
症例10
【症例】70歳代 女性
【主訴】下血にて他院より紹介。
【身体所見】BT 36.9℃、BP 151/95mmHg、PR 95/min、腹部所見に異常なし。直腸診:血液付着あり。
【データ】WBC 10400、CRP 1.00
画像はこちら
下行結腸からS状結腸にかけて(一部横行結腸も)3層構造を保った壁肥厚を認めています。
肥厚しているのは粘膜下層です。
下行結腸では肥厚した壁の周囲に脂肪織濃度上昇も認めています。
壁肥厚はS状結腸にかけて認めています。
冠状断像では左半結腸全体に及ぶ様子がよくわかります。
(上の画像はS状結腸のみが見えます)
症状と合わせて考えると、虚血性大腸炎を疑う所見です。
診断:虚血性大腸炎
※消化器内科入院となり、保存的に加療されました。
関連:左側結腸の腸炎の鑑別診断は?虚血性腸炎、偽膜性腸炎とは?
その他所見:
- 左腎嚢胞あり。
- 両側傍腎盂嚢胞あり。
- 胆石あり。胆嚢壁肥厚あり。慢性胆嚢炎の疑い。
- 肝外胆管やや拡張あり。
症例10の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
やや胆嚢壁が分厚く,肝外胆管も拡張しているように見られますが,病的意義はあるのでしょうか.
おっしゃるとおりですね。
胆石らしき高吸収もありますね。慢性胆のう炎があるのだと思います。
今回の症状とは関係がないと考えますがともに取るべき所見ですね。
症例を(考えながら)たくさんこなしたとき、
自信がたとえなかったとしても、
感じる「違和感」自体は正しいことが多く、
そして(特に、若ければ)恥ずかしいことでは全くないといつも思っています。
慢性胆嚢炎のことを言ってますw
そういう可能性もあるんだな、と本当に勉強になります。
臨床でも同じことを感じていて、
考えながらある程度数見てきたのだから、
何か違和感を感じた場合、一度は立ち止まって見るべきだと思っています。
残念ながら現場(外来のみならずわドック判定や日当直でも)では、
忙しいからか、年を取って分からないことが恥ずかしくなったからか、
「よく分からない所見が流されている」場面に遭遇することがよくあります。
最近本当に痛感することは、
「誰かが気づくだろう」と思ったとき、
その「誰か」は、本当に、「自分ただ1人」だと言うことです。そして、
「カルテに書く主治医への伝言はほぼ100%スルーされる」ということ、なので、当直対応では、
「週明け検討お願いします」ではなく、
(休日帯手薄な中動いて頂く看護師さんには毎度申し訳ないですが、ほとんどの場合理解が得られています)「ひとまず開始(あるいは中止)しておきました。継続もチームでご検討ください。」
という対応を選ぶ場面も少なくありません。
読影でも、どの症例でもやはりまず全体をしっかりと見て、その上で解説を見て、分からなかければ質問する、という
根本的なところの積み重ねがいつまでも大事なのかな、と思います。
そして、それが日々実践できる教材こそ、
ESPRESSO救急画像診断に他なりません。
世界最高の画像診断教材と断言できます。
(↑ 宣伝用です(╹◡╹)ww。ちょっと海外風?にしてみました☆彡)
アウトプットありがとうございます。
>慢性胆嚢炎のことを言ってますw
そういう可能性もあるんだな、と本当に勉強になります。
そっちですか(;゚ロ゚)
もはや主病変以外でアウトプットしているみなさんですね。
>「よく分からない所見が流されている」場面に遭遇することがよくあります。
最近本当に痛感することは、
「誰かが気づくだろう」と思ったとき、
その「誰か」は、本当に、「自分ただ1人」だと言うことです。
胸が痛いです(;゚ロ゚)
>そして、それが日々実践できる教材こそ、
ESPRESSO救急画像診断に他なりません。
世界最高の画像診断教材と断言できます。
(↑ 宣伝用です(╹◡╹)ww。ちょっと海外風?にしてみました☆彡)
あ、ありがとうございます。
推薦文はまた別の機会にお願いしますw
夜中の3時にどうもありがとうございます(^o^)。
ESPRESSO救急画像診断の中で「下血に気を取られて消化管ばかり見ていると実は腎臓にも病変が…」というような症例で何度も痛い目に遭ってきたため、王道な虚血性腸炎の画像が出てくると不安を覚えます…笑
個人的に解説ラストの副病変リストを見るのも楽しみにしております。
