【新腹部救急】症例38

【症例】70歳代 男性
【主訴】右上腹部痛
【現病歴】昨日から嘔気、右上腹部痛の出現あり。本日AM3時頃、腹痛の増悪あり、救急搬送となる。
【既往歴】高血圧
【生活歴】飲酒:10年前まで一升瓶/日、喫煙:40本/日×50年
【身体所見】意識清明、BT 36.6℃、BP 136/100mmHg、P 109bpm、SpO2 96%(RA)、上腹部に圧痛あり。
【データ】WBC 10000、CRP 9.70、Hb 9.2

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単純CTがまず撮影されましたので、単純CTから見ていきましょう。

肝表や骨盤内など腹腔内にやや高吸収な液貯留を認めています。

ダグラス窩でCT値を測定すると平均36HUと高値であり、血性腹水を疑う所見です。

 

腹腔内液体貯留のCT値
  • 腹水 0-15HU
  • 血性腹水 20-40HU  
  • 血腫・凝血塊 40-70HU
  • 活動性出血 85-350HU
  • 胆汁 0HU
  • 尿 0-15HU
    (西巻、腹部外傷、日独医放;vol51.No1.51-71,2006)

 

出血源はどこでしょうか?

単純CTで出血源を探す場合、最も濃度が高いところ(最も高吸収な部分)を探しましょう。

肝右葉S7-8に肝外に突出する腫瘤を認めており、その周囲で最も高吸収な血腫を疑う所見を認めています。

同腫瘤からの出血が疑われます。

肝腫瘤からの出血として最も頻度が高いのは肝細胞癌の破裂です。

続いてダイナミックCTが撮影されました。

すると早期相で肝腫瘤から突出する血管構造を認めています。

これが腫瘤内なのか腫瘤外なのかは早期相ではちょっとはっきりしませんが、extravasation(造影剤の血管外漏出像)の可能性があります。

平衡相では、その造影剤の量が増えていますので、やはりextravasation(造影剤の血管外漏出像)であり、同部からの出血が疑われます。

 

診断:肝細胞癌破裂による腹腔内出血

 

※緊急アンギオとなり動脈塞栓術(TAE:transcatheter arterial embolization)が施行されました。その後、待機的に肝右葉の腫瘍が切除(肝部分切除術(S7拡大亜区域切除))されました。動脈塞栓術(TAE)による壊死が主体で組織型は判明しませんでした(Hepatocellular carcionoma,almost necrotic,of unknown classification)。

関連:

その他所見:

  • 心嚢水貯留あり。
  • 両側腎やや萎縮あり。腎嚢胞あり。
【新腹部救急】症例38の動画解説

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