CTガイド下肺生検 合併症の頻度と検査後の注意

健診のCTで肺に影が見つかり、「CTを見ながら針を刺して調べましょう」と言われました。肺に針を刺して大丈夫なのでしょうか?どんな合併症があるのか知りたいです。
CTガイド下肺生検は、肺がんかどうかを確かめるのに役立つ検査ですが、一番多い合併症の気胸は、報告によって差はあるものの5人に1人前後に起こります。多くは軽く済みますが、ドレーン(管)が必要になる人もいます。頻度と危険因子、まれでも重い合併症、検査後の過ごし方を整理します。

先に結論:合併症で多いのは気胸と肺出血。まれに重い空気塞栓があり、結果が診断に役立つかとのてんびんで考える

合併症 目安(研究の値)
気胸(肺がしぼむ) メタ解析で25.9%、胸腔ドレーン挿入は6.9%(23,104人)。米国の大規模データでは気胸15.0%、胸腔ドレーン6.6%
肺出血・喀血(血痰) 画像で出血が見えるのは約3割(1,090件の研究)、血を吐く(喀血)は3〜5%程度の報告。輸血を要する大出血はまれ
空気塞栓 報告された発生率は0.06〜4.80%。まれだが意識障害など重い症状が出ることがある
針の通り道への播種 まれとされる
受ける人の注意 検査前の薬は主治医・検査施設の指示に従う。検査後に息苦しさ・胸の痛み・血痰が強いときは連絡する

CTガイド下肺生検とは

CTガイド下肺生検(経皮的針生検)は、CTで肺の病変と針の位置を確認しながら、皮膚の上から細い針を刺して病変の一部を採る検査です。気管支鏡では届きにくい、肺の外側にある小さな結節や腫瘤を調べるときに使われます。採った組織を顕微鏡で調べ、肺がんなのか、炎症なのか、転移なのかを診断します。

肺がんのCTでの見え方は肺がんのCT画像|初期の見え方と良性結節との違い、偶然見つかった結節をどのくらいの大きさ・間隔で追うかはFleischnerガイドライン2017で解説しています。生検は、画像だけでは判断できないときや、治療方針を決めるために組織が必要なときに検討されます。

診断の役に立つ割合

20mm以下の小さな肺結節に対するCTガイド下生検を25研究・2,922件でまとめたメタ解析では、技術的な成功率は94%、診断の正確さは90%でした(Liu 2020)。小さな結節でも診断に役立つ検査ですが、その一方で気胸は19%、血痰は12%に見られており、研究ごとのばらつきが大きいことも報告されています(Liu 2020)。

検査の流れ

施設によって細かい手順は異なりますが、一般的な流れは次のとおりです。

段階 内容
検査前 説明と同意、血液検査、抗血栓薬(血をさらさらにする薬)などの確認。薬を休むかどうかは、主治医・検査施設の指示に従います
検査中 CTで病変の位置を確認し、体位(仰向け・うつ伏せ・横向き)を決めます。局所麻酔をして針を進め、CTで位置を確かめながら組織を採ります
検査後 胸部X線やCTで気胸や出血の有無を確認し、一定時間は安静にします。入院か日帰りかは施設や状態によります

検査中は、息を止めるタイミングなどを指示されます。動いたり深呼吸したりすると針の位置がずれるため、指示に従うことが大切です。

気胸:最も多い合併症

気胸は、針が肺の表面(胸膜)を通るときに空気が漏れて、肺がしぼむ状態です。気胸そのものの画像診断やディープサルカスサインは気胸の画像診断(レントゲン・CT)で詳しく説明しています。

どのくらいの人に起こるか

研究 対象 気胸 胸腔ドレーン
Huo 2020(メタ解析) 36論文・23,104人 25.9% 6.9%
Wiener 2011(米国4州のデータ) 肺結節の針生検15,865人 15.0% 6.6%
Yoon 2019(韓国8施設) 10,568件 21.7% 3.0%

集計の方法や対象で値は変わりますが、気胸は2〜3割弱、胸腔ドレーン(胸に管を入れて空気を抜く処置)が必要になるのは3〜7%程度と読めます。気胸が起きても、少量なら経過をみるだけで自然に治ることが多く、すべてがドレーンの対象になるわけではありません。

