先に結論:小児の骨折・上腕骨顆上骨折
- 小児の骨は柔らかく骨膜が厚いため、隆起骨折(buckle)・若木骨折・急性塑性変形(bowing)など大人と違う骨折が起こり、X線で分かりにくいので健側と比べます
- 上腕骨顆上骨折は小児の肘の骨折で最も多く、X線で骨折線が見えなくても後方のfat padが見える・前方のfat padが持ち上がる(sail sign)なら関節内骨折を疑います
- 神経障害(正中・橈骨・尺骨神経)と血流障害(コンパートメント症候群)を必ず確認し、整形外科に相談します
- 整復の評価には正面像のBaumann角(正常小児で平均約71°)と側面像のtilting angle(正常小児で平均約47〜51°)を使い、健側と比べます
※お子さんが転んだ後に肘を痛がる・動かさないときは、医療機関を受診してください。
小児の外傷
- 10歳男児 後方へ転倒し左手をついて受傷したときの受傷機転は?→FOOSH(Fall On Out Stretched Hand)
- 小児の骨折はわかりにくい。
- 必ず左右差を比較。
- 骨折は臨床診断。
- 疑えば必ずフォローを。
- 小児の骨は柔らかい。穴あきチーズみたいな骨。骨膜は強い。
- 骨皮質のみ骨折→buckle骨折→Greenstick骨折
- 骨皮質破綻なし。曲がるだけ。→bowing骨折。
- 靭帯は強いので靭帯が切れるくらいなら、骨が折れる。
上腕骨顆上骨折
- 小児の肘の骨折の約60%。
- 5-7歳が発症のピーク。
- 受傷機転の大部分がFOOSH。特に後方に多い。
- 合併症:神経障害(約11%)、コンパートメント症候群、内反肘、骨化性筋炎など。
- Volkmann拘縮:前腕コンパートメント症候群。末梢の拍動よりも末梢の色調に着目する。
- 神経障害のチェック方法:グー、チョキ、パーをしてもらう。グーができれば、正中神経は大丈夫(できなければ、猿手)。パーができれば橈骨神経は大丈夫(できなければ下垂手)。チョキ(指を開いたり閉じたりする動き)ができれば尺骨神経は大丈夫(できなければ、鷲手)。
- 猿手と、下垂手は伸展型に多い。鷲手は屈曲型に多い。メタ解析では、伸展型に伴う神経麻痺は前骨間神経麻痺が最多(34%)、屈曲型では尺骨神経麻痺が91%を占めた。また、内側からのピン刺入は医原性尺骨神経損傷のリスクを高める。
- OKサインをしてもらう。できなければ(潰れてしまう)、前骨間神経麻痺(正中神経)。
- 分類(Gartland分類)1-3型あり。整復の要否は、Baumann角やtilting angleを健側と比べ、転位・変形の程度から判断する(許容する差は文献や施設で異なる)。
- 骨折線がわかりにくいときは、超音波(感度98%、特異度70%)。posterior fat padもしくは、脂肪血関節症をみる。
- 原則整形外科コンサルト。
レントゲン所見
- 関節内血腫ができると脂肪の低吸収(anterior fat pad)が持ち上がってくる。(sail sign)
- posterior fat padは見えたら異常。骨折線が見えずposterior fat padの挙上だけがあった小児45例の前向き研究では、約3週後の再撮影で76%に骨折が確認され、その53%が上腕骨顆上骨折であった。このため、外傷後にposterior fat padだけが見える場合も転位のない骨折として扱うのが妥当とされる。
- 骨折線は見えないこともある。
fat pad sign(sail sign)とは
- 正常では後方のfat padは肘頭窩に隠れて見えない。関節内に血液がたまると前方は帆(sail)のように持ち上がり、後方は見えるようになる。肘90°屈曲の正確な側面像で評価する。
Baumann角とtilting angle(正常値の目安)
- Baumann角:正面像で上腕骨長軸と外側顆の骨端線がなす角。正常小児71例で71.5±6.2°(Shank 2011)。補角で表す流儀もあり、健側と比べる。
- tilting angle:側面像で上腕骨長軸と小頭(顆部)の傾きがなす角。同様の指標lateral capitellohumeral angleは正常小児で50.8±6°(Shank 2011)、日本の健常小児168肘で平均47.1°(27〜63°)(Kiyota 2021)。伸展型骨折では小さくなる。測定誤差を考えると12°以上の差(39°未満または63°超)で異常と判断できる(Shank 2011)。
症例 6歳男児 転倒後の左肘の腫れ、肘が伸ばせない

引用:Radiopaedia(Supracondylar fracture)
左肘の側面像で、上腕骨遠位の骨幹端に骨折線があり、遠位骨片が転位しています。症例報告では前方・後方のfat padの挙上(関節液貯留)も指摘されています。
隆起骨折(バックル骨折)とは
- 長軸方向の圧迫で骨幹端の皮質が膨らむように折れるもの。橈骨遠位に多く、皮質のわずかな膨らみだけのことがある。
成長板骨折(physeal骨折)
- Salter-Harris分類:骨端線損傷は小児の全骨損傷の20%。
- TypeⅤは骨端軟骨板が圧挫された型の損傷であるためX線には写らない。MRIによる診断が必要。
関連記事:上腕骨顆上骨折とは?ガートランド(Gartland)分類とレントゲン画像所見・合併症
参考文献
- Omid R, Choi PD, Skaggs DL. Supracondylar humeral fractures in children. J Bone Joint Surg Am. 2008;90(5):1121-1132. PubMed
- Babal JC, Mehlman CT, Klein G. Nerve injuries associated with pediatric supracondylar humeral fractures: a meta-analysis. J Pediatr Orthop. 2010;30(3):253-263. PubMed
- Rabiner JE, Khine H, Avner JR, et al. Accuracy of point-of-care ultrasonography for diagnosis of elbow fractures in children. Ann Emerg Med. 2013;61(1):9-17. PubMed
- Skaggs DL, Mirzayan R. The posterior fat pad sign in association with occult fracture of the elbow in children. J Bone Joint Surg Am. 1999;81(10):1429-33. PubMed
- Iyer RS, Thapa MM, Khanna PC, et al. Pediatric bone imaging: imaging elbow trauma in children–a review of acute and chronic injuries. AJR Am J Roentgenol. 2012;198(5):1053-68. PubMed
- Shank CF, Wiater BP, Pace JL, et al. The lateral capitellohumeral angle in normal children: mean, variation, and reliability in comparison to Baumann’s angle. J Pediatr Orthop. 2011;31(3):266-71. PubMed
- Kiyota Y, Suzuki T, Inaba N, et al. Normal values and ranges of the lateral capitello-humeral angle in healthy children. J Pediatr Orthop B. 2021;30(4):381-384. PubMed
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