
【頭部】症例54
【症例】40歳代 女性
【主訴】左上下肢麻痺
【現病歴】2日前の朝8時頃に起床、朝食を摂ろうとしていると、前胸部の締め付けられる感じがあり、1−2分程度続いた。これまでにないほどの動機を感じた。続いて左下肢が突っ張った感じがあった。その日は臥床して過ごした。以降左手の脱力が続いているため、当院受診。
【既往歴】なし。
【内服薬】なし。
【身体所見】JCS-0、BP 120/72、Barre(左+)、上肢MMT 5/4+、下肢MMT5/5(ただし持久力なし)
画像はこちら
MRI
右頭頂部に皮質下血腫を認めています。
周囲には浮腫性変化を疑う低吸収域を認めています。
これをMRIで見てみるとどうでしょうか?
血腫は
- T1WIで等ー軽度低信号
- FLAIRで著明な低信号・周囲浮腫性変化は高信号
- SWIでさらに著明な低信号・周囲浮腫性変化は高信号
を示していることが分かります。
さて今回はどの時期に相当するでしょうか?
T2WIはありませんが、FLAIRで代用して考えましょう。ポイントは著明な低信号です。
そうですね。
急性期の血腫の信号パターンであることがわかります。
T2WI(今回はFLAIR)の低信号はオキシヘモグロビンから酸素が外れたデオキシヘモグロビンを示唆する所見と言われています。
2日前発症であり、CT/MRIは同日に撮影されていますので、発症からの時間も合致します。
診断:右頭頂部皮質下出血(急性期)
※皮質下出血を見た場合、高血圧性のほか、非高血圧性を考慮しなければならないのでした。この方は高血圧はなく、非高血圧性が疑われましたが、血管奇形などは認めず。そのまま経過良好で退院となりました。
※今回FLAIRでの低信号よりもSWIの低信号の範囲がかなり大きく見えます。これは磁化率効果の感度が異なるからであり、磁化率効果の感度は、T1WI<T2WI<T2*WI<SWIの順に高くなります。ですので、SWIでサイズが大きく見えるのです。
【頭部】症例54の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
今日もありがとうございます。
昨日の症例のおかげで今日は経時変化を考えて読影することが出来ました。
SWIで血腫周囲の皮質下静脈が拡張しているように見えますが、これは浮腫性変化によるものでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>SWIで血腫周囲の皮質下静脈が拡張しているように見えます
確かにおっしゃるとおりですね。うっ滞に加えて、脳梗塞の時にも出てきましたが、還流静脈内のデオキシヘモグロビンの上昇を示唆しているのだと思います。
非高血圧性の出血を疑い、SWIで静脈が拡張していたので静脈血栓による出血を考えました。
皮質下出血の周囲では、ある程度の静脈拡張は常に起きているのかもしれまんせん。
アウトプットありがとうございます。
>皮質下出血の周囲では、ある程度の静脈拡張は常に起きているのかもしれまんせん。
そうですね。これくらいの時期ならば、確かにそうかもしれません。
nidusではないものの、ADCで血腫内にも拡張した血管構造があるように見え、SWIやMRAで確認は出来ませんでしたがAVMの可能性があるのかと思いましたが違いました。ただ皮質下出血のときに非高血圧性の可能性も考えて画像を見れたことは成長かなと感じます。
アウトプットありがとうございます。
>ただ皮質下出血のときに非高血圧性の可能性も考えて画像を見れたことは成長かなと感じます。
ですね。重要です。結局高血圧もなく、原因不明となるとすっきりしないですね。
ですがそういう症例も結構あります。
漫然と画像を眺めるだけではなく,現病歴と画像所見が一致するかどうかを常に念頭におきながら,読影する必要があるのですね.