CTで観察するとX線透視を使った場合より気胸が多く見つかる傾向がありましたが、胸腔ドレーンが必要になる割合には差がありませんでした(Yoon 2019)。

全体の合併症をまとめたメタ解析では、組織を採る生検(コア生検)で何らかの合併症が38.8%、そのうち重い合併症(major complication)は5.7%でした(Heerink 2017)。軽い合併症は多いものの、重い合併症は少ないと結論されています。

気胸が起きやすい条件(危険因子)

Huo 2020のメタ解析では、次のような条件で気胸が増えると報告されています(OR=オッズ比。1より大きいほど起こりやすい)。

分類 危険因子(OR)
患者・病変 肺気腫(3.33)、病変が4cm未満(2.09)、胸膜に接していない病変(1.73)、病変の深さ3cm以上(2.38)
手技 葉間裂を通る(3.75)、ブラ(肺の袋)を通る(6.13)、胸膜を複数回刺す(2.43)、非同軸で複数回採取(1.99)、太い針(1.55)
体位 生検する側の肺を下にした横向きで少なく、上にした横向きで増える(OR 2.28〜3.20)

また、米国の大規模データでは、60〜69歳の人、喫煙者、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の人で合併症の危険が高いことが示されています(Wiener 2011)。肺気腫やCOPDがあると肺が傷みやすく、空気が漏れやすいと考えられます。

気胸の予防と、起きたとき

気胸を減らす工夫として、体位の調整(生検した側を下にする)、針の細さの選択、葉間裂やブラを避けた経路の選択、胸膜を刺す回数を減らすことなどが、危険因子の裏返しとして考えられます(Huo 2020)。この点は後述の症例ページにも、生検した側を下にして寝かせる施設の方針が紹介されています。

気胸の程度が強いときや症状があるときは、胸腔ドレーンで空気を抜きます。検査後の胸部X線や、息苦しさ・胸の痛みの有無を見ながら判断します。

症例 65歳男性 生検後の気胸

CTガイド下肺生検後の気胸 胸部X線
引用:Radiopaedia(Post lung biopsy pneumothorax, Craig Hacking)

症例ページでは、CTガイド下肺生検後の気胸のX線写真として紹介されています。気胸は肺生検の比較的よくある合併症で、緊張性気胸(空気がたまって胸の中の圧力が高まる状態)はまれとされています。この患者さんは症状があってX線が撮られており、生検した側を下にして休ませると気胸が起きにくくなるとされますが、この患者さんは痛みのため左側を上にして休んでいた、と記載されています。

肺出血・喀血

針が肺の血管を傷つけると、病変の周りに出血が起こります。多くは少量で、CTで病変の周りがすりガラス状に濃く見える程度です。

研究 内容
Zhu 2020(1,090件) 肺出血31.38%(うち高度な出血6.97%)、喀血3.03%
Yoon 2019(10,568件) 喀血5.2%。CTガイドはX線透視より喀血が少なかった
Wiener 2011(15,865人) 出血性の合併症は1.0%。そのうち17.8%で輸血が必要

数字の違いは、何を「出血」と数えるかの定義や、画像で見える少量の出血まで含めるかによります。画像で見える出血は比較的よくあるものの、症状として血を吐く人は数%、輸血が必要な大出血はまれという整理になります。

出血が起きやすい条件として、下葉の病変、すりガラス成分を含む(subsolid)病変、小さな病変、深い病変、肺転移、肺気腫、主肺動脈が太い(肺動脈の拡大)ことが挙げられています。喀血には、高血圧の既往と、画像上の肺出血そのものが関係していました(Zhu 2020)。胸の中に血がたまる血胸については血胸とは?読み方・原因と胸部CT画像所見も参考になります。

血痰が出ることは珍しくありませんが、量が多い、止まらない、息苦しい場合は、すぐに医療機関へ連絡してください。

空気塞栓:まれだが重い合併症

空気塞栓は、針が肺の静脈などに入って空気が血管内に入り、全身に流れる合併症です。脳や心臓の血管に詰まると、意識障害や心停止につながることがあります。

システマティックレビュー(154例)では、報告された発生率は0.06〜4.80%と幅があり、22.73%は無症状でした。症状のうち多かったのは意識がない・反応がない状態(29.87%)で、空気が見つかった場所は左心室(44.81%)が最多でした。そして67.53%が後遺症なく回復していました(Zhang 2023)。

