【頭部MRA】症例7 解答編

【頭部MRA】症例7

【症例】40歳代男性

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左内頸動脈後交通動脈分岐部動脈瘤(IC-PC動脈瘤)がある?ない?

左内頸動脈後交通動脈分岐部を見てみると背側に突出する瘤状の構造を認めています。

この部位は動脈瘤の好発部位として知られているところです。

動脈瘤でしょうか?

よく見るとこの突出している先端から後交通動脈(Pcom)が出て内側に向かっていることが分かります。

その目でMIP像を見てみると拡張した部位の先端から細い後交通動脈(Pcom)と思われる血管が分岐している様子がわかります。

「だからなに?( ̄△ ̄)」と思われるかもしれませんが、これが非常に重要な所見です。

この場所は、動脈瘤以外に漏斗状拡張(Infundibular dilatation)を起こしやすい部位で知られています。

この部位の動脈瘤と漏斗状拡張(Infundibular dilatation)の違いは上の通りで、

  • 後交通動脈(Pcom)が突出部の根元から分岐する→動脈瘤
  • 後交通動脈(Pcom)が突出部の先端から分岐する→漏斗状拡張(Infundibular dilatation)

と区別することができます。

漏斗状拡張(Infundibular dilatation)と診断されれば正常変異ですので、動脈瘤のように加療の対象になることは基本的にはありません。

鑑別のポイント1)は、

  • ①漏斗状拡張であれば先端から動脈分枝が出ていることを確認する(種々の角度のMIP像、MRR画像を作成して参照する。)
  • ②動脈瘤の多くは後外側下方に向かうが、後交通動脈(Pcom)は内側から出て内下方に走行する。従って、漏斗状拡張も先端部が内側向きに出て先細りを示すことが多い。

という点です。

診断:左後交通動脈分岐部の漏斗状拡張(Infundibular dilatation)

 

もう一例見てみましょう。

症例 50歳代女性 

他院のMRIで左IC-PC動脈瘤が疑われて、当院の脳外科に紹介となった方です。

まずは他院で撮影されたMRIを見てみましょう。

MIP像では確かに左の内頸動脈(ICA)から後交通動脈(Pcom)が分岐するところに突出像を認めており、動脈瘤のようにも見えます。

また元画像でも、左の内頸動脈(ICA)から後交通動脈(Pcom)が分岐するところで突出像があり、先ほどの症例のように後交通動脈(Pcom)との連続性ははっきりしません。

先ほどの鑑別のポイントに当てはめてみましょう。

  • ①漏斗状拡張であれば先端から動脈分枝が出ていることを確認する(種々の角度のMIP像、MRR画像を作成して参照する。)→確認できない。
  • ②動脈瘤の多くは後外側下方に向かうが、後交通動脈(Pcom)は内側から出て内下方に走行する。従って、漏斗状拡張も先端部が内側向きに出て先細りを示すことが多い。→内側には向いている。

と、内側は向いてはいますが動脈瘤の可能性はやはり否定できません。

当院では、脳血管造影がなされました。

すると、MRIで認めたように、左の内頸動脈(ICA)から後交通動脈(Pcom)が分岐するところで突出像を認めています。

よく見ると、突出像の先端から出ている小さな血管構造を確認でき、後交通動脈(Pcom)であることがわかります。

再構成画像を作るとその様子はより明瞭になります。

左後交通動脈分岐部の漏斗状拡張(Infundibular dilatation)と診断されました。

このようにMRAではよくわからないけれども、脳血管造影やCTAでは同定できるということもありますので、覚えておきましょう。

※ただし、脳血管造影でも判然としないこともあります。

関連:【MRI/MRA画像あり】脳動脈瘤の種類、頻度、好発部位、画像所見まとめ!

参考文献:
1)画像診断 Vol.32 No.11 臨時増刊号 2012 s29-31

【頭部MRA】症例7の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

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