頭部画像診断 TIPS症例6

【頭部】TIPS症例6

【症例】60歳代女性

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両側側脳室三角部にあるのはなに?

両側側脳室三角部に拡散強調像(DWI)で淡い高信号の腫瘤を認めています。

同部は(脳実質と比べると)ADCの信号低下は認めていません。

(コメントを受けて追記)ただし、脳脊髄液と比べると信号低下しており、膿瘍ほど濃度は高くありませんが少なくとも漿液性の嚢胞よりは濃い液貯留を伴っていることがわかります。

同腫瘤はT1WI低信号、T2WI高信号、FLAIRでは淡い高信号で、脳脊髄液と等信号ではない嚢胞であることがわかります。

このような所見を見たときに考えなければならないのが、

脈絡叢嚢胞

という正常変異です。

拡散強調像で高信号を示しますので、知らなければ、脳梗塞や悪性腫瘍などではないかとびっくりしてしまう所見かもしれませんが、正常変異でフォローの必要もありません。

 

診断:脈絡叢嚢胞

 

※今回は両側性ですが、片側性の場合もあります。

関連:

【頭部】TIPS症例6の動画解説

 

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

過去のコメント
  1. 以前、専門外の当直医に脈絡叢嚢胞について、「この脳室内の高信号は腫瘍?」と質問されたことがあります。特に片側性では、知らないと腫瘍のように見えてしまうので気をつけたいです。
    逆に、さっと脈絡叢嚢胞と決めつけないで、しっかり腫瘍との鑑別も忘れないようにしたいと思います。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >以前、専門外の当直医に脈絡叢嚢胞について、「この脳室内の高信号は腫瘍?」と質問されたことがあります。

      これはまさに現場でありそうなことですね。
      DWI高信号に敏感になっていますので、脳実質内ではないけどなんだこれ?となりそうです。
      そこで技師さんが「これは脈絡叢嚢胞といって・・・」と教えてあげられたら安心されますね。

      >脈絡叢嚢胞と決めつけないで、しっかり腫瘍との鑑別も忘れないようにしたいと思います。

      基本は脈絡叢嚢胞でよいですが、片側性であったり、典型例でない場合はフォローが必要ですね。

  2. あまり意識して見てはいませんでしたが、結構頻度は高いのですね。
    これからは意識して確認します。

    1. そうですね。
      DWIで脳実質内だけでなく、脳室内に高信号がないかチェックしてみてください。
      左右対称ならばそういうものかとスルーしているかもしれません。

  3. 片側だとドキッとしてしまいそうですね。
    場所や顔つきを見て悪性のものとしっかり鑑別できるようにします。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >片側だとドキッとしてしまいそうですね。

      おっしゃるように片側性に目立つ症例もありますし、DWIの高信号が片側のみということもあるので注意が必要ですね。

  4. おはようございます!いつもお世話になっております。

    何もわからず「大きな脈絡叢?」と回答してしまいました。
    脈絡叢嚢胞、以外と多いのですね。
    これまで完全に見逃していました。

    脈絡叢つながりで、脈絡叢乳頭腫についても勉強してみました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      DWIで高信号になるので、「脳梗塞?脳実質外なので脳腫瘍?」などと心配になりますが、知っておいたら大丈夫ですね。

      サイズはさまざまですね。

  5. 脈絡叢嚢胞は、脈絡叢上皮の分泌したものが貯留したものなんですね。ということは、成分は脳脊髄液と似たようなものなのでしょうか。

    だから、T1WIやT2WIで脳脊髄液と脈絡叢嚢胞は同じくらいの信号を示すのかなと思いました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >成分は脳脊髄液と似たようなものなのでしょうか。

      おっしゃるとおりです。
      同部に認めるものに脈絡叢嚢胞の他に、脈絡叢黄色肉芽腫というものもあります。

      両者の鑑別点としては、
      原則的に脳脊髄液と同様の信号→脈絡叢嚢胞
      原則的に脳脊髄液と異なる信号→脈絡叢黄色肉芽腫

      となりますが、実際は難しいことが多いようです。

      また脳脊髄液と同様の信号といっても拡散強調像(DWI)で脈絡叢嚢胞は高信号になることがあるので注意ですね。

  6. 知らないので調べてこれかな、という日々が続いています。
    先生の動画解説はとてもスッキリ頭に入ります。
    積み重ねて行きたいです。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >知らないので調べてこれかな、という日々が続いています。

      「調べてこれかな」という作業は非常に重要だと思います。

      >先生の動画解説はとてもスッキリ頭に入ります。
      積み重ねて行きたいです。

      ありがとうございます。
      救急ではないので軽い症例が続いていますが、先は長いのでコツコツいきましょう。

  7. 脈絡叢嚢胞、ずっと気になっていました。
    ありがとうございます。よく見るものなので悪いものではないと思っていましたが、、。
    勉強になります。

    1. アウトプットありがとうございます。

      脈絡叢嚢胞、決してレアではないので救急外来で脳MRIを撮影して、

      「あれ、DWIで高信号があるぞ、でも脳実質内じゃないから多分大丈夫だと思うけど・・・・なんだこれ?」

      というときがそのうち来ます。
      そのときに役立ちます。

  8. これが正常変異とは、見た目のインパクトがありますね。
    初歩的な質問かもしれませんが、DWIで高信号でもADCmapで低信号を示さないのはなぜなのでしょうか。
    DWIとADCMapは写し鏡のようなDWI高信号=ADCmap 低信号、というわけではないのですね。
    ADCmapの意義とはなんなのでしょうか、少し勘所を教えて頂けましたら幸いでrす。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >DWIで高信号でもADCmapで低信号を示さないのはなぜなのでしょうか。

      誤解を与えかねない解説でしたので、修正を加えます。
      脳実質と比較して信号低下は認めていませんが、脳脊髄液と比べると信号低下しています。
      つまり、嚢胞ではありますが、内部の濃度は脳脊髄液よりも濃い液体であるということです。

      仮に脳実質と同じくらいもしくはそれ以上に信号低下をした場合は、膿瘍のような液貯留ということになります。

      >DWIとADCMapは写し鏡のようなDWI高信号=ADCmap 低信号、というわけではないのですね。
      ADCmapの意義とはなんなのでしょうか、少し勘所を教えて頂けましたら幸いでrす。

      DWI高信号=ADCmap 低信号というわけではありません。組み合わせが重要です。

      1,DWI高信号かつADC信号低下→拡散制限があることを示唆。
      2,DWI高信号かつADC高信号→T2 shine throughを示唆。(拡散制限がないのにDWI高信号となるので、これを個人的にはDWI高信号のニセモノと呼んでいます。)

      ※この1のADCの信号低下の程度には幅があるの注意が必要です。

      頭部救急画像診断で作成した動画ですがこちらが参考になります。

      1. ADCで脳脊髄液よりは低下→脳脊髄液よりは拡散制限(ちょっと制限)されている症例だったということですね。

        T2 shine throughで私の疑問も明るく照らされ、見事に解決しました。ありがとうございます!!

        1. >ADCで脳脊髄液よりは低下→脳脊髄液よりは拡散制限(ちょっと制限)されている症例だったということですね。

          おっしゃるとおりです。

          >T2 shine throughで私の疑問も明るく照らされ、見事に解決しました。ありがとうございます!!

          よかったです!