頭部画像診断 TIPS症例59

【頭部】TIPS症例59

【症例】70歳代 男性
【主訴】ふらつき
【現病歴】5日前よりふらつきを認めるため来院。

画像はこちら

頭部CT

頭部MRI

胸腹部CT

異常所見と診断は?

まずCTから見ていきましょう。

左小脳半球に腫瘤性病変あり、第4脳室の圧排所見を認めています。

ただし、脳室圧排に伴う水頭症を疑う所見は認めていません。

次にMRIを見てみましょう。

腫瘍の部位はDWIおよびADCでは周囲の脳実質とほぼ等信号であることがわかります。

T1WIでは等信号が主体ですが、一部高信号部位を認めており、出血や蛋白濃度の高い液貯留の可能性があります。

T2WIでは等信号から一部高信号、低信号部位があります。

また左だけでなく右の小脳半球にも腫瘤がありそうです。

最後に脂肪抑制造影T1WIを見てみましょう。

すると小脳だけでなく、大脳半球や脳幹部、脳室沿いにも多数のリング状の造影される結節を認めており、多発転移性脳腫瘍の状態であることがわかります。

転移性脳腫瘍とすると原発はどこでしょうか?

次に胸腹部のCTを見てみましょう。

すると左肺大動脈に接する腫瘤性病変を認めており,肺癌が疑われます。

また縦隔には複数のリンパ節腫大を認めており、転移が疑われます。

 

診断:多発転移性脳腫瘍(原発巣は肺で、縦隔リンパ節転移もあり)

 

※脳腫瘍の生検にて、肺腺癌からの転移と診断されました。

関連:転移性脳腫瘍(脳転移)のMRI画像診断のポイントは?

【頭部】TIPS症例59の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

過去のコメント
  1. 小脳病変に関しては腫瘍内部の出血もしくはたんぱく濃度の高い貯留液が読み取れませんでした。CTでlowになっている時期にT2でhighは出血ではないと考えました。撮影されている時期もおそらく一日違いくらい(CT⇒MRI?)と予測しましたが出血の可能性もあるのですね。よく整理できてないですが、前症例とともにメタなんでしょうが内部の状況までしっかり見ないといけないという教訓を今後も気を付けます。(頭の中も整理できていませんが)整理できてない文章ですいませんでした。ありがとうございました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >CTでlowになっている時期にT2でhighは出血ではないと考えました。撮影されている時期もおそらく一日違いくらい(CT⇒MRI?)と予測しましたが出血の可能性もあるのですね。

      腫瘍の嚢胞内の血腫ですので、通常の脳内血腫の経時的変化とは異なりますので注意が必要ですね。

      >前症例とともにメタなんでしょうが内部の状況までしっかり見ないといけないという教訓を今後も気を付けます。

      内部の状況もですが、多発していることに気づくことがまず重要ですね。
      この点がより転移を示唆する所見と言えます。
      小さな転移は造影しないと見えないという点も重要です。

      そして、原発巣はどこなのかを探しに行くという流れですね。

  2. 小脳病変だけ異なる性質に見え、何かしらの脳転移+星細胞腫等が併発しているのかと思いました。
    同じものでも進行等により全然見え方が違うものですね。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >同じものでも進行等により全然見え方が違うものですね。

      そうですね。転移性脳腫瘍は単発で来ることもありますし、今回のように一つだけ(あるいは二つだけなど)大きいこともありますので、他のものと印象が異なりますね。

  3. 転移性脳腫瘍がきっかけで肺癌が見つかることは多いですよね。腫瘍を見つけるだけに満足せず腫瘍内出血などもしっかり評価する必要がありますね。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >転移性脳腫瘍がきっかけで肺癌が見つかることは多いですよね。

      そうですね。
      サイズが大きいものは頭部CTで発見される。
      →脳腫瘍精査で脳外科コンサルト
      →造影MRIが撮影されて、転移性脳腫瘍だろうと診断
      →原発巣を検索の胸腹部CTを撮影すると肺癌が見つかる。

      というパターンはよくありますね。

      その後、胸部レントゲンをよく見直してみると・・・・。

      ということもありますが(^_^;)