
先に結論:嚢胞性の腎腫瘤は、「嚢胞性の腎細胞癌」「予後のよい腫瘍(MCRNLMPなど)」「悪性度の高い新しい型(FH欠損型など)」「腫瘍でないもの」に分けて考える。Bosniak分類はリスクの目安であり、診断名ではない
| グループ | 代表例 |
|---|---|
| 嚢胞性の腎細胞癌 | 嚢胞性の淡明細胞型腎細胞癌。嚢胞状に増える型と、壊死・出血による偽嚢胞がある |
| 予後のよい嚢胞性腫瘍 | 多房嚢胞性腎腫瘍(MCRNLMP)、淡明細胞乳頭状腎細胞腫瘍 |
| 新しい分類で加わった型・まれな型 | FH欠損型腎細胞癌、管状嚢胞性腎細胞癌、好酸性充実性嚢胞性腎細胞癌(ESC-RCC) |
| 鑑別が難しい腫瘍 | MEST(混合上皮間質腫瘍)・多房性嚢胞性腎腫 |
| 腫瘍でないもの | 出血・感染した嚢胞、腎杯憩室、腎膿瘍 |
なぜ嚢胞に見える腫瘍があるのか
腎臓の腫瘍が嚢胞状に見える理由は、1つではありません。病理の総説は、①もともと嚢胞状に増える構造をもつもの、②壊死した部分が偽嚢胞(pseudocyst)になるもの、③腫瘍の細胞に囲まれて拡張した尿細管が嚢胞に見えるもの、の3つを挙げています。淡明細胞型腎細胞癌では、偽嚢胞は悪性度の高い進行の速い例にみられ、嚢胞状の増殖は悪性度の低いおだやかな例と関連します。後者は、VHL病の患者で多い傾向があります(Pini 2023)。
また、Bosniak分類の改訂案を示した論文は、嚢胞性の腎細胞癌は「診断と治療が過剰になっている可能性が高い」とし、嚢胞性の腫瘤は充実性の腫瘤と比べて良性が多く、悪性でも悪性度が低いと述べています(Silverman 2019)。Bosniak分類そのものは腎嚢胞のBosniak(ボスニアック)分類2019とは?カテゴリーⅠ〜Ⅳ・ⅡFの違いと対応と、非定型腎嚢胞(複雑性腎嚢胞・complicated cyst)のCT・MRI画像とBosniak分類2019にまとめています。この記事では、Bosniak分類の手前にある「何が嚢胞に見えているか」に絞ります。
WHO 2022年の腎腫瘍の分類は、腫瘍のゲノムの知見を取り入れて、分子で定義される型を新たに加えました。好酸性充実性嚢胞性腎細胞癌(ESC-RCC)は、形態で定義された新しい型です(Moch 2022)。組織型とグレードの基本は腎癌総論|組織型とグレード(WHO/ISUP分類・Fuhrman分類)・肉腫様変化・免疫染色で説明しています。
嚢胞性の淡明細胞型腎細胞癌
淡明細胞型腎細胞癌は、腎癌のなかで最も多い型で、充実性にも嚢胞性にもなります(Pini 2023)。嚢胞性の場合、壁の不整や、造影される結節・充実部分があると、悪性を疑う所見になります。MRIの造影T1強調像で、辺縁に造影される結節がみられた例が示されています(Agnello 2020)。
引用元の図 造影される結節を伴う嚢胞(Bosniak Ⅳ)

引用:Agnello F et al. Insights Imaging 2020(Fig. 9)(CC BY)
図:Bosniak Ⅳの嚢胞。造影T1強調の軸位断で、辺縁に造影される結節(矢印)がみられます。
予後のよい嚢胞性腫瘍
多房嚢胞性腎腫瘍(MCRNLMP)
多房嚢胞性腎腫瘍(multilocular cystic renal neoplasm of low malignant potential:MCRNLMP)は、経過のおだやかな嚢胞性腫瘍です。多くは他の病気の検査で偶然見つかり、腎細胞癌全体の1.5〜4%とされます。Bosniak分類ではカテゴリーⅢに分類され、CT、MRI、造影超音波で診断を試みます。管理は、経過観察から手術までさまざまで、可能なら腎温存手術を優先します(Pitra 2022)。MRIは、CTと比べて内部の隔壁の構造がよく分かる点が利点です。
引用元の図 MCRNLMPのCTとMRI

引用:Pitra T et al. Cancers (Basel) 2022(Figure 1)(CC BY)
図:同じ病変のCT(A、C)とMRI(B、D)の比較。MRIでは内部の隔壁が、CTより正確にみえます。E、Fは術中超音波です。
淡明細胞乳頭状腎細胞腫瘍
淡明細胞乳頭状腎細胞腫瘍(clear cell papillary renal cell tumor)も、嚢胞性になりうる腫瘍です。MCRNLMPとの鑑別は特に難しく、肉眼的・顕微鏡的に病理を丁寧に調べる必要があるとされます(Pini 2023)。画像だけで両者を区別するのは困難と考えてください。
注意したい嚢胞性腫瘍
FH欠損型腎細胞癌