各症例にここまで丁寧に副病変を載せている参考書はそうそう無いので、非常にありがたいです。
アウトプットありがとうございます。
>下血に気を取られて消化管ばかり見ていると実は腎臓にも病変が…」というような症例で何度も痛い目に遭ってきたため、王道な虚血性腸炎の画像が出てくると不安を覚えます…笑
実際の現場では、おっしゃるように一つ見つけて安心してたら別にも・・・・ってこともありますが、
まずは王道をはずさないことが重要ですね。
>個人的に解説ラストの副病変リストを見るのも楽しみにしております。
各症例にここまで丁寧に副病変を載せている参考書はそうそう無いので、非常にありがたいです。
そんな需要があるのですね(;゚ロ゚)
副所見については、ざっとみて書いているので、ここも副所見じゃないの?とどんどんご指摘いただけると幸いです。
CTの検査に携わるのは月に数回だけになってしまっているのでこうして日々画像に触れ合う機会を大事にしていきたいと思っています。
アウトプットありがとうございます。
>CTの検査に携わるのは月に数回だけになってしまっている
そうなんですね。是非残りの症例を楽しんでいただけたらと思います。
サイト拝見しました。
「夕食後〜夜間に多い」のですね。ということは夜間外来とかでも結構来そうなものの、実は初診を自分で見たことがなく、実際の場面で適切に診断できるかはやや不安です。
症状が特徴的なのである程度予想はできるとのことですが、単純CTでもOKですか?
翌朝外科の先生に怒られませんかね(・・;)笑
アウトプットありがとうございます。
実際は昼間にもよく見る疾患です。
>症状が特徴的なのである程度予想はできるとのことですが、単純CTでもOKですか?
腹部救急疾患の中でもCTを撮影する前にかなり病名を疑われて撮影される疾患とも言えますね。
つまり、「虚血性腸炎疑い」でオーダーが来る頻度が多いということです。
あとは、尿管結石、虫垂炎、膵炎、憩室炎、イレウスあたりですかね。
CTは造影の方がわかりやすいですが、単純でも大丈夫です。
外科よりは内科で見られる疾患ですね。
今回は素直な感じの症例で
ほっとしました。
というか、虚血性腸炎以外に何も考えられなかったので、回答も、そのまま書いてしまいました。
結果、ああ、やっぱりそうなのだなと思い
今までこのサイトで症例を見てきたおかげだと感じました。
本当にありがとうございます。
高齢女性で、下血、
三層構造を保ったままの壁肥厚で
下行結腸からS状結腸にかけて
ある時は虚血性腸炎以外で考えられる
ものはありますか?
サイト先を見てもこれ以外が考えられないのですが、もしあれば教えていただきたいです。
アウトプットありがとうございます。
>結果、ああ、やっぱりそうなのだなと思い
実際の臨床の現場は素直な症例の方が多いかもしれません(^_^;
>高齢女性で、下血、
三層構造を保ったままの壁肥厚で
下行結腸からS状結腸にかけて
ある時は虚血性腸炎以外で考えられる
ものはありますか?
基本は虚血性腸炎で良いと思います。
あとは薬剤性腸炎や憩室炎で上下方向への炎症進展が広いものなどでしょうか・・・。
しかし、エピソードと合わせて素直に虚血性腸炎ですかね。
こんにちは、いつもご指導ありがとうございます!
Target water pattern(三層構造)を呈するものとして、感染性腸炎、急性期の潰瘍性大腸炎やクローン病、虚血性腸炎、門脈圧亢進などを鑑別にいれつつ、病変の広がり方や症例文の状況からもっとも疑わしきは虚血性腸炎と考えることができました。
副所見はひとつ腎嚢胞に気を取られて傍腎盂嚢胞を見逃してしまいました。自分の中で、腹部全体の所見をとるときにどういう順番でみていくのか、ある程度のお作法をつくって実践しないといけないな、と感じました。
アウトプットありがとうございます。
>Target water pattern(三層構造)を呈するものとして、感染性腸炎、急性期の潰瘍性大腸炎やクローン病、虚血性腸炎、門脈圧亢進などを鑑別にいれつつ、病変の広がり方や症例文の状況からもっとも疑わしきは虚血性腸炎と考えることができました。
良いと思います。
>傍腎盂嚢胞を見逃してしまいました。
まあこれは今回は問題ないと思います。
依頼が「水腎症を指摘され、精査」などなら話は別ですが。
画像診断とは関係ないのですが、
「下血」というのはいわゆる血便のことでしょうか?
