頭部画像診断 TIPS症例32

【頭部】TIPS症例32

【症例】60歳代女性

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頭蓋骨に穴が開いているのはなぜ?

両側の頭蓋骨のほぼ同じ位置に穴が開いています。

冠状断像でも同様です。

 

溶骨性病変でしょうか?

 

ではなくて、人工的に空けられた穴です。では何のために?

両側前頭部に硬膜下血腫を認めており、一部高吸収を呈しています。

 

そう、お気づきの方もおられるかもしれませんが、実はこの症例、前回の症例3031と同じ症例です。

 

経時的に並べてみると次のようになります。

両側硬膜下水腫→両側硬膜下血腫と来て、今回はその血腫の量が減っています。さらに両側頭蓋骨に穴が開いています

なぜでしょうか?

おわかりですよね?

両側の慢性硬膜下血腫に対して、穿孔洗浄術が施行されたためですね。

 

今回の画像は、穿孔洗浄術後に、少し血腫が再発しているということです。

今回の画像と症例30の最初の画像、症例31の真ん中の画像を比べると、脳溝の狭小化・側脳室の狭小化がかなり軽減されていることがわかりますね。

 

症例31でCT/MRIで両側の硬膜下血腫が指摘されてから、約1週間後に手術が施行されています。

以下は手術記録より抜粋したものです。

 

慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術(両側)

両側とも外耳孔よりOM lineに対して垂直頭側方向に9cm程度並行移動した線を作成し、そのライン上の2cm前頭部寄りに穿頭点を決定。皮切線は両側ともにSTAを避けるように2横指程度とした。

右側の硬膜に切開を加えたところ血腫皮膜まで切開したため、暗赤色の血腫が勢いよく噴出。そのまま血腫吸引を開始。70ml程度血腫を吸引した。

左側に関しては硬膜のみ切開を施し、血腫皮膜を露出。その後皮膜表面を切開し、暗赤色の血腫を約60ml吸引した。

 

ということで、特に成人でこのように頭蓋骨に穴が開いている場合は、硬膜下血腫の術後の可能性が高いと考えてください。

 

診断:両側硬膜下血腫に対して(血腫穿孔洗浄)術後だから

 

関連:慢性硬膜下血腫とは?CT、MRI画像診断のポイントは?

しかし、同じ症例で引っ張りすぎではないか?

ま、それだけ得るものが多い症例ということで・・・

さすがにもう引っ張らないよな?

も、もちろんです・・・。

【頭部】TIPS症例32の動画解説

 

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

過去のコメント
  1. この症例の場合、硬膜下血腫がまだ残存しているので、すぐに骨欠損の原因がドレナージ術後だとわかりましたが、血腫がない場合、骨欠損の辺縁の状態や周囲の軟部を確認して、できれば病歴を確認したいと思います。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >血腫がない場合、骨欠損の辺縁の状態や周囲の軟部を確認して、できれば病歴を確認したいと思います。

      ですね。
      基本これを見ればドレナージ術後でよいですね。

      ただし、若年者の場合はICPセンサー留置の可能性もあります。両側は無いですが。と脳外科の先生がおっしゃっていました。

  2. 慢性硬膜下○腫はよくありますが、先生の説明には知らなかったこともあり、勉強になりました。一気に記載されるとあやふやな部分が残るので分けてしてくれると助かります。

    1. アウトプットありがとうございます。

      得るものがあってよかったです。

      もうこの症例では引っ張らないのでご安心ください。

  3. 今回は比較的最近で分かりやすいですが、高齢者で昔の穿頭術後には注意しないといけませんね

    1. アウトプットありがとうございます。

      そうですね。穿頭術後ではなく開頭術後のこともありますね。その場合は所見が異なりますが。

  4. 慢性硬膜下血腫について段階的に学ぶことができて良かったです。

    くも膜下出血や、硬膜外出血との鑑別が難しい場合もありそうですね。

    この症例では、低吸収のくも膜下腔を追うことができるので、くも膜下出血は否定的。出血が広範囲に三日月状に広がっていること、骨折を伴わないこと、慢性的に無症状で経過していることなどから硬膜外血腫は否定的だと考えれば良いのかなと思いました。

    もしかして、次回硬膜外血腫が出題されたり、、しないですかね?笑

    骨条件で見ることの大切さも意識したいです。これまで頭蓋骨の骨折をそのままの条件で見ていたので、WW, WLを変えて見ることを習慣にしたいです。

    今まで〇〇と比べて高吸収、低吸収などと考えていましたが、人間の目って大雑把。CT値を意識しないと足元すくわれますね。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >くも膜下出血や、硬膜外出血との鑑別が難しい場合もありそうですね。

      ありますね。混在していることもありますし、硬膜外血腫とは形状や骨折の有無だけでは鑑別できないこともあります。

      >出血が広範囲に三日月状に広がっていること、骨折を伴わないこと、慢性的に無症状で経過していることなどから硬膜外血腫は否定的だと考えれば良いのかな

      そうですね。おっしゃるとおりです。硬膜外血腫は吸収されていくのが通常なので、慢性化は普通しないですね。

      >もしかして、次回硬膜外血腫が出題されたり、、しないですかね?笑

      (^_^;)さて、どうでしょう。

      >骨条件で見ることの大切さも意識したいです。これまで頭蓋骨の骨折をそのままの条件で見ていたので、WW, WLを変えて見ることを習慣にしたいです。

      骨折の有無や骨腫瘍などは骨条件にしないと厳しいことが多いので、条件を変えて見ることが重要です。

      >CT値を意識しないと足元すくわれますね。

      そうですね。頭部CTでは、高吸収なものが、石灰化なのか出血なのかが悩ましいことがたまにあります。

      「血腫のCT値はヘマトクリット値が100%でも94HUとされており、95HUを超えるものは血腫ではない。」とされていますが、超えないものもたまにあり、そういった場合はMRIで評価したりしますね。

  5. いつもありがとうございます。楽しく勉強させて頂いてます。神経内科の知人にも見せたら、この講座を受けたいと言っていました。
    話はそれますが、お子さんとの草野球の写真、ほっこりしました。お天気良かったですものね。コロナ禍が続きますがそんな中でも楽しく過ごしたいなと思いました。
    今後も宜しくお願いします。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >神経内科の知人にも見せたら、この講座を受けたいと言っていました。

      ありがとうございます。この講座自体は募集は1年後とかになると思います。
      次は頭部救急画像診断をやりますので、是非ご参加ください。

      >話はそれますが、お子さんとの草野球の写真、ほっこりしました。お天気良かったですものね。

      ありがとうございます。
      滅多に取れない、抽選でもいつも外れるグラウンドにたまたまキャンセルがでたので、すぐに取りました。
      昨日は真夏かというほどの雲一つない天気で気温も高く結構きつかったです・・・。
      12時半集合で17時半には暗くなるのに、結局なんやかんやで遊具鬼ごっこやら岩鬼ごっこやらをして、解散は19時でした。

      >コロナ禍が続きますがそんな中でも楽しく過ごしたいなと思いました。

      緊急事態宣言も明けましたし、常識の範囲内でならば楽しんでもよいと個人的には思っています。
      子供のスイミングが最近日曜日になったので動きづらいですが、山登りなどもまた行きたいと思います。

      >今後も宜しくお願いします。

      こちらこそよろしくお願いします。