
【頭部】症例10
【症例】70歳代 女性
【主訴】頭痛、左上下肢が動かない。
【現病歴】本日1時間前に、自宅で電話押している最中に、突然頭痛を認めた。その後その場に座り込んでしまい、左上下肢が動かないとのことで救急要請。
【既往歴】高血圧、関節リウマチ
【内服薬】バファリン頓用、ドネペジル、クエチアピン、メルブラールカプセル、アスパラCA、セレコックス、セルベックス、ファモチジン、リマチル、プレドニン
【身体所見】E4V4M6、BT 37.1、BP 211/94、HR 58、SpO2 98%(RA)、瞳孔2.0mm/2.0mm、対光反射+/+、眼球運動障害なし、左上肢MMT3、左下肢MMT3、左上肢に重度の感覚障害、下肢も軽度〜中等度、NIHSS 6点。
画像はこちら
右視床に2cm大の高吸収域を認めています。
右視床出血を疑う所見です。
基底核レベルの解剖はこちらで確認ください。
頭部画像診断ツールで確認ください。
脳内出血を認めた際には、上記の随伴所見の有無をチェックします。
今回は視床出血ですので、
- 側脳室や第3脳室への穿破の有無
をチェックする必要がありますが、そのような所見は認めていません。
診断:右視床出血
※脳外科コンサルトとなります。
さて、次に脳内出血の手術適応について再度確認しましょう。
上にあるように視床出血の場合は、脳の深い部位にあることもあり、原則手術適応とはなりません。
ただし、脳室穿破を起こして水頭症を来した場合は、ドレナージ目的の手術が行われることはあります。
降圧療法(ニカルジピン3mg/hr持続静脈)が行われました。
この後のフォローのCTで血腫のサイズが大きくなることはなく、保存的に加療されました。
1ヶ月半後のフォローのCTでは血腫がほぼ吸収されていることがわかります。
【頭部】症例10の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
色々な部位の典型的な症例を提示してくださっているサイクルのようで、復習になりありがたいです。繰り返しチェックポイントや解剖を教えてくださると、頭に入るので、長期記憶につながりそうで中年には助かります。
アウトプットありがとうございます。
>色々な部位の典型的な症例を提示してくださっているサイクルのようで
気付かれましたか(^_^;
腹部と違ってある程度体系だっています。よろしくお願いします。
大きな病変にはひとまず気付けているのですが、まだまだ随伴所見を画像を見ながらチェックする思考が定着しませんが、徐々に画像を診ながら頭の中で所見をまとめていけるようにがんばります。
今後またMRIも出てきますのでそのときはぜひお願いします。
MRIの原理などあまり私はわかっていないので、またおわかりのところなどございましたら教えて頂けると幸いです。
繰り返しの中で随伴所見を確認する癖が少しずつ身についてきていると感じます。基礎からじっくり取り組むことが長期記憶になると思います。
それは良かったです。頭部はこんな感じでいきますので、よろしくお願いします。
さすがにこの診断自体は容易ですが、皆さんもおっしゃられているように、
頭や出血の画像を繰り返されていることで、だんだんと見慣れてきたように思います。
たくさん画像を読んで異常な所見に対して「違和感」を抱くスピードをより速くしたいです(^▽^)/
>たくさん画像を読んで異常な所見に対して「違和感」を抱くスピードをより速くしたいです(^▽^)/
是非是非です。
今日もありがとうございます。
昨日の失敗を生かして今日は随伴所見まで記載できて良かったです。
最初は不慣れであった頭部画像も少しは見慣れてきた気がします。
アウトプットありがとうございます。
>最初は不慣れであった頭部画像も少しは見慣れてきた気がします。
それはよかったです。1日1症例でも積み重ねると大きいですね!
最初は被殻・視床出血がこんがらがっていましたが,だんだんと慣れてきました.
繰り返すことで解剖構造も覚えられますね.
それはよかったです。
国家試験の時には覚えたはずですが、繰り返さないと忘れますよね。
また忘れるかもしれませんが、この機会に反復してください。
血腫か右側脳室体部を圧排して
ニコニコサインかででいるような気がするのですが…
これくらいでは水頭症とは言わないのでしょうか…?
すみません、コメント投稿場所を間違えました
「突然の頭痛、高血圧、左上下肢が動かない」とくれば、右脳の出血を想像します。そして、意識レベルは悪くなく、「対光反射+/+、眼球運動障害なし」なので、大きな出血ではなさそうと考えました。(また、瞳孔2.0mm/2.0mmと縮瞳を認めていますが、視床出血では縮瞳傾向を示す症例が多いみたいです。)
身体所見や症状を確認して出血部位や重症度を絞り込んでから、画像を確認する練習をしています。
アウトプットありがとうございます。
>瞳孔2.0mm/2.0mmと縮瞳を認めていますが、視床出血では縮瞳傾向を示す症例が多いみたい
そうなんですね。こちらも勉強になります。
>身体所見や症状を確認して出血部位や重症度を絞り込んでから、画像を確認する練習をしています。
この症状および身体所見と画像の関係はなかなか難しく個人的にも苦手なところですが、
このあたりもこの機会に一緒に勉強できたらと思います(^_^;
かなりよいトレーニングになっていると感じています。
出血部位はことなるがチェックする項目は変わらず、今回の場合は側脳室の圧排所見がありました。
そのうち脳ヘルニアの所見のある症例も必ず出てくるかと思いますが、
変に勘ぐるのではなく淡々と所見を確認していきたいと思います。
アウトプットありがとうございます。
>かなりよいトレーニングになっていると感じています。
それはよかったです!!
>変に勘ぐるのではなく淡々と所見を確認していきたいと思います。
そうですね。まずは目の前の画像をしっかり見ましょう。
また被殻出血かと思ってしまいました。
どうもCTだと、視床か被殻か淡蒼球かの区別があいまいです。
合併症についも、記載するのを忘れてしまいました。
基本に忠実に、丁寧に読影しなくては。
次回から心を入れ替えて、頑張ります。
アウトプットありがとうございます。
>どうもCTだと、視床か被殻か淡蒼球かの区別があいまいです。
ですね。このレベルの出血は複数に及んでいるケースもありますね。
ちょっと割と単調な出題が続いていますが、引き続きよろしくお願いします。
被殻出血だと思ってしまいました。解剖を再度確認して少しでも慣れるように頑張ります。
アウトプットありがとうございます。
このレベルは非常に解剖が重要ですので、ぜひ復習しておいてください。
基本的な画像で丁寧に解説してくださり、体系的に良い復習をさせていただいています。ありがとうございます!
まったく核心ではない質問ですが、、、病変の大きさをツール機能で測定できない時、大体のサイズはどのように測るのでしょうか?(例えば今回の視床出血が2cm大とわかるにはどうすれば・・・?)何かメルクマールがあるのでしょうか?
教えてください。
あと、気が早いですが!
先生、やはりESPRESSO胸部もぜひよろしくお願いします!!!ESPRESSOで胸部を勉強したいです!
ご検討いただけましたら幸いです。
アウトプットありがとうございます。
>病変の大きさをツール機能で測定できない時、大体のサイズはどのように測るのでしょうか?(例えば今回の視床出血が2cm大とわかるにはどうすれば・・・?)何かメルクマールがあるのでしょうか?
申し訳ありません。
現在の提供している環境では、そのようなメルクマールはなく、
サイズを測ることはできません。
血腫の手術適応にサイズが重要なのですが、申し訳ありません。
>先生、やはりESPRESSO胸部もぜひよろしくお願いします!!!ESPRESSOで胸部を勉強したいです!
ありがとうございます(^_^;
今は頭部で一杯一杯で全くno planですが、2020年を目標に頑張ります。
こんばんは!毎日お世話になっております!
縮瞳の定義は2mmより小さいもの(散大の定義は5mmよりも大きいもの)だそうですね。視床出血で縮瞳傾向を示すメカニズムは調べてもよくわからなかったです(一部教科書に「視床すぐ下の視床下部や中脳に病変が及ぶと、瞳孔異常や眼球下方偏倚(鼻先に向かう)を呈する。」という記載がありました)。
今回は身体所見として、
①左上下肢の感覚低下は右の視床病変(後腹外側核の障害?)で説明がつきます。
しかし、
②左上下肢のMMT低下
は視床のみの病変では説明できず、出血巣がそれなりに大きいことから、皮質脊髄路の通る内包後脚を噛んでしまっているためと考えます。
アウトプットありがとうございます。
>縮瞳の定義は2mmより小さいもの(散大の定義は5mmよりも大きいもの)だそうですね。視床出血で縮瞳傾向を示すメカニズムは調べてもよくわからなかった
すいません。私も機序はわからないですが、病気がみえるの神経のP97にも「縮瞳と対光反射消失・減弱」と視床出血のところに記載があります。
>①左上下肢の感覚低下は右の視床病変(後腹外側核の障害?)で説明がつきます。
なるほどです。
>②左上下肢のMMT低下
は視床のみの病変では説明できず、出血巣がそれなりに大きいことから、皮質脊髄路の通る内包後脚を噛んでしまっているためと考えます。
そうだと思われます。内包後脚にも一部及んでいそうですね。
視床出血は判定出来たのですが、脳室が光っているように見え、脳室穿破があると言ってしまいました。
冠状断だと明らかにないので、条件変えてみるよう心がけようと思います。
アウトプットありがとうございます。
>冠状断だと明らかにないので、条件変えてみるよう心がけようと思います。
そうですね。冠状断や矢状断がある場合は条件を変えて見てみてください。
CT画像読影とは少し関係がないかもしれませんが、、手術適応のフローチャートでは脳幹出血がないのですがそちらも視床出血同様脳室内穿破をしない限りは手術適応はないという解釈でよろしかったでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
脳幹の場合は深いため、穿破の有無関係なく手術適応ではありません。
いつも勉強になっております。他の方が脳室穿破があるように見えました、とコメントがありました。それと関連した質問(?)です。発症当日の16-17/29のスライスにある脳室内にあるように見える等吸収のものは、脳実質が圧排されたものがそのように見える、(partial volume effectで)と考えてよろしいでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>脳実質が圧排されたものがそのように見える、(partial volume effectで)と考えてよろしいでしょうか。
血腫により脳実質が内側に圧排されており、あたかも脳室内にあるように見えています。
partial volume effectというのは、スライス厚が厚いためにその中にある小さな病変を過小評価したり、実際は臓器の外に病変があるのに中にあるように見えてしまうものです。
今回はあたかも脳室内にあるように見えているのは、押されているだけですのでpartial volume effectとは言いません。
今日も勉強になりました。
本筋からは外れてしまうのですが、
左耳の前方の結節状構造が気になってしまいました。静脈でしょうか??
アウトプットありがとうございます。
確かにありますね(^_^;)
粉瘤などでしょうか。血管ではないと思いますが詳細は不明です。
血腫か右側脳室体部を圧排して
ニコニコサインかででいるような気がするのですが…
これくらいでは水頭症とは言わないのでしょうか…?
アウトプットありがとうございます。
70歳代ですので、Niko-niko signを安易に取らないように注意が必要ですね。
また今回脳室に血腫は穿破していませんので、脳室穿破による水頭症を来すケースではありません。