【頭部】症例59 解答編

【頭部】症例59

【症例】70歳代女性
【主訴】ふらつき
【現病歴】2日前の夕方頃より軽度ふらつき自覚あり。頭痛はなし。外傷はなし。症状軽減しないため来院。
【既往歴】糖尿病、狭心症(PCIを他院にて施行)
【内服薬】ロキソニン、セルベックス、バイアスピリン、パリエット、セロケン、オルメテック、バファリン、ガスター、リピトール、メトグルコ
【身体所見】意識清明、頭痛なし、上下肢麻痺なし、独歩可能、ふらつきは少し落ち着いていると。SBP 150台。

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MRI

頭部CTでは、見落としがちですが、左の頭頂部の脳溝(中心後溝)に沿って異常な高吸収域を認めています。

同所見は冠状断像においても同定可能です。脳溝が不明瞭となっておりやや高吸収となっています。

次にMRIを見てみましょう。

同所見は、DWIではわずかな高信号で、ADCではほぼ同定できず、T1WIでは高信号として描出されていることがわかります。

※脳溝の血腫は、脳脊髄液と混ざっているため、脳実質内出血のように信号パターンから発症何日目と考えることは通常やりません。

また、T2WIではほぼ同定できないが、FLAIRでは高信号、T2*WIでは無信号として描出されていることがわかります。

これらの所見から、局所的なくも膜下出血が疑われます。

また右の半卵円中心(~皮質下)に陳旧性ラクナ梗塞を認めています。

これらの画像は実は他院で撮影されており、局所的なくも膜下出血を認めたため、当院に紹介入院となりました。

最初のCTおよびMRIから4日後のMRIを見てみましょう。

4日後

撮影装置の違いがあるものの、4日後のFLAIRでは脳溝の高信号が不明瞭化していることがわかります。

血腫はやや吸収されていることが推測されます。

他院では、T2*WIが撮影されていましたが、当院ではSWIが撮影されました。

するとSWIの磁化率効果の高さを実感します。

T2*WIでは脳溝にわずかに無信号を認めていましたが、SWIでは同部に明瞭な帯状の無信号を認めています。

それだけではなく、

  • T2*WIで認めていた皮質下の陳旧性微小出血も、SWIでは数多く認め、
  • さらには、今回のくも膜下出血を認めた部位以外にもくも膜下腔に沿った無信号域を認めています。

改めて復習ですが、磁化率効果の感度は、T2WI<T2*WI<SWIの順番で高くなりますが、その威力を体感できる症例ですね。

陳旧性多発微小出血を認めていますが、その分布に着目してみましょう。

左優位に側頭葉・頭頂葉・後頭葉に認めていますが、被殻・視床・橋・小脳といった高血圧性脳出血の好発部位には出血を認めていないことが分かります。

高血圧性の微小出血ならば、これらの好発部位に認めるはずです。

加えて今回、くも膜下出血を認めています。

このような陳旧性多発微小出血の分布に加えてくも膜下出血を見たときに考えるべきは何でしょうか?

それが、

アミロイドアンギオパチー

です。

 

診断:くも膜下出血+陳旧性多発微小出血(アミロイドアンギオパチー疑い)+陳旧性脳梗塞

 

※MRAで有意な動脈瘤は認めていません。
※SAHとして入院加療となりましたが、原因動脈瘤などは見つからず、特発性のSAHとして6日後に退院、その後元の他院でフォローとなっています。

 

関連:脳アミロイドアンギオパチーとは?MRI画像診断のポイントは?

【頭部】症例59の動画解説

お疲れ様でした。

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