頭部画像診断 TIPS症例3

【頭部】TIPS症例3

【症例】20歳代男性

画像はこちら

側頭骨の錐体部に左右差がありますが、これはなに?

 

まず、DWI/ADCでは有意な所見は認めていません。

次に、T1WI、T2WIを見てみましょう。

左錐体尖部にT1WI、T2WIともに高信号域を示しており、明らかな左右差を認めています。

腫瘍の可能性も考えられましたが、同部位は造影効果ははっきりせず、脂肪抑制で信号が抑制されています。

つまり、同部には(骨髄の)脂肪が含有されていることがわかります。

CTで含気を見てみますと、右は乳突蜂巣の含気を錐体尖部でも認めているのに対して、左側では認めていないことが確認できます。

錐体尖蜂巣の左右差による非対称性錐体尖部骨髄と診断されました。

 

診断:錐体尖蜂巣の左右差による非対称性錐体尖部骨髄

 

※錐体尖部は、

  • 左右非対称:片一方は含気、片一方は骨髄 ←今回これ。
  • 左右対称:ともに含気、ともに骨髄

となっているケースがあります。

左右非対称の場合は、今回の症例のように左右差が目立ってしまうので腫瘍などと認識しないことが重要です。

ほっといて良い・余計な介入はしなくてよいということで、Leave me alone lesionsの一つとして知られています。

関連:錐体尖蜂巣の左右差による非対称性錐体尖部骨髄とは?

【頭部】TIPS症例3の動画解説

 

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

過去のコメント
  1. 真珠腫などの腫瘤性病変にしてはDWIでの高信号や骨融解などがなく、よく分かりませんでした。しかし過去を思い返してみると錐体部の左右差は何回か出会ったような気がします。今まで理解なくスルーしていたんだと反省しました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      真珠腫のDWI高信号も重要ですね。

      >しかし過去を思い返してみると錐体部の左右差は何回か出会ったような気がします。今まで理解なくスルーしていたんだと反省しました。

      その目で見ると結構あります。

      ①両側骨髄を認める場合
      ②両側骨髄を認めない場合
      ③片側のみ骨髄を認める場合

      「ん?」となるのは左右非対称な③ですが、脳実質外ですので、スルーすることも多いかと思います。

  2. 本日もありがとうございました。
    本題とは異なりますが、昨日はIE ver.11で見れなかったのですが、違うPCでも同様でした。(画像の上1/10くらいのみ表示されていました)
    google chromeで見ると(職場・家庭のPC共に)きちんと見れました。お騒がせしましたが当方に関してはPCで見ることができました。

    1. ありがとうございます。

      IEでは見られないのですね・・・。まあPCの場合は、動画の倍速環境含め、google chromeがよいですね。

    2. サイト作成してもらった会社に聞いたところIEを最新バージョンにすると対応しているとのことです。

      よろしくお願いします。

  3. 錐体尖部の左右差は、たまに見かける所見です。この症例は、脂肪抑制および造影まで提示して頂いたので、錐体尖部骨髄と診断しやすかったです。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >錐体尖部の左右差は、たまに見かける所見です。

      ですね。知っているか知らないかがこれも非常に重要な知識になりますね。

  4. あまり普段救急の場では錐体まで見る習慣がないため,見落としていそうです.
    今後,は注意してみようと思います.

    1. アウトプットありがとうございます。

      急性期病変ではありませんが、今後後輩が撮影したMRIをコロコロ見ていて、

      「あれ。先輩この人、T1WIでここの部分に左右差ありますけど、これって脳腫瘍とかですかね?」

      と聞かれる日がくるかもしれません。

      そこで、

      「あ、確かに。脳腫瘍かもしれないね。指摘して、脳外科受診してもらおう。造影MRIを撮影してもらおう。」

      となるのか、

      「ん、なんかアーチファクトじゃね?」

      となるのか、

      「あ、いや、これはね錐体尖部の骨髄による左右差だよ。」

      となるのか、で後輩のまなざしが変わるやつです(*´∀`*)

  5. いつも貴重な症例、解説ありがとうございます。
    コレステリン肉芽種との鑑別はCTでは難しいでしょうか?また、MRIで鑑別する場合、脂肪抑制されるかどうかが決め手になるのでしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >コレステリン肉芽種との鑑別はCTでは難しいでしょうか?

      難しいこともあると思いますが、コレステリン肉芽腫の場合は基本的にもっと明瞭な骨欠損となったり、膨張性変化が見られるのが特徴です。

      >MRIで鑑別する場合、脂肪抑制されるかどうかが決め手になるのでしょうか?

      おっしゃるとおりです。

  6. 錐体尖部蜂巣の左右差であり、正常異型とは認識していましたが、名前がついてるとは知りませんでした(恥)。
    G先生で調べてしまいました^^;
    本当に勉強になります。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >名前がついてるとは知りませんでした(恥)。

      いえ、名前はどっちでもいいと思いますが、覚えやすい名前ですね。

  7. おはようございます、本日もよろしくお願いいたします!

    所見からネットで検索してなんとか答えにたどり着けました。
    コレステリン肉芽種は造影MRIで抑制されていることから除外しました。

    ジジ先生のおっしゃっていた真珠種は国家試験でもよく出るので、ごろ〜先生のまとめページで確認しておきました!

    1. アウトプットありがとうございます。

      >真珠種は国家試験でもよく出るので、ごろ〜先生のまとめページで確認しておきました!

