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【頭部MRA】症例30
【症例】40歳代女性
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MIP像でまず気付きべきは、右の内頸動脈ー中大脳動脈が左と比べて全体的に描出が悪いということです。
「全体的に右側うすいなー」
と思えるかってことです。
このような場合どのようなことを考えなければならないでしょうか?
撮影範囲に入っていないもっと中枢側で狭窄があって、そもそも右内頸動脈の血流が少なくっているのではないか!?
ということです。
じゃあ、もっと中枢側というのはどこでしょうか?
狭窄を来しやすい内頸動脈起始部ですね。
つまり、頸部MRAや頸動脈エコーなどで評価する必要があるということです。
また、右中大脳動脈(M1)および左椎骨動脈(V4)に狭窄を認めています。
左椎骨動脈は右に比べて全体的に細いので低形成の可能性があります。
血管の外形を観察することができるBPASを確認すると、やはり右側に比べると低形成を認めていますが、それにしてもMRAとの見え方にはやはり解離があります。
ですので、左椎骨動脈に狭窄があるだろうと推測することができます。
ただし、やや難しいところですが、椎骨動脈解離があるとこれだけで判断すべきではなく、他のシークエンスも合わせて評価したいところです。
※今回は、左椎骨動脈に低形成さらに狭窄があるのでその影響で左椎骨動脈の血流が低下しており、実際のBPASで認める径よりも全体的に細く見える(つまり椎骨動脈解離は起こしていない)のではないかと考えます。
さて、頸部MRIが撮影されました。
やはり、右内頸動脈の起始部に高度狭窄があることがわかります。
また左椎骨動脈は右に比べて起始部から低形成であることもわかります。
内頸動脈の狭窄を認めた場合、何が起こっているかというと動脈硬化が起こっているということですね。
その動脈硬化が安定型のプラークなのか、末梢に飛ぶことがある不安定型のプラークなのかは、脂肪抑制T1WI、T2WIの信号パターンから推測することができます。
では、今はどうでしょうか?
右内頸動脈起始部には内腔の狭窄を認め、顎下腺と比較して、
- 脂肪抑制T1WI→高信号
- 脂肪抑制T2WI→低信号
となっています。
ですので、上の表から、プラーク内出血を示唆する不安定プラークであることがわかります。
その後血管造影もなされました。
MRA同様、右内頸動脈起始部に高度狭窄を認めていますね。
(右内頸動脈起始部:near occlusion NASCET 95% )
右内頸動脈以降の前大脳動脈・中大脳動脈の描出がないのは、高度狭窄により造影剤が行き届いていないと考えられます。
その後、無症候性ではありましたが、塞栓性梗塞も認めており、脳外科にて頸動脈内膜剥離術(CEA:Carotid endarterectomy)が施行されました。
診断:右内頸動脈起始部高度狭窄(不安定プラークによる)+左椎骨動脈狭窄疑い
関連:
【頭部MRA】症例30の動画解説
頸部MRAの正常解剖の基礎
お疲れ様でした。
今日は以上です。
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様々な要素がありましたが、機序も含めてしっかり書けたのではないかと思います。当初よりも明らかな成長を感じられてモチベーションが上がります。
アウトプットありがとうございます。
>機序も含めてしっかり書けた
それはよかったです!!
>当初よりも明らかな成長を感じられてモチベーションが上がります。
作った私も成長を感じました。ありがとうございました!
以前にも出て来ましたが、T2でのプラークの信号値は顎下腺と比べるのでしたね…すっかり忘れていました。
日常の臨床では今回のように、MRAの元画でもプラークが高信号として見られる場合があり、不安定プラークを判断することがあります。(ただし、T1低〜等、T2 高信号の場合の粥状のプラークがとらえられないのでT2系を追加することもあります。)
アウトプットありがとうございます。
>T2でのプラークの信号値は顎下腺と比べるのでしたね
ですね。耳下腺や顎下腺ですね。
>MRAの元画でもプラークが高信号として見られる場合があり、不安定プラークを判断することがあります
ですね。片一方が高信号ならば、不安定と判断することができますからね。
左椎骨動脈につられて,右中大脳動脈の所見には気付けませんでした.
こういった所見にも注意して読影したいと思います.
