
【頭部】症例55
【症例】80歳代男性
【主訴】頭痛、複視、嘔気、浮遊感
【現病歴】昨日夕方に自己導尿うまくいかず、その際、頭痛、複視、嘔気、浮遊感を認めたが経過観察していた。軽快しないため本日当院受診。
【既往歴】高血圧、糖尿病、腰部脊柱管狭窄症手術後、神経因性膀胱にて自己導尿中
【内服薬】アムロジンOD錠、アーチスト錠、アダラートCR錠、ムコスタ錠
【身体所見】意識清明、No Wallenberg sign、Cerebullar sign(+)、No Horner’s sign
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左小脳半球に最大径4cm大の高吸収域を認めており、血腫を疑う所見です。
周囲には浮腫性変化を認めています。
(追記:また、小脳半球を越えて一部くも膜下腔へ穿破していると考えられます。)
最大径が4cm>3cmですので、手術を考慮してもよいサイズなのですが、保存的に加療されました。
で、●日後のMRI画像を見てみましょう。
血腫は、
- T1WIでリング状の高信号
- FLAIRでやや高信号、一部低信号あり。
- T2*WIで全体的に低信号
を示していることが分かります。
さて今回はどの時期に相当するでしょうか?
T2WIはありませんが、FLAIRで代用して考えましょう。
すると亜急性期早期あたりであることがわかります。
つまり発症から3−7日前後であろうと推測することができます。
この方は、発症から8日後にMRIが撮影されています。
診断:左小脳出血(MRIでは亜急性期早期相当)
※結局このまま保存的に加療され、退院となりました。
【頭部】症例55の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
小脳出血の周囲脳表に沿ってT1やFLAIRで高信号が見られますが、部位はくも膜下出血でよろしいのでしょうか?それとも、軟膜をこえない出血なのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように、小脳内にとどまらず、くも膜下腔と思われる部位にも一部血腫を認めていますね。
前回の表を参考にしながら読影しました。MRの出血信号もなかなか覚えられないので、表で繰り返し確認して頭に入れます。
アウトプットありがとうございます。
>前回の表を参考にしながら読影しました。
実際の症例を見るときも、参考にしながらでいいと思いますよ。
急性期や慢性期くらいは(とくに見る頻度が多い慢性期)覚えておいてもよいかもしれませんが。
T1でのリング状はなんとなく印象に残って覚えやすいですね.
代表的な画像は覚えておこうと思います.
アウトプットありがとうございます。
>T1でのリング状はなんとなく印象に残って覚えやすい
特徴的ですね。T1高信号は亜急性期と覚えておきましょう。
いつもありがとうございます。
MIP像で描出されるのは、下から上向きの血流だけかと思っていましたが、それだけでなく出血などの病変も描出されるんですね。
MIP像で信号あり=上向きの血流 と考えてしまっていたので、はっとしました。
アウトプットありがとうございます。
>それだけでなく出血などの病変も描出されるんですね。
T1WIで高信号になるものは、MIP像でも高信号になります。
ですので、出血や、下垂体の後葉もMIP像で見えることがあります。
逆に、T1WIが撮影されていない場合、同じTE、TRが短いMRA元画像をT1WIとして代用することがあります。