
【頭部MRA】症例3
【症例】50歳代男性
画像はこちら
どのような正常変異が見られますか?
脳底動脈に穴が開いているように見えますね。
これを、みたまんま脳底動脈の窓形成(fenestration)と言います。
また両側の後交通動脈(Pcom)が両側ともはっきりしません。
元画像で見てみると、右側の後交通動脈(Pcom)はかなり細いですが、なんとか確認できます。
一方で左ははっきりしません。
ですので、両側の後交通動脈の低形成が起こっていると言うことが推測されます。
つまり、上の様に両側Pcomが低形成になっており、P2以降の血流は脳底動脈→P1から得られているということがわかります。
診断:脳底動脈窓形成(+両側後交通動脈(Pcom)低形成)
※今回の新しいTopicは、脳底動脈の窓形成ですので、両側Pcom低形成は( )に入れてます。
参考症例を2つ見てみましょう。
参考症例① 60歳代男性
今回の症例と同じように脳底動脈に窓形成を認めています。
窓形成部は前下小脳動脈の分岐部を含む傾向にあると言われています。
今回は両側とも前下小脳動脈が窓形成部から分岐している様子ががわかります。(コメントで指摘があり修正済み)
また、右後大脳動脈のP1は低形成で後交通動脈(Pcom)経由でP2以降が描出されている様子がわかります。
一方で、左はP1は描出されており、Pcomがやや細いですね。
つまり、以下のケースになります。
右側のようにP1が低形成で後交通動脈(Pcom)経由でP2以降が描出されているのを胎児型の後大脳動脈とも呼ぶのでしたね。
診断:脳底動脈窓形成(+左側後交通動脈(Pcom)低形成、右後大脳動脈のP1の低形成(胎児型))
もう一つ症例を見てみましょう
参考症例② 60歳代男性
同様に脳底動脈に窓形成を認めています。
また窓形成部から右側の前下小脳動脈が分岐している様子がわかります。
また両側の後交通動脈(Pcom)の描出がこの症例でもはっきりしませんね。
元画像で見てみますと、左後交通動脈(Pcom)がかなり細いが確認できるますが、右は微妙です。
診断:脳底動脈窓形成(+両側後交通動脈(Pcom)低形成)
今回は、ちょっとくどいですが、窓形成のみでなく、症例2を踏まえて、P1やPcomの低形成も丁寧に取り上げてみました。
関連:脳のMRAにおける脳底動脈の窓形成(fenestration)とは?
【頭部MRA】症例3の動画解説
Willis動脈輪の正常変異
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
窓形成はこれまで意識したことがありませんでした。
し、P-comも両方なかったからか、違和感を感じず、ともに指摘できませんでした。
逆に、右のA1が細いように見えて、それを解答してしまいました。
ちゃんと輪が形成されているか確認しないといけないですね…
アウトプットありがとうございます。
窓形成はいろんなところに起こりますが、この部位が頻度が最も高いので覚えておいてください。
私も右A1が細いように見えて左から2本出てるのかと思ってしましました。窓形成は知らなくて近づいて離れてしているだけかと思ってしまいました。1-2%位あるらしく、勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
脳底動脈には結構な頻度で見られますので、「窓形成(fenestration)」 という言葉を覚えておきましょう。
参考症例①は全体的に細い血管が多いように見えます。
血管奇形などの基礎疾患はありますか?
アウトプットありがとうございます。
参考症例1と2ではおそらく撮影した装置が異なりますが、細くはないです。
当院でも窓形成は、脳底動脈だけでなくMCAやACAにも、ぼちぼち見かける正常変異です。
そうですね。
窓形成はいろんなところにできますね。
中でも今回の脳底動脈は頻度が高いですね。
窓形成全く気付きませんでした.
知らないと見逃してしまいますね.
そうですね。
「窓」って何?と習ったときは思いましたが、知らないと見逃しますね。
初めて窓形成に遭遇したときは何か分からず「解離で偽腔側にも血流があるとこう見えるかも?」とか考えたのを思い出しました。
アウトプットありがとうございます。
初めて見たときは確かに穴が開いている!!と思いましたね。
見慣れてくると「また、あれか」ですね。
特に脳底動脈は。
こんばんは!