アウトプットありがとうございます。
>現病歴と画像所見が一致するかどうかを常に念頭におきながら,読影する必要がある
その状態が理想ですね。
教科書などには時期別の信号パターンが掲載されているけど、
実際に見る機会はそんなにないので、
この機会に見てみよう企画です。
出血に関しては経時変化をなかなか覚えられません(T_T)が、今後の課題としたいと思います。いつも分かりやすい解説をありがとうございます。
アウトプットありがとうございます。
覚えなくていいです。表に戻れば大丈夫です。
こんにちは。
病歴から心原性?出血性梗塞?などとあれこれ考えてしまいましたが全然違いました。
原因が気になりますね。
CTの冠状像が横断像になっていました。
また、解説文の最初の方ですが、皮質下出血性→皮下出血かと思います。
アウトプットありがとうございます。
>病歴から心原性?出血性梗塞?などとあれこれ考えてしまいましたが全然違いました。
原因が気になりますね。
そうですね、原因が気になるところですが、結局わかりませんでした。
>CTの冠状像が横断像になっていました。
また、解説文の最初の方ですが、皮質下出血性→皮下出血かと思います。
誤植報告ありがとうございます。修正しました。
皮質下出血なのですね(^_^;)
まず、症状から脳梗塞を疑い、周囲に浮腫もあるから、出血性の脳梗塞か?と考えましたが、
血管支配領域に一致していないし、DWIからも違うのだろうと判断し、
若い女性なので、脳静脈血栓からの出血かなぁとか考えました・・・。
アウトプットありがとうございます。
>出血性の脳梗塞か?と考えましたが、血管支配領域に一致していないし、DWIからも違うのだろうと判断し
そうですね。出血性梗塞が起こる場所としては場所が非典型的ですね。あとサイズも非典型的です。
>若い女性なので、脳静脈血栓からの出血かなぁとか考えました・・・。
その可能性も考えなければなりませんね。
若い方の皮質下出血なので、何か原因があると考えさらなる精査をしなければなりませんね。
この方は結果、原因不明と言うことでした。
本日もありがとうございました。
MRA元画像の54/120で、右内頸動脈に解離か、あるいは血栓があるのかと考えてしまい、病歴的には心原性も考えられると思い混乱してしまいました。見えているのはアーチファクトでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>MRA元画像の54/120で、右内頸動脈に解離か、あるいは血栓があるのかと考えてしまい
確かに線状の構造がありますね。
これはMRA元画像でよく見られる血流のムラですね。
MRAは上(頭側)方向の血流を画像化していますので、内頸動脈など水平方向に近い走行をしている部位ではこのように見えることがあります。
同じ質問を別の症例でもいくつかいただいています。
例えば、
症例33
https://imaging-diagnosis.com/view/VziJmtnt
同じような部位にありますね。
今日もありがとうございます。
動悸が出血の原因と関係あるのかと思いましたが、不明なのですね。
アウトプットありがとうございます。
そうなのです。その点はすっきりしないのですが、不明なのです・・・。
いつもありがとうございます。
経時的変化について勉強になります。
ちなみに失礼ですが、
脳出血の時期を予測することは何か治療方針に影響したり、臨床的意義はあるのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>脳出血の時期を予測することは何か治療方針に影響したり、臨床的意義はあるのでしょうか?
CTと比べてMRIでは脳出血は時期により多彩な画像所見を示すので、単発でMRIを撮影すると「ん?脳腫瘍?」などとびっくりすることがあります。そのときに、脳腫瘍などではなくこれは発症○○日程度の脳出血なのだと診断できることは重要ですね。
ただし、出血の「存在」診断に比べると意義は少ないかもしれませんね(^_^;)
しばらく出血時期シリーズが続くので、ご自身で意義がないと判断されるのならば、スルーしてください。
出血性脳梗塞としてはサイズ的にもことなると上記コメントにありましたが、出血性脳梗塞では出血範囲がより大きいという解釈でよろしいでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
まず出血を認めている部位は今回、前大脳動脈領域と中大脳動脈領域にかぶっている様な部位で、血管支配域的にも脳梗塞後とは考えにくいです。
出血性梗塞の好発部位はやはり中大脳動脈領域で塞栓性脳梗塞となりますが、今回は中大脳動脈領域とすると範囲が狭く、また末梢は保たれている点からも塞栓性梗塞は考えにくいです。
出血性梗塞を100%否定できる所見ではありますが、典型的ではなく考えにくいという意味です。
なお出血範囲ではなく、梗塞が起こった範囲が典型的ではないという意味です。