フマル酸ヒドラターゼ(FH)欠損型腎細胞癌は、2022年のWHO分類で定義された、まれで悪性度の高い型です。11人(12病変)の報告では、造影CTで、嚢胞優位が5、充実優位が4、純粋な充実性が3でした。診断時に27%で遠隔転移があり、手術後の経過を追えた9人のうち3人(33%)が2年以内に再発しました。MRIでは、嚢胞成分がT1・T2強調像のどちらでも高信号で、出血を示唆します。充実部分は拡散制限があり、淡明細胞型より造影効果が弱い傾向がありました(Ebisu 2026)。診断は免疫染色によるため、嚢胞と充実部分が混在し、出血した嚢胞を含む腫瘤では、この腫瘍を鑑別に挙げて病理診断につなげます。
引用元の図 FH欠損型腎細胞癌のMRI

引用:Nikolovski I et al. Cancer Imaging 2021(Fig. 2)(CC BY)
図:46歳女性のFH欠損型腎細胞癌。MRIのT2強調軸位断(a)と造影T1強調軸位断(b)で、左腎に大きな嚢胞成分を含む腫瘤がみられます。
管状嚢胞性腎細胞癌
管状嚢胞性腎細胞癌(tubulocystic RCC)は、2016年のWHO分類で独立した型となったまれな腫瘍で、男性に多く、多房性の嚢胞状の病変としてみられ、Bosniak分類のⅡ〜Ⅳに分布します。画像では、多房性嚢胞性の腎細胞癌、成人の嚢胞性腎腫、MEST(混合上皮間質腫瘍)との鑑別が困難とされます(Honda 2018)。
好酸性充実性嚢胞性腎細胞癌(ESC-RCC)
ESC-RCCは、2022年のWHO分類で新たに加わった型です(Moch 2022)。7人の画像を検討した報告では、境界明瞭な嚢胞・充実性の病変で、石灰化・出血・脂肪を認めず、充実部分の造影効果が全相で隣接する腎皮質より弱いときに考えるとされています(Ling 2025)。例数が少ないため、今後の検討が必要です。
鑑別が難しい腫瘍:MESTと多房性嚢胞性腎腫
MEST(mixed epithelial and stromal tumor)は、画像では多房性嚢胞性腎腫(multilocular cystic nephroma)や嚢胞性腎細胞癌と区別できないことがあります。術前画像のある5人(全員が女性、平均55.6歳)では、すべて、境界明瞭な多房性の嚢胞性腫瘤で、結節状の部分を伴いました。Bosniak分類はⅢが3人、Ⅳが2人でした。2人では腫瘍が腎盂内に突出していましたが、浸潤はありませんでした(Sahni 2010)。例数の少ない報告ですが、女性で腎盂方向に突出する多房性の嚢胞性腫瘤は、MESTを鑑別に挙げる手がかりになります。
腫瘍でないもの
| 病変 | 画像のヒント |
|---|---|
| 出血性嚢胞・蛋白を含む嚢胞 | 単純CTで高吸収、MRIでT1強調像が高信号。造影前後で変化がなく、造影される結節や壁がないことを確認する |
| 感染した嚢胞・腎膿瘍 | 嚢胞状の病変で、辺縁に厚く造影される壁。発熱や炎症反応などの臨床像と合わせる。抗菌薬治療で縮小することがある(Agnello 2020) |
| 腎杯憩室 | 腎杯から突出する嚢胞状の腔で、細い頸部で集合系とつながる。排泄相で造影剤が入るかを確認する |
引用元の図 腎膿瘍

引用:Agnello F et al. Insights Imaging 2020(Fig. 10)(CC BY)
図:腎膿瘍。a:造影CTで、辺縁に厚く造影される壁を伴う嚢胞状の病変(矢印)がみられます。b:抗菌薬治療の3か月後には、病変が縮小しています。
感染の可能性は、嚢胞性病変の評価で見落とさないようにします。急性腎盂腎炎や腎膿瘍の画像は急性腎盂腎炎・AFBN(急性巣状細菌性腎炎)・腎膿瘍の違いとCT画像所見で説明しています。腎嚢胞の一般的な説明は腎嚢胞とは?原因・症状と心配いらない単純性腎嚢胞も参考になります。
鑑別の手がかり
| 手がかり | 考える腫瘍 |
|---|---|
| 多房性で薄い隔壁をもち、偶然に見つかった | MCRNLMP(Pitra 2022) |
| 男性で、多房性の小さな嚢胞の集まり | 管状嚢胞性腎細胞癌(Honda 2018) |
| 嚢胞と充実部分が混在し、出血を示唆する高信号の嚢胞を含む | FH欠損型腎細胞癌(Ebisu 2026) |
| 境界明瞭な嚢胞・充実性の病変で、石灰化・出血・脂肪がない | ESC-RCC(Ling 2025) |
| 女性で、腎盂方向に突出する多房性嚢胞 | MEST(Sahni 2010) |
ここに挙げた所見は、あくまで鑑別の手がかりです。いずれも少数例の報告が中心で、画像だけで確定することは難しく、病理診断や専門医による評価が必要になります。
よくある疑問(Q&A)
Q. Bosniak分類ⅢやⅣは、癌という意味ですか?