      直に国家試験対策にはなっていないかもしれませんが、周辺知識で少しは勉強になるようでよかったです。

  8. 時間がなくさっと回答してしまったというのを言い訳に、まずとるべき所見を間違えました。
    そして、「ん、なんかアーチファクトじゃね?」の感じでアーチファクトなんて回答してしまいました。。。恥。
    簡単にアーチファクトというのはやめて、謎解きのように所見は丁寧にとらなくてはと反省しました。
    解剖が分からなければ調べて回答します
    自分への戒めをこめてコメント投稿です。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >簡単にアーチファクトというのはやめて、謎解きのように所見は丁寧にとらなくてはと反省しました。

      困ったときの「アーチファクトですかね?」ですね(^_^;)

      私は特にMRIの場合、アーチファクト?と思ったら技師さんに聞くようにしています。
      技師さんの方が詳しいですね。

  9. 頭部の所見の表現は難しいと感じます。これから腹部の様に慣れていこうと思います。

    1. アウトプットありがとうございます。

      そうですね。特にこの箇所は表現に難しいですね(^_^;)

  10. まず、側頭骨の錐体部が分からず。。この辺の解剖はすごーく嫌いです。勘でなんとなくわかりましたが、”なんとなく”で済ますのが気持ち悪い。

    というわけで、解剖の本をいくつか参照してまとめてみました。アウトプットです(^^)(我ながら中々分かりやすくまとめたなと自画自賛してます笑)

    ・側頭骨は鱗部、乳突部、錐体部で構成される。
    ・鱗部は側頭骨の前上方の外側壁を形成する板状の部分で、前方は蝶鱗縫合で蝶形骨に、上方は鱗状縫合で頭頂骨に接する。
    ・乳突部は側頭骨の後方の外側壁を形成し、前方は鱗部に接しており、頭頂乳突縫合で頭頂骨に、後頭乳突縫合で後頭骨に接する。(また、乳突部下部より乳様突起を持ち、その内側には茎状突起を形成する。)
    ・鱗部、乳突部以外の楔状の部分を錐体部と言う。その中でも、前方を蝶形骨大翼に、後方を後頭骨底部に囲まれた部分を錐体尖部と言う。

    ただ、まとめて気づきました。。そもそも画像上で側頭骨、蝶形骨と後頭骨の境目がわからないということに!orz

    。。。

  11. すいません。追加します。
    もし、画像上で錐体部の大体の場所を同定する方法がありましたら、ご教授いただけると幸いです。

    1. まとめていただいてありがとうございます。

      確かに教科書など色々見てみましたが、横断像で明瞭にこれらを分けてくれているものは見つからないですね。

      >画像上で錐体部の大体の場所を同定する方法

      おおよそですが、頚動脈管および破裂孔の背側〜尾側が相当すると考えられますね。

      1. お忙しい中、返信いただき、本当にありがとうございます!

        >>おおよそですが、頚動脈管および破裂孔の背側〜尾側が相当すると考えられますね。

        勉強になります。有り難うございます。先生は網嚢をフェイスブックの”いいね”の形をしているというように表現されていましたが、そんなふうにシンプルに側頭骨もモデル化できれば頭に入りやすくなりそうだなぁと思いました。

        画像診断カフェの画像スライスを見ていても、頭部は解剖が曖昧な部分が多いと改めて感じました。

        2年生の時に解剖でやりましたが、先生に”これが○○だよ”というように教えてもらうことはあっても、”なぜそれが○○だと同定できるのか”までは学ぶことが難しかったです。(解剖の先生を責めるつもりはありません。でも、そういう場面がたくさんあってとても悔しかった思い出があります)

        取り敢えず、先生おすすめの”画像所見から絞り込む! 頭部画像診断やさしくスッキリ教えます”をポチりました(*^^)v

        1. おはようございます。

          >先生は網嚢をフェイスブックの”いいね”の形をしているというように表現されていましたが、そんなふうにシンプルに側頭骨もモデル化できれば頭に入りやすくなりそうだなぁと思いました。

          懐かしいですね。

          確かに側頭骨も色分けして横断像で対応させたいですね。

          頭頸部の臨床画像診断学という書籍など参考にしましたが、やはりこの辺りについては言及されていませんでした。

          >画像診断カフェの画像スライスを見ていても、頭部は解剖が曖昧な部分が多いと改めて感じました。

          そうですね。骨の部分は特にそうですね。
          家に頭蓋骨の模型もあるのですが、これも側頭骨だけでそれ以上細かくはわかりません。

          以前作った顔面骨のツールも、立体像のみにとどまっているのは、
          横断像で細かい解剖がわからないからです。

          http://medicalimagecafe.com/tool/facialbonelateralview.html

          確かになんとかここを横断像にしたいところです。

          >先生おすすめの”画像所見から絞り込む! 頭部画像診断やさしくスッキリ教えます”をポチりました(*^^)v

          所見から絞り込むというスタイルは他にもありますが、これは新しくてわかりやすくてオススメです。

          1. お忙しい中、ありがとうございます。

            >>そうですね。骨の部分は特にそうですね。
            家に頭蓋骨の模型もあるのですが、これも側頭骨だけでそれ以上細かくはわかりません。

            そうなんですか。。

            >>以前作った顔面骨のツールも、立体像のみにとどまっているのは、
            横断像で細かい解剖がわからないからです。
            http://medicalimagecafe.com/tool/facialbonelateralview.html
            確かになんとかここを横断像にしたいところです。

            していただけると確かにありがたいですが、どうぞ無理なさらないでください(^^ゞ
            既にこのアプリは神!ですから。