「下血」=黒色便、つまり上部消化管出血
「血便」=便に鮮血もしくは赤い血が付着している、つまり下部消化管出血
と勉強したので、今回は虚血性腸炎であれば「血便」なのかなあと思いました。
(もちろん上部の出血でも大量出血であれば血便のこともあるし、下血を消化管出血全体の意味合いで広義的に使うこともあるようですが・・・)
まあ実際はそこまでこだわらなくても文脈でどちらの方を言っているのか分かりますけど(^_^;)
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように、下血よりは血便が適切ですね。
確かに考えてみれば虚血性腸炎が疑わしいと臨床的に考えられている症例は通常「血便精査」で依頼が来ます。
今回は当直帯の依頼だったのか、消化器が専門でない方からの依頼であったのかもしれません。
いつも勉強になる症例をありがとうございます。
左結腸の広範な炎症ということで虚血性腸炎と答えましたが、直腸までやや浮腫性に見えました。
この画像で潰瘍性大腸炎は否定できますか?
アウトプットありがとうございます。
潰瘍性大腸炎の場合、3層構造を保った粘膜下層の肥厚というよりは、粘膜の肥厚が目立つことが多いです。
また早期には画像では異常所見を認めず、画像に回ってくる際には既に診断されていることが多いです。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/17584
以前高齢女性が排便後の左側腹部痛・血便を主訴にER受診され虚血性腸炎疑いでコンサルトされました。
3層構造を保った粘膜下層の肥厚や周囲の脂肪識濃度上昇を認めず、なんか変だなぁ~と思っていたら、実は消化管穿孔で緊急Ope
という症例に出会ったことを思い出しました。
画像読影のスキルを高める必要性を感じた1例でした。
アウトプットありがとうございます。
>3層構造を保った粘膜下層の肥厚や周囲の脂肪識濃度上昇を認めず、なんか変だなぁ~と思っていたら、実は消化管穿孔で緊急Ope
という症例に出会ったことを思い出しました。画像読影のスキルを高める必要性を感じた1例でした。
貴重な体験談ありがとうございます。
虚血性腸炎にしては壁肥厚がなく、なんだか変だなと気づけることが重要ですね。
年齢、症例から読影する前に「虚血性腸炎ではないだろうか。」と考えました。
ただ、他の先生も書いているように、他に所見はないかと目を凝らし、副所見をいくつか拾うことができました。
アウトプットありがとうございます。
>年齢、症例から読影する前に「虚血性腸炎ではないだろうか。」と考えました。
同じように消化器の先生からのCTオーダーの依頼文に「虚血性腸炎疑い」と記載がある場合が結構あるので、疑いやすい疾患ですね。
脂肪織濃度の上昇の判断で迷いました。
動画では42-53/164あたりであるということでした。
所見には気づいたのですが、34-40/164の上行結腸でも同じくらい脂肪織が目立つように見え、「正常範囲かな」と考えてしまいました。
「慣れ」以外で判断に役立つポイントがなにかあれば、お教えください。
「慣れ」は数こなして専門医の読影とすり合わせて頑張ります
アウトプットありがとうございます。
>所見には気づいたのですが、34-40/164の上行結腸でも同じくらい脂肪織が目立つように見え、「正常範囲かな」と考えてしまいました。
3層構造を保った壁肥厚を伴っている点が最大のポイントです。
その上で周りに軽度脂肪織濃度上昇を認めているのですが、この症例では脂肪織濃度上昇はわずかであり、あまり有意と取らなくてもいいかもしれません。
あまり今回の脂肪織濃度上昇については気にされなくてよいかと考えます。
動画まで作っていただきありがとうございます。濃度を変えてみたり、血管が目立つかについても注目してみます。
axialで124/164にて横行結腸に限局的壁肥厚が見られたので横行結腸癌疑いも鑑別に入れてみたのですが、考えすぎでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
そうですね。蠕動による変化で説明可能な範囲ですね。
ここが有意とすると120/164あたりも壁肥厚と考えてもよくなります。
ただし、このように結腸も隈無く観察する習慣が重要です。
大きな腫瘍を見落とすよりも、指摘して内視鏡してもらったけど何もなかったというほうが遙かによいですね。