空気塞栓の危険因子として、すりガラス成分を含む病変(OR 3.78)、下葉の病変(OR 1.85)、気胸(OR 2.16)、出血(OR 3.20)、左心房より高い位置にある病変(OR 4.35)が挙げられています(Zhang 2023)。症状が出たときの対応は、検査を行う施設の手順に従って、その場で行われます。

針の通り道への播種

播種(はしゅ)は、生検の針の通り道に沿ってがん細胞が広がることです。生検全般についてのレビューでは、まれな合併症で、重大な結果になり得るため見過ごせないが、実際に起こる可能性は現実的に把握しておくべきだとされています(Robertson 2011)。検査をするかどうかは、診断で得られる情報と、こうした危険を比べて判断します。

受ける人向け:検査前後の注意

  • 検査前:抗血栓薬など、検査前に控える薬があるかどうかは、主治医・検査施設の指示に従ってください。自己判断で中止・継続しないでください。
  • 喫煙・肺気腫・COPD:合併症の危険が高くなる要因です(Wiener 2011、Huo 2020)。持病や服薬は、事前に正直に伝えてください。
  • 検査中:息止めや体位の指示に従います。咳が出そうなときや、胸の痛み・息苦しさ・めまいがあれば、我慢せずその場で伝えてください。
  • 検査後:安静の時間や入院の要否は施設で決まっています。帰宅後に、息苦しさが強くなる、胸の痛みが増す、血痰が続く、意識がぼんやりするといった症状があれば、すぐに連絡・受診してください。
  • 気になる症状があれば、医療機関に相談してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. 気胸になったら、管を入れるのですか?
A. 気胸の起きた人のうち、胸腔ドレーンが必要になるのは3〜7%程度の報告です(Yoon 2019、Wiener 2011、Huo 2020)。少量なら経過観察で済むこともあり、症状と画像で判断されます。

Q. 肺生検で肺がんが広がりませんか?
A. 針の通り道へのがん細胞の播種はまれと報告されています(Robertson 2011)。心配な点は、検査前に説明を受けた医師に確認してください。

Q. 小さな結節でも生検で診断できますか?
A. 20mm以下の結節でも診断の正確さは90%とされます。ただし気胸19%、血痰12%と合併症も無視できず、病変の位置や大きさで手技の難しさが変わります(Liu 2020)。結節の大きさに応じた経過観察の方法はFleischnerガイドライン2017が参考になります。

Q. 生検を断って経過をみることもできますか?
A. 結節の性状によっては、生検をせずに画像で経過を追う方針もあります。メリットと危険を主治医とよく話し合って決めてください。

参考文献

  1. Heerink WJ, de Bock GH, de Jonge GJ, et al. Complication rates of CT-guided transthoracic lung biopsy: meta-analysis. Eur Radiol. 2017;27(1):138-148. PubMed
  2. Huo YR, Chan MV, Habib AR, et al. Pneumothorax rates in CT-Guided lung biopsies: a comprehensive systematic review and meta-analysis of risk factors. Br J Radiol. 2020;93(1108):20190866. PubMed
  3. Wiener RS, Schwartz LM, Woloshin S, et al. Population-based risk for complications after transthoracic needle lung biopsy of a pulmonary nodule: an analysis of discharge records. Ann Intern Med. 2011;155(3):137-144. PubMed
  4. Yoon SH, Park CM, Lee KH, et al. Analysis of Complications of Percutaneous Transthoracic Needle Biopsy Using CT-Guidance Modalities In a Multicenter Cohort of 10568 Biopsies. Korean J Radiol. 2019;20(2):323-331. PubMed
  5. Zhu J, Qu Y, Wang X, et al. Risk factors associated with pulmonary hemorrhage and hemoptysis following percutaneous CT-guided transthoracic lung core needle biopsy: a retrospective study of 1,090 cases. Quant Imaging Med Surg. 2020;10(5):1008-1020. PubMed
  6. Zhang H, Wang S, Zhong F, et al. Risk factors for air embolism following computed tomography-guided percutaneous transthoracic needle biopsy: a systematic review and meta-analysis. Diagn Interv Radiol. 2023;29(3):478-491. PubMed
  7. Robertson EG, Baxter G. Tumour seeding following percutaneous needle biopsy: the real story! Clin Radiol. 2011;66(11):1007-1014. PubMed
  8. Liu GS, Wang SQ, Liu HL, et al. Computed Tomography-Guided Biopsy for Small (≤20 mm) Lung Nodules: A Meta-Analysis. J Comput Assist Tomogr. 2020;44(6):841-846. PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →