【腹部】復習症例17 

症例17

【症例】80歳代 男性
【主訴】腹部膨満
【現病歴】肺癌末期、昨日より腹部膨隆あり、精査目的でCTが撮影された。

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上腹部を中心に下腹部まで大量の腹腔内遊離ガス(free air)を認めています。

消化管穿孔が疑われます。

消化管穿孔を見た場合、どこから穿孔しているかを探しましょう。

free airと穿孔部位の大まかな関係は、

  • 大量→胃十二指腸、大腸
  • 上腹部腹腔内のみ→胃、十二指腸球部
  • 後腹膜→十二指腸下行〜水平脚
  • 腸間膜内→結腸、小腸
  • 骨盤内に限局→結腸、小腸

の穿孔という傾向があります。(あくまで傾向です。)

今回は、上腹部中心ですが下腹部にも大量のfree airを認めていますので、上部下部両方の可能性があります。

また、穿孔している腸管と周囲の特徴としては、

  • 腸管壁の肥厚・造影効果増強、壁の欠損。
  • 周囲脂肪織濃度上昇。
  • 消化管内容物の逸脱。(特に結腸からの便塊(dirty mass sign))

といったものがあります。

 

今回はどうでしょうか?

 

骨盤底に消化管と連続しない液貯留およびプツプツとしたガス構造(糞便構造)を認めています。

これは便そのものが腹腔内に逸脱をしているdirty mass signを示唆する所見です。

直腸から結腸を口側に追っていくと、

S状結腸で、壁破綻を認めており、この糞便様構造と連続性を認めている部位を認めています。

同部からの穿孔が疑われます。

診断:(特発性)S状結腸穿孔+広範な腹膜炎

※通常は、緊急手術の適応となりますが、肺癌末期であり、家族の意向もあり保存的に加療され、5日後に永眠となりました。

関連:消化管穿孔のCT画像のポイントは?

その他所見:

  • 右下葉に胸壁に浸潤し、肋骨の骨破壊を伴う腫瘤影あり。原発巣か。
  • 肺内転移を疑う小結節複数あり。
  • 胃管あり。
  • 胆石あり。
  • 腎嚢胞あり。左腎に複雑性嚢胞あり。
  • 左副腎腫瘤あり。転移の可能性あり。
  • 動脈硬化あり。
  • 総腸骨動脈分岐部直上で大動脈の拡張あり。
  • L2に圧迫骨折あり。

 

症例17の動画解説


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