A. Bosniak分類は、悪性の可能性をカテゴリーで示す指標で、診断名ではありません。Bosniak Ⅲでも、MCRNLMPのように経過のおだやかな腫瘍が含まれます(Pitra 2022)。方針は泌尿器科で決めます。
Q. 画像で、良性と悪性を見分けられますか?
A. 難しい場合があります。MESTは嚢胞性腎細胞癌と区別できないことがあり(Sahni 2010)、管状嚢胞性腎細胞癌も、鑑別が困難とされています(Honda 2018)。
Q. MCRNLMPと診断されたら手術が必要ですか?
A. 管理は、経過観察から手術までさまざまです。手術をする場合は、可能なら腎温存手術が優先されます(Pitra 2022)。担当の泌尿器科医と相談してください。
Q. 腎臓の嚢胞を指摘されました。受診の目安は?
A. 多くの腎嚢胞は経過観察でよいものですが、血尿、わき腹の痛み、発熱があるときは、早めに受診してください。気になる症状があれば、医療機関に相談しましょう。
あわせて読みたい:腎嚢胞のBosniak(ボスニアック)分類2019とは?
参考文献
- Moch H, Amin MB, Berney DM, et al. The 2022 World Health Organization Classification of Tumours of the Urinary System and Male Genital Organs-Part A: Renal, Penile, and Testicular Tumours. Eur Urol. 2022;82(5):458-468. PubMed
- Silverman SG, Pedrosa I, Ellis JH, et al. Bosniak Classification of Cystic Renal Masses, Version 2019: An Update Proposal and Needs Assessment. Radiology. 2019;292(2):475-488. PubMed
- Pini GM, Lucianò R, Colecchia M. Cystic Clear Cell Renal Cell Carcinoma: A Morphological and Molecular Reappraisal. Cancers (Basel). 2023;15(13):3352. PubMed
- Pitra T, Pivovarcikova K, Alaghehbandan R, et al. A Comprehensive Commentary on the Multilocular Cystic Renal Neoplasm of Low Malignant Potential: A Urologist’s Perspective. Cancers (Basel). 2022;14(3):831. PubMed
- Honda Y, Nakamura Y, Goto K, et al. Tubulocystic renal cell carcinoma: a review of literature focused on radiological findings for differential diagnosis. Abdom Radiol (NY). 2018;43(7):1540-1545. PubMed
- Ebisu N, Ueno Y, Murakami T, et al. Imaging findings in fumarate hydratase-deficient renal cell carcinoma: a case series of 11 patients. Abdom Radiol (NY). 2026;51(7):3515-3525. PubMed
- Ling C, Li J, Tan R, et al. Imaging features of eosinophilic solid and cystic renal cell carcinoma. BMC Cancer. 2025;25(1):1596. PubMed
- Sahni VA, Mortele KJ, Glickman J, et al. Mixed epithelial and stromal tumour of the kidney: imaging features. BJU Int. 2010;105(7):932-939. PubMed
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