孤立性肺野結節(solitary pulmonary nodule:SPN)
SPN(solitary pulmonary nodule)とは?
1, 最大径30mm以下
2, 肺実質に完全に取り囲まれている。
3, リンパ節腫大、胸水、無気肺などはない。
SPNの大きさと悪性度
・3cm以上の結節はまず間違いなく悪性。2cm以上とすることも。
SPNの位置と悪性度
・右肺:左肺=1.5:1
・上葉:中下葉=7:3 で悪性。
つまり右上葉にSPNがあるほど悪性の可能性が高い。
喫煙と悪性度
・フィルター付き低タールタバコを吸う人は末梢型の肺癌が多い(odds ratio 1.76)
まず内部の性状をチェックしましょう。具体的には、
・脂肪濃度域の有無
・石灰化の有無およびそのパターン
・含気領域:空洞、気管支/細気管支透亮像、すりガラス濃度領域
・造影剤増強効果の有無
です。
そして同時に、境界および辺縁性状をチェックしてください。
SPNの石灰化
・断面積の10%以上→良性。
・肺癌の13%は石灰化を有する。
・骨肉腫や軟骨肉腫などの肺転移では、石灰化を認めることがある。
SPNの脂肪
▶過誤腫:
・50%に組織で脂肪、HRCTでは30%。
・30%にポップコーン状石灰化
・脂肪の評価は5mmでは分かりにくいので1mmスライスで評価する。CTではなかなか検出は厳しいが、見つかればほぼ確実に過誤腫と診断できる。
・MRIではChemical shift imageを利用。
・脂肪腫、脂肪肉腫、RCCの転移だと脂肪を含むことがある。
SPNの空洞
・15%の肺癌は空洞を有する。空洞を有するLKは通常3cm以上。
・空洞壁の厚さ:16mm以上ならば悪性、4mm以下ならば良性が多い。が、扁平上皮癌でも壁の薄いことがあるので注意。
Airbronchogram
・悪性SPN 30% >良性SPN 6% : 腺癌や扁平上皮癌
▶透亮像は2種類ある。
・管状(主に気管支透亮像)
・嚢胞状(主に空洞)
いずれも内部に多数認められると悪性である頻度が高く、特に3個以上透亮像が存在する場合は原発性肺癌(置換性発育が多い→肺腺癌)のことが多い。ただし、限局性器質化肺炎、悪性リンパ腫でもしばしば観察される
・気管支/細気管支透亮像は分化度が高い腺癌に特徴的。
結節周囲の変化
・胸膜陥入像は、結節が周囲組織を収縮させることにより、胸膜の腫瘤方向への偏位の結果起こる。
・肺静脈が腫瘤の中心部に入り込み、周囲から気管支と動脈が収束→肺腺癌に多い。
・気管支が腫瘤の中心部に入り込み、腫瘤の辺縁が肺静脈で境界→炎症性腫瘤に多い。
Bubble like lucency(たくさんの穴がある構造)
・lepidic predominantの肺癌の55%
SPNの造影剤増強効果
・15HU以上ののCT値の上昇を悪性とすると、感度98%、特異度58%、正確度77%
・染まらなければ98%の確率で良性病変である。ただし、癌でも広範な壊死や粘液産生性のために増強効果が乏しいことがある。
・良性(硬化性血管腫、炎症性結節など)でも染まることがある。
境界と辺縁って違う?
・境界:鉛筆を持っていると仮定して、病巣を周囲正常肺実質とはっきりと”線引き”できるか否か。
・辺縁:辺縁性状の形状。
境界と辺縁からの鑑別
・境界明瞭、辺縁整→良性結節・腫瘤の可能性
・境界明瞭、辺縁分葉状→圧排増殖型の悪性腫瘍
・境界不明瞭、辺縁棘状→浸潤増殖型の悪性腫瘍
・辺縁が分葉状・凹凸なものは、扁平上皮癌、低分化型腺癌、大細胞神経内分泌癌や小細胞癌など、喫煙者に多く見られる肺癌が疑われる。
・辺縁が棘状(spicula)なものは、肺癌によく見られる所見である。末梢発生の扁平上皮癌や肺気腫を合併している扁平上皮癌にも認められることあり。
GGOの大きさ、形と悪性度の関係は?
・GGOとはいえ、8mm以上、分葉状では悪性の可能性が増大するので要注意せよ。
・GGOの割合が小さい結節(=充実部の割合が多い結節)ほど悪性の可能性増大。
・中心部の濃い部位(充実部)は何を反映しているのか?→線維化を反映している。
線維化が癌発生の前後いつできるかは、両方の意見がありますが、癌自体が線維化をして縮んで行きます。つまり、成長しながら癌は縮んで行くのです。
そして、その中心部の線維化巣が5mm以下ならば予後良好と言われます。
散布巣(衛星病変Sattelite nodule、娘結節)を見たら
・経気道感染症である良性を強く疑わせる所見である。
・が、稀に肺癌(同葉内肺内転移)でも認められるので注意が必要。肺内転移。
PETによる質的診断
・SUV >2.5 でlikelihood ratio 7.11→2.5以上を悪性と考える。
・ただし、器質化肺炎やNTMなどでも2.5以上をこることがある。
PETが偽陰性となる疾患
・1cm以下の結節。
・カルチノイド
・いわゆるBAC(repidic patternを呈する肺腺癌)
SPNの増殖スピード
・倍加速度 悪性は30-200(490)日。それ以外は良性。30日未満は炎症性病変。490日以上は肺良性腫瘍。
・倍加速度とは径が26%増大=2倍の体積のこと。長さが2倍になるわけではない。
・2 year ruleとは2年間胸部レントゲン上変化なければ良性とするルールだが、9/26で悪性だったという報告もあり微妙。なので、GGOについては適応できないとせよ。2年では足りない。また、増殖速度が遅い、粘液産生性腺癌(旧 肺胞上皮癌)、定型的カルチノイド、粘液癌などがある。
肺領域について
新たな職場の年配読影医は、肺内リンパ節という診断名を使いたがらず
ガンで無さそうな結節は、Granuloma疑い、と記載するように指示されています。
前職場でご一緒の呼吸器外科の先生は、肺内リンパ節疑いを頻繁に使っていました。
先生のサイト情報を再度確認しても、肺内リンパ節を使いたい機会は結構あります。
当院は、主に検診機関で、生検結果が判明する事もあまりないため、上司説得も困難で困っています。
頻度の多い領域の画像レポートをなんとか、中高年者も再教育していく方針とかはできないでしょうかね。
(愚痴のようで失礼します)
コメントありがとうございます。
肺内リンパ節が疑わしい結節はかなりありますが、実際はもしかしたらGranulomaも紛れているかもしれませんので・・・・・。
>頻度の多い領域の画像レポートをなんとか、中高年者も再教育していく方針とかはできないでしょうかね。
(愚痴のようで失礼します)
所見の書き方の癖は皆さんあると思いますが、若い方なら指摘できても年配の方ですと指摘しにくいことはありますよね。
その先生と飲み会するしかないですね(違)
追記
改めていただいたコメントを読み返してみますと、年配医師が何でもかんでもGranulomaと書いているのを見るのがやりきれないというわけではなく、先生に肺内リンパ節と書かずにGranulomaと書くよう言われているわけですね。。。
そこは断固、肺内リンパ節疑いと書き続けるか、やはりその先生と飲み会するしかないですね(違)