小児の発熱の鑑別診断
小児はPAT(Pediatric assement triage)ぱっとみて判断する。
- appearance(外観):筋緊張、周囲への反応、精神的安定、視線/注視、会話/啼泣
- work of breathing(呼吸状態):喘鳴、努力呼吸、陥没呼吸、鼻翼呼吸
- circulation to skin(皮膚への循環):末梢冷感、蒼白、まだら皮膚
頻度の多い疾患
- 尿路感染
- 肺炎
- 髄膜炎
- 肝炎など
・心筋炎は疑わないと見逃す。
ショックの基準は?バイタルは?
<10歳までは、
70+(2×年齢)mmHg以下はショック!なので70切ったらショック!と覚えておく。
バイタルの正常範囲は、
SIRSの定義(小児)
- 体温異常>38.5℃/ 36℃
- 呼吸数異常>+2SD
- 心拍数異常>+2SD 、説明できない心拍上昇が30分〜4時間続く。
- 白血球数異常 年齢相応から増加/減少
※1たは4を含む2つ以上を満たすとき。
小児のpitfall
・なんとなく元気がなければ、重症かもと思え。
・低体温ならば敗血症を疑え。
・項部硬直は当てにならない。
・嘔吐があれば、尿路感染も疑え。
髄膜炎
・髄膜炎の除外方法:jolt accentuation test(首が振れれば大丈夫。1秒間に1-2回)
・首が固くない髄膜炎はたくさんいる。固ければ髄膜炎。
・項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候は特異度は特に後者2つは高いが、いずれも感度は低い。つまり除外には使えない!!
・3徴:発熱、項部硬直、意識低下だけど3つ揃うのは半分もない。
・痙攣が小児では30%に見られる。
・乳頭から下の点状出血を見たら髄膜炎菌による髄膜炎のことあり
・あやすと余計に泣く(髄膜刺激することになるから)
・髄膜刺激症状は1/3も見られない。なので否定できない。
・血液検査は役に立たない。腰椎穿刺が唯一役に立つ検査。
・血培は必ずとる。血培→腰椎穿刺の順番。
・怖いのは細菌性髄膜炎
Bacterial Meningitis Scor
- CSF G染色で細菌あり
- CSF WBC>1000/μL(覚えておく)
- CSF 蛋白>80mg/dl
- 血算 WBC>10000/μL
- 痙攣
どれもなければ細菌性の可能性はほぼゼロ(0.1%)
・細菌性は結果を待てない。
・原因菌を知っておく。
- 新生児:E.coli、GBS、リステリア
- 1−3ヶ月:肺炎球菌、髄膜炎菌、インフルエンザ桿菌、リステリア
- 18歳まで:肺炎球菌、髄膜炎菌、インフルエンザ桿菌
※ただし、ワクチンがしっかりしたため、肺炎球菌やインフルエンザ桿菌は減っている。
・アシクロビルを考慮(ヘルペス)
抗菌薬の使い方
・meningitis dose(最大量使う→使い続ける)。1時間以内に。CTとるなら、血培→抗菌薬のあとで。
・抗菌薬投与前もしくは直後に…ステロイド(デキサメサゾン)0.15mg/kg 1日4回×2-4日使う。聴力低下予防の目的に。ただし、バンコマイシンの吸収阻害作用あり。死亡率低下、神経予後改善はいまいち。抗菌薬投与後1時間以上経った状態だと投与禁忌となるので注意。
・基本は第3世代セフェム。セフトリアキソン。
・3ヶ月未満にはリステリア対策にアンピシリン。
・肺炎球菌の耐性に備えてバンコマイシン。
・脳外科手術後、VPシャントありの人にはグラム陰性桿菌対策にセフタジジム
小児心筋炎
・この病気を疑うことが大事。
・劇症型が30-40%。急性が40-50%。
・慢性は極めて少ない。
・ウイルス感染が多い(エンテロウイルス、アデノウイルス、パルボB19、HHV6)
劇症型心筋炎
・前駆症状:感冒症状、消化器症状、無症状。
・熱の割に脈が速いのが典型的だけど、頻脈の程度は3割程度。
・数時間から数日で心不全徴候となり、急激に心原性ショックとなる。
・いざとなれば、PCPSを回す。
・バイタルサイン正常の心筋炎あり。
・検査:ECG、UCG(劇症型)、胸部X線、心筋酵素、BNP、biopsyなど。
・若年胸痛のうち心疾患が原因なのは1%のみ。
川崎病
・5日以上続く発熱。治療により5日未満で解熱してもよい。
・両側眼球結膜の充血。
・口唇、口腔所見:口唇の紅潮、苺舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤。
・不定形発疹。(なんでもあり)
・四肢末端の変化:
急性期:手足の硬性浮腫、掌蹠ないし指趾先端の紅斑。
回復期:指先から膜様落屑
・急性期非化膿性頸部リンパ節腫脹(1/2-3/4はなし)
この6項目のうち5項目当てはまれば川崎病。
・冠動脈瘤。