
>Axで下垂体を見るのは苦手なので
私もです。矢状断像が重要ですね。冠状断像もですが。
下垂体後葉を確認し、回答できました。これは経験がありました!
アウトプットありがとうございます。
それはよかったです!(^^)
今日もありがとうございます。下垂体を普段から見るクセがなかったのでこれを機に改めたいと思います。
とくに矢状断像が撮影されているときは(そうでなくてもですが)チェックするようにしてください。
下垂体腫瘍と思って見ていたのに正常を知らず、わかりませんでした。勉強になります
腫瘍どころか、本来ある構造がないverですので、正常構造を意識しましょう。
尿崩症なかなか経験できなくて、下垂体のMRIを取ることも少ないので勉強になります!
アウトプットありがとうございます。
普通そうですよね・・・・。矢状断像を撮影しているケースがあれば是非チェックしてみてください。
おはようごうざいます。本日もよろしくお願いいたします。
斜台の骨髄T1WI高信号を下垂体後葉高信号と勘違いしてしまいまい、「T1WIブライトスポットは保たれている」と答えてしまいました。
有名な所見なので、次からは間違えないように気をつけたいです!
アウトプットありがとうございます。
>骨髄T1WI高信号を下垂体後葉高信号と勘違いしてしまいまい
ここはたまに難しいこともありますが、今回はトルコ鞍内の高信号は消えていますね。
“画像診断まとめ”の下垂体のページをカンニングして正解です( ̄ー ̄)
下垂体の同定は矢状断や環状断の方がしやすそうですね。横断像だと蝶形骨洞の背側かつ視交叉のすぐ尾側というように考えて同定するのがよいのでしょうか。
下垂体後葉がT1WIで高信号になるのはADHの分泌顆粒が原因なんですね。一方、下垂体後葉はT2WIでは、脳実質と等信号になると思うので、ADHの分泌顆粒は脂肪や粘液と同じぐらいの粘稠度なのかなぁと憶測します。
もうすぐ放射線科を廻るのですごく楽しみです。選択実習と併せて、1ヶ月半お世話になりますm(_ _)m
アウトプットありがとうございます。
>下垂体の同定は矢状断や環状断の方がしやすそうですね。
おっしゃるとおりです。
矢状断像が非常に見やすいですね。
ただし、下垂体腺腫の精査で、ダイナミック撮影されるときは通常冠状断像で撮影されます。
>もうすぐ放射線科を廻るのですごく楽しみです。
そうなんですね。国家試験前の6回生もこちらには参加いただいていますが、それよりも下の学年ということですね(^^)
斜台とも違い、正中からややずれて偏位した後葉らしいT1高信号があると思いましたが。
アウトプットありがとうございます。
まさかと思って見直してみましたが、
・トルコ鞍外にも存在しているように見える
・T2WIで同部位を見ると骨髄のように見える
点からやはり斜台の骨髄だと思います。
確かにややこしいですね・・・。
斜台の高信号なのか、下垂体後葉の高信号なのかの鑑別について、書籍に記載がありましたので引用します。
「まず下垂体が小さな豆状の構造であることを考えて、前葉からの辺縁の連続性について評価し、高信号が不自然に上方に位置する場合には斜台の鞍背の可能性が高いと判断します。
また、高信号の辺縁に帯状の低信号を認めた場合は鞍背の骨皮質の構造と思われ、これも鑑別に役立ちます。
下垂体後葉自体は小さな構造であるため、どのような装置でどれくらいの制度で撮影したかも診断に大きく影響します。
(画像診断 Vol.36 No.2 2016 P196より引用)」
この連続性という点が今回はやはり合わないと考えます。
いつも勉強詳しい解説ありがとうございます。放射線技師です。
いままで出血と梗塞以外、曖昧なままでもスルーしてしまっていたので毎回とても勉強になります。
コメントにも斜台と迷う話題がありますが、脂肪抑制画像を追加で撮影する場合はありますでしょうか?
有用性、必要性などについてコメントいただければ幸いです。
アウトプットありがとうございます。
>コメントにも斜台と迷う話題がありますが、脂肪抑制画像を追加で撮影する場合はありますでしょうか?
有用性、必要性などについてコメントいただければ幸いです。
確かに迷う場合は追加で撮影していただけるとありがたいと思います。
斜台と迷うことはしばしばありますので。