今日も一日お世話になりました!
右A1が低形成、両側P-comが低形成であることは指摘したのですが、窓形成はわかりませんでした。単純に椎骨動脈どうしが重なり合って窓のように見えているだけなのだと勘違いしておりました。
復習しておきます!
アウトプットありがとうございます。
>窓形成はわかりませんでした。単純に椎骨動脈どうしが重なり合って窓のように見えているだけなのだと勘違いしておりました。
見たことがなければわからないですよね。
割と頻度の多い正常変異ですので、とくに脳底動脈の「窓形成」覚えておいてください。
MRAのMIP像で前方循環系は見やすいのに後方循環系は何故こんなに見辛いのか…と常々思っていたのですが、↑の参考症例①の解説でsagitalで180度回転して後方循環系を見ているのを真似してみたら驚くほど見やすくなって驚きました。
アウトプットありがとうございます。
重なりがあると見えにくいですよね。
施設によっては、
・全て
・前方循環系のみ(後方循環系を消す)
・後方循環系のみ(前方循環系を消す)
・内頸動脈のみ など
といったMIP像を作るところもあります。
これも重なりによって見落としを防ぐための対策ですね。
分かりやすい解説ありがとうございます。画像診断初心者なのでとても参考になります。
脳底動脈の窓形成はあまり意識していませんでした。
質問なのですが、眼動脈の起始部が通常よりも高いと思うのですが、こちらは正常変異とは言えないのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
確かに特に左で、眼動脈の起始部が正常よりもやや高めですね。
正常の場合は、サイフォン部と呼ばれる前方へ突出した部分の少し上から起始します。
https://imaging-diagnosis.com/view/AViwNz8M
これも特に左は正常変異といってよいと思います。
眼動脈の破格としては、
内頸動脈海綿静脈洞部起始の眼動脈
内頸動脈起始の重複眼動脈
中硬膜動脈起始の眼動脈
内および外頸動脈起始の重複眼動脈
前大脳動脈起始の眼動脈
などが知られています。
これらはちょっとマニアックすぎるので、今回は取り扱いません。
参考:知っておきたい頸部〜頭部動脈破格 MRAとCTAの読影が楽しくなる!
右のA1,2は低形成でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
そうですね。右のA1は左に比べると細いので低形成となります。
A2以降は左右ともに同じくらいの太さですので、低形成ではありません。
参考症例1の
”窓形成部は前下小脳動脈の分岐部を含む傾向にあると言われています。
今回は両側とも後下小脳動脈が窓形成部から分岐している様子ががわかります。”
というところの2つめの文章は後下小脳動脈ではなく前下小脳動脈の間違いでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように誤植でした。
修正しました。ご指摘ありがとうございます。
いつも勉強にいなっています。右A1は狭窄と思ったのですが、コメントの中で低形成という話がありました。低形成と狭窄を見分ける方法はあるのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
低形成が起こる部位では、全体的に細くても狭窄とは表現しません。
過去画像があり、それと比較して細くなっていれば話は別ですが。
A1の途中部分のみ細い場合は狭窄となります。
小児科医です。両側A1が低形成かと思いましたが、大変不勉強でA1低形成ではなく両側Acom低形成と答えてしまいました。
ゆっくり描画すればAcomは1本しかないと言うことが分かってたレベルで、意識していないとA1をAcomと誤認してしまっていた事に気付けました!
窓形成については初めて知りました。
アウトプットありがとうございます。
>両側A1が低形成かと思いましたが、大変不勉強でA1低形成ではなく両側Acom低形成と答えてしまいました。
今回は右のA1が低形成ですね。
>ゆっくり描画すればAcomは1本しかないと言うことが分かってたレベルで、意識していないとA1をAcomと誤認してしまっていた事に気付けました!
左のA1が太くて蛇行があり、右のA1は低形成で、Acomも太くて左のA1と同じくらいの太さであるためちょっとわかりにくかったかもしれません。