アウトプットありがとうございます。
今回は右前方循環系が全体的に薄いという点に気付きたいですね。
いつも勉強させてもらっています。初めてですが、質問させてください。
この症例では椎骨動脈解離はないだろうなと思いつつ、MRAとBPASに多少解離がありそうであり、自信を持って否定はできないと思いました。
椎骨動脈解離は基本的にはBPASで拡張を伴うものでしょうか?
拡張がなければ否定できないとも言えない、最終的に血管造影が必要かもしれませんが、強く解離を疑う所見などはありますでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>MRAとBPASに多少解離がありそうであり、自信を持って否定はできないと思いました。
正常であってもMRAとBPASの見え方には解離がありますが、その点が判断を難しくする症例もあり、今回もそうですね。
>椎骨動脈解離は基本的にはBPASで拡張を伴うものでしょうか?
解離があれば通常MRAでは細く見え、BPASでは拡張を伴います。
>強く解離を疑う所見などはありますでしょうか?
やはりBPASで数珠状の不整な拡張をしており、MRAでは細くなっている場合ですね。
あとはT2WIの横断像で解離腔の血栓が見えることもありますし、あまり造影MRIは撮影されませんが、造影T1WIで血栓部分の造影効果を認めないという所見も見られることがあります。
前回あったSWIも有用ですね。
とはいえ、典型的な椎骨動脈解離!という症例もありますが、そうでなく悩ましい症例も実際は多く、診断はMRIのみでは難しいことも多いです。
大動脈解離はCTで基本わかりやすいのですけどね(^_^;)
あ~(^_^;)
MIPで椎骨動脈解離だと思ってしまいましたOrz
しかも、その流れで右内頸動脈の狭窄を椎骨動脈解離があったのだから、そのときに衝撃を受けて解離したのではないかと推測してしまいました。
プラークイメージまで撮影して提示してあるのに、浅はかでした(汗)
いや~、今回も面白い症例をありがとうございます。
アウトプットありがとうございます。
>MIPで椎骨動脈解離だと思ってしまいましたOrz
椎骨動脈解離の解釈は難しいですね。ここの所見についても少なくともフォローは必要ですね。
>プラークイメージまで撮影して提示してあるのに、浅はかでした(汗)
いや~、今回も面白い症例をありがとうございます。
プラークイメージの読影は救急画像診断レベルを超えていますね(^_^;)
楽しんでいただけて嬉しいです!
MRIのオーダーのことで質問です。これまで頸動脈プラークの評価をMRIで行ったことがなかったのですが、オーダーする際には、頭部MRIとは別に頸部MRIとしてオーダーすべきでしょうか。あるいは、コメント(頸動脈プラーク評価のため、脂肪抑制T1WI、T2WIを合わせて)をつければ、1回の頭部MRI検査で頸部動脈のプラーク評価まで可能ですか?
アウトプットありがとうございます。
>頭部MRIとは別に頸部MRIとしてオーダーすべきでしょうか。
別ですね。1度に2部位は通常撮影できません。
また、施設にもよるかと思いますが、うちの施設では加療にあたる脳外科の先生がオーダーしてます。
いつも勉強になります。
脂肪抑制T2WIで、左椎骨動脈周囲に比較的厚い高信号を全周性に認めていますが、CSFという解釈でよいでしょうか?(脂肪抑制T1WIでは、骨格筋と等信号ですが…)
アウトプットありがとうございます。
左椎骨動脈だけでなく、他の血管も同様に高信号を認めています。
左椎骨動脈の外側の皮下の血管も同様です。
ですので、CSFというわけではありません。
MIP像を見ると蛇行が強いので、その影響かと考えられます。
お世話になっております。
左内頸動脈も、頸部MRA MIPや元画像の30-36/224あたりで信号が低下して見えますが、頭部MRAではしっかり描出されています。アーチファクトでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
頸部MRAはあくまで頸部を評価するものですので、コイルの両端に相当する頭蓋内の血管や心臓側の血管の評価には適していません。
元画像を見比べていただければ同じ内頸動脈の画質も異なることが分かります。
また眼球を見ると体動があるのかなと考えられます。
お世話になっています。
逆に左の内頸動脈の信号が異常に上昇していると解釈してしまいよくわからなくなってしましました。
最終症例ながら反省です。
30症例ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>逆に左の内頸動脈の信号が異常に上昇していると解釈してしまいよくわからなくなってしましました。
逆に行ってしまいましたか(^_^;)
MRAで正常よりも正常血管(動脈)が見えすぎて異常ということは私の知る限りではありません。
>30症例ありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。