【頭部】症例31 解答編

【頭部】症例31

【症例】50歳代男性
【主訴】左半身しびれ
【現病歴】前日に左下肢全体のしびれ感を自覚したが様子を見ていた。徐々に左体幹、左上肢、左顔面までしびれ感が拡大。しぼれの程度は発症時をピークに現在は軽減している。触るとしびれていること自覚する程度。脱力感なし。呂律難なし。
【身体所見】意識清明、BP 147/89mmHg、HR 87

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MRI

頭部CTでは頭蓋内出血を疑う所見は認めません。

ただし、橋のほぼ正中部に低吸収域を認めており、脳梗塞の可能性があります。

MRI画像が撮影されました。

橋のやや右側にDWI高信号/ADC信号低下/FLAIR淡い高信号のspotを認めています。

急性期(〜亜急性期)脳梗塞を疑う所見です。

さきほどCTで認めていた低吸収域は今回の新規病変ではなく、FLAIRで周囲に高信号を呈する低信号域として描出されていますので、陳旧性ラクナ梗塞を疑う所見です。

FLAIR画像をよく見えると、右小脳や両側の基底核に同様の信号パターンを示す部位を認めており、陳旧性ラクナ梗塞が多発していることがわかります。

また放線冠レベルでは、脳室周囲や皮質下〜深部白質に高信号を認めており、いわゆる深部白質変性を疑う所見をみとめていますが、なかには一部FLAIRで低信号を示している部位も認めており、慢性虚血性変化に加えて、微小梗塞が混在している可能性があります。

※FLAIRの抜け(低信号)が確認できないものを陳旧性ラクナ梗塞としてはダメです。

またSWIで右被殻および右側頭葉白質に低信号の抜けを認めています。

陳旧性微小出血を疑う所見です。

※部位からも石灰化などではありません。

またMRAでは、右の椎骨動脈に描出不良および一部で狭窄を疑う所見を認めています。

ただし、椎骨動脈はこのように片一方が低形成になることがしばしばあり、即狭窄と有意と取らないことが大事です。

MRAは血流の流れを画像化したものですので、このような場合に実際の外観はどうなのかを確認するためにBPASという撮影方法が撮影されることがあります。

  • MRAは血流の流れを画像化したもの。
  • BPASは血管の外観を画像化したもの(流れの有無は関与しない)。

という違いがあります。

BPASではやはり左の椎骨動脈の太さに比べて、右の椎骨動脈は細く低形成であることがわかります。

しかし、MRAで認めたような狭窄は認めていません。

つまり、血管はあるけど、血流が少なくなっているということですので、やはり右椎骨動脈に狭窄があると考えることができます。

 

さて、いろいろ所見がありましたが、今回の症例は橋の梗塞でした。

橋を栄養する血管は、脳底動脈からの穿通枝であり、

  • 傍正中橋動脈
  • 短回旋動脈
  • 長回旋動脈

があります。

なかでも傍正中橋動脈が重要であり、ラクナ梗塞や分枝粥腫型梗塞の原因となります。

今回はサイズも小さくラクナ梗塞と診断されます。

 

診断:橋ラクナ梗塞(急性期)

+陳旧性多発ラクナ梗塞
+陳旧性微小出血
+右椎骨動脈狭窄疑い(+右椎骨動脈低形成)

 

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【頭部】症例31の動画解説

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