
【頭部MRA】症例17
【症例】60歳代 女性
画像はこちら
MIP像で左内頸動脈(ICA)の内側から外側にかけて血管構造を認めていることがわかります。
元画像で見てみると、海綿静脈洞→左下錐体静脈→左S状静脈洞→左横静脈洞と連続する静脈の描出を認めていることが分かります。
つまり、このMRAでは静脈の一部を描出しているということがわかります。
ではなぜ動脈が描出されるはずのMRAで静脈が描出されているのでしょうか?
ここの部分の静脈が描出されているということは、ここの静脈は動脈と同じ流れの血流になっている、すなわち上側(頭側)への血流となっているということです。
その原因は2つあります。
- 正常変異:逆流による偽病変(こちらが多い)
- 異常:内頸動脈海綿静脈洞瘻
の2つです。
両者の鑑別は、MRIのみでは難しいことが多く、また正常変異が多いため、無症状の場合は、静脈の逆流による正常変異としてフォローされることが多いです。
MRIでは前方型の場合は、上眼静脈の描出・拡張などを認めていないかをチェックします。
最終的な鑑別には、脳血管造影となりますが、無症状の人に侵襲の大きな血管造影を毎回行うわけにはいかないですね。
診断:静脈逆流による偽病変疑い
※ただし、この方は症状などはありませんが、脳血管造影がなされて、CCFや硬膜動静脈瘻が否定されたわけではありませんので、100%偽病変だとは言えないことには注意が必要です。
※ですので、脳外科受診していただき、フォローや場合によっては脳血管造影でこれらを除外するケースもあります。(下のコメント欄も参照ください。)
関連:
【頭部MRA】症例17の動画解説
【MRAの偽病変】
静脈の逆流により太い血管構造が余分に描出される偽病変があります。原因としては
▶左腕頭静脈の生理的狭窄
▶内頸静脈の弁不全
▶左頸静脈孔の低形成などが考えられています。#画像診断 #湯の原温泉オートキャンプ場 pic.twitter.com/fhS70Ipo4N
— ごろ~にゃ@画像診断cafe (@radiology_cafe) June 1, 2019
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
逆流が小脳背側の後頭静脈洞から静脈洞交会まで及んでいて、正常逆流としづらかったので、内頚動脈海綿静脈洞疑いとしました。
または、静脈の血流が早い場合、正常血流方向でもMRAで静脈が抽出されるのでしょうか?(MRAでは頭側の血流を消すためのパルスが照射されるので、その照射幅より頭側の血流が流れ込んだことになりますが…)
上記の投稿後に「逆流による偽病変」と「内頸動脈海綿静脈洞瘻」の鑑別が気になって調べてみました。
「http://www.jnet-ejournal.org/monograph/pdf/8-2-2.pdf」によると、頚部MRAでの逆流所見が鑑別に役立ちそうです。
ちなみに、「静脈速度とMRA抽出」はわかりませんでした…。
調べていただきありがとうございます。
>「http://www.jnet-ejournal.org/monograph/pdf/8-2-2.pdf」
詳しく記載がありますね。
やはり今回のように海綿静脈洞まで描出がある場合は、CCFの可能性がより高くなりそうですね。
ただし、記載があるようにじゃあこういった症例にダイナミックMRIをしたり、脳血管造影をルーチンとするのは現実的ではないようですね。
アウトプットありがとうございます。
>逆流が小脳背側の後頭静脈洞から静脈洞交会まで及んでいて、正常逆流としづらかったので、内頚動脈海綿静脈洞疑いとしました。
おっしゃるとおりで、ここの判断は難しいところです。
脳外科の先生に聞いたところ、症状がなくても場合によっては血管奇形除外のために脳血管造影をやるだろうとおっしゃっていました。
とくに今回は脳血管造影がないので、その時点では内頚動脈海綿静脈洞疑いで間違いではないですね。
>正常血流方向でもMRAで静脈が抽出されるのでしょうか?
基本的に描出されないと考えています。
旅行先でも朝早くから動画作成に励まれるとは、バイタリティの高さに脱帽です。
CCFと逆流による偽病変の鑑別はMRIでは難しいことも多そうですが、随伴所見や症状も加味して可能な限り正解に近づきたいですね。
今回は内頸動脈と海綿静脈洞の境界(動脈の血管壁?)が見えるように感じたのですが、連続性の有無はCCFの鑑別に役立つのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>旅行先でも朝早くから動画作成に励まれるとは、バイタリティの高さに脱帽です。
たまたま早く目が覚めた
→やることがない
→隣のコテージと距離があり、越えだしても迷惑でなさそう
→仕事(動画撮影)しよう
という流れです。
その後(というか先週)もキャンプに出掛けましたが、隣との距離が近くて無理でした(^_^;
>随伴所見や症状も加味して
そうですね。ここも大事ですね。
>連続性の有無はCCFの鑑別に役立つのでしょうか?
MRAの画像だけではいえないですね。上眼静脈の拡張があれば疑わしいとは言えると思いますが。
やはり最終的には脳血管造影での除外が必要となりますね。
MRAだけでは結局判断は難しいということですね.
異常に気づき,精査の必要性を相談できるようにしようと思います.
アウトプットありがとうございます。
そうですね。この症例に限っては、これまで見てきた正常変異と異なり、
「正常変異なので、大丈夫ですよ!」
とは言えないですね。
フォローを含め、その点は注意が必要です。
こんばんは。毎日ありがとうございます。
太い血管は静脈だったのですね…。
CCFの場合は静脈の流れは正常と同じなのに、MRIで描出されることになるのですね。
ごろ〜先生の動画を観て、働き始めてからもワークライフバランスを大事にしながら頑張りたいと思いました!!
アウトプットありがとうございます。
そうなんです。静脈を見ていたのです。ちょっとこの症例は派手ですが、軽い逆流は割とありますので注意してみてみてください。
>働き始めてからもワークライフバランスを大事にしながら頑張りたいと思いました!!
ですね。
結局この後は1度行きましたが動画撮れていません・・・。
異常信号には気づいたのですが、内頚動脈海綿静脈洞瘻というワードまでたどり着けませんでした・・・。
リンクの画像診断まとめのサイトを読んでいて、疑問に思ったというか、よく分からなくなってしまったんですが、
MRAで静脈が描出されるのは動脈と同じ上向き(頭側へ)の血流により描出された、ということですが、
上眼静脈は本来と流れと反対に逆流するのは分かるのですが、
下錐体静脈洞は、正常でも海綿静脈洞→下錐体静脈洞→内頸静脈と下向きに流れ、
CCFでも内頸静脈→瘻孔→海綿静脈洞→下錐体静脈洞→内頸静脈と結局下向きなのは変わらないような…?と、こんがらがってしまいました・・・。動脈からの血流も加わって流れが早くなり、信号抑制パルスでは抑制できない血流となって描出されるということでしょうか・・・?(^_^;)
恐らく何か勘違いしていると思うのですが、教えて頂けますでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>下錐体静脈洞は、正常でも海綿静脈洞→下錐体静脈洞→内頸静脈と下向きに流れ、CCFでも内頸静脈→瘻孔→海綿静脈洞→下錐体静脈洞→内頸静脈と結局下向きなのは変わらないような…?と、こんがらがってしまいました・・・。動脈からの血流も加わって流れが早くなり、信号抑制パルスでは抑制できない血流となって描出されるということでしょうか・・・?(^_^;)
これはちょっとややこしい話になるのですが、MRA画像は一回で撮影されるわけではなく、いくつかのボックスに分けて撮影されます。
で、あるボックスを撮影しようとしているときには、そのボックスの静脈の流れ(下向き)ではなく、その1つ上のボックスの静脈の流れ(下向き)を叩きます。
なので、撮影しているボックス内に瘻があっても、それが下向きの流れでも叩くことはできません(あくまで叩いているのは一つ上のボックスだからです)
瘻がある部位がボックスのちょうど境目に存在しているときは叩くことができるのかもしれませんが、現実的ではありませんね。
このように同一ボックス内で、上から下向きの血流ができてしまうものは、
・CCF(後方型)
・鎖骨下動脈盗血症候群
が有名です。
本来は2本の上向きの椎骨動脈が合流して脳底動脈になりますが、鎖骨下動脈盗血症候群では、
片一方の椎骨動脈から、脳底動脈方向と、もう一方の椎骨動脈へと流れます。
つまり、椎骨動脈合流部で、上方向から下方向の血流ができてしまうということです。
こちらにわかりやすく解説されています。
http://mrifan.net/modality/anymodality/370
今回のケースでは、静脈の描出されている範囲が長いのでそういう意味でも逆流が疑われますね。
ちょっと技師さんに聞いてみましたが、やはり5つのボックスに分けて撮影されていて(5スラブ)これだけ縦方向に長く静脈が見られる=ボックスをまたいでいる、ということは、動脈と同じ方向に血流があり、CCFよりは逆流が考えやすいとのことでした。
こちらも勉強になりましたm(_ _)m
結構、MRAで静脈がうつってくることは多く、あまり気にしていませんでした(^_^;)
確かに原理を考えれば逆流しているってことすぐにわかりそうなものですが、あまりにも普通になっていて気にしていませんでした。
CCFの可能性もあるとのことで、気をつけてみるようにします。
*静脈がうつってくるときは、たしかにほとんど左側ですね。
アウトプットありがとうございます。
>結構、MRAで静脈がうつってくることは多く
そうですね。頻度も割と高いので、いつものやつで、特に問題としないかもしれません。
>CCFの可能性もあるとのことで、気をつけてみるようにします。
過去画像でもずっと見えていないかや、前方型の場合は上眼静脈の拡張がないかなど観察してみてください。
うーん、内頸静脈とはわかりましたが、静脈や静脈洞の解剖が苦手です(^_^;)
CCFの診断は4D-CTも有用ですか?
アウトプットありがとうございます。
>静脈や静脈洞の解剖が苦手です(^_^;)
実は私もこの辺りは好きなところではありません(^_^;)
つまり苦手なところです・・・
>CCFの診断は4D-CTも有用ですか?
有用だとは考えられますが、やはり脳血管造影が診断には第一選択ですね。