先に結論:脳血流シンチ(脳血流SPECT)でわかること
- 脳血流シンチは、脳のどこで血流が低下しているかを見る検査で、主に脳血管の狭窄・閉塞(手術適応の判断)と認知症の種類の推定に使われます。薬は123I-IMP・99mTc-ECD・99mTc-HMPAOの3種類があり、それぞれ集まり方に癖があります
- 脳血管障害では、安静時の血流とアセタゾラミドで血管を広げたときの血流の増え方(脳循環予備能)を比べ、両方とも低下していると脳梗塞のリスクが高く、バイパス術などを検討します
- 認知症では、アルツハイマー型(後部帯状回・楔前部・頭頂側頭葉の低下)、レビー小体型(後頭葉の低下)、前頭側頭型(前頭葉・側頭葉前部の低下)などのパターンで鑑別を助けます
- 認知症の読影では、まず後方(側頭・頭頂・後頭)の血流低下か、前方(前頭)の血流低下かを見ます。後方型を示す代表的な疾患はアルツハイマー病・レビー小体型認知症・CJDです。横断像で読んでから3D-SSP・eZISなどの統計画像で答え合わせをし、低下が疑わしい所は冠状断・矢状断でも確かめます
- アセタゾラミド負荷では、血流の増え方が小さい(脳循環予備能の低下)だけでなく、負荷でかえって血流が下がる(盗血現象)例もあり、脳卒中リスクが高い群とされます。頸動脈内膜剥離術(CEA)後の過灌流は、術前に予備能が低下している例で起こりやすくなります
脳血流シンチグラフィ
- 主に脳血管障害、認知症で撮影される。
- 脳血管障害では手術適応の有無に重要。予備能を見るためにアセタゾラミド(ダイアモックス®)を負荷することがある。
- 認知症では、アルツハイマー病、DLB、認知症を伴うパーキンソン病、前頭側頭変性症などを分布から鑑別する目的で撮影される。
脳血流シンチグラフィの薬剤
- 脳血流シンチグラフィを描出できる薬剤には、123I-IMP、99mTc-HMPAO、99mTc-ECDの3種類がある。
- 薬剤により脳内に留まる仕組みが異なるため、集積分布に差異がある。3種類とも、15O-水PETの血流分布とは橋・中脳・視床・被殻・海馬傍回・後部帯状回・側頭葉・後頭葉などで差がみられた(Ito 2006)。
- アルツハイマー病の比較では、99mTc-ECDは99mTc-HMPAOより後頭葉(楔部)・楔前部・側頭葉外側で相対的に高く、99mTc-HMPAOは海馬で高かった(Koulibaly 2003)。そのため、正常データベースは薬剤ごとに用意する必要がある。
- また、画像のコントラストは123I-IMPが最もよく、99mTc-ECD、99mTc-HMPAOの順であった(Tsuchida 1994)。
- 99mTc-HMPAO、99mTc-ECDは注射をした後すぐに脳に分布し、数時間ほぼ保たれるため、緊急で撮影したり、静止できない人の場合は先に注射をして、鎮静剤をかけた後で撮影することも可能。
- 一方、123I-IMPは脳に分布するまでに時間がかかり、その後も再分布するため、撮影のタイミングに注意が必要。
- 99mTc-ECD・99mTc-HMPAOは高血流域を過小評価しやすい。健常者のアセタゾラミド負荷では血流増加率がIMP 30.8%、ECD 14.3%、HMPAO 8.7%で、Tc製剤では脳循環予備能が低めに出ると報告されている(Makino 1996)。
IMP・ECD・HMPAOの違い(比較表)
| 123I-IMP | 99mTc-ECD | 99mTc-HMPAO | |
|---|---|---|---|
| 画像のコントラスト(Tsuchida 1994) | 最もよい | 中間 | IMP・ECDより低い |
| 高血流域の評価・負荷時の増加率(Makino 1996) | 増加をとらえやすい | 過小評価しやすい | 過小評価しやすい(ECDより強い) |
| 亜急性期梗塞のluxury perfusion | 集積が低下して見える(Tsuchida 1994) | ||
| 集積の傾向(Koulibaly 2003) | 後頭葉・楔前部で相対的に高い | 海馬で相対的に高い | |
| 投与と撮影 | 分布に時間がかかり再分布する | 投与後すぐ分布しほぼ保たれるため、先に注射して後から撮影できる | |
脳血管障害における脳血流シンチ
脳の灌流圧の低下に伴う脳虚血の病態を捉えることが目的。

動脈圧が低下する病態:脳梗塞、主幹動脈狭窄〜閉塞、脳動静脈奇形周囲、くも膜下出血(血管攣縮期)など
頭蓋内圧が亢進する病態:脳出血、脳腫瘍、脳膿瘍、閉塞性水頭症、くも膜下出血など
血行学的リスクの評価
脳循環予備能の評価は安静時脳血流量測定と脳血管拡張負荷による脳血流量測定の2回の計測で行う。
PETによる評価
Powersらの15O-PETによる病型の分類:安静時脳血流が低下、かつ脳血液量・脳平均循環時間・脳酸素摂取率が上昇した状態をStage2として、最も血行力学的リスクが高いとし、治療の介入が必要とした。
| Powers分類 | 状態 | 脳血流(CBF) | 脳血液量(CBV) | 酸素摂取率(OEF) |
|---|---|---|---|---|
| Stage 0 | 正常 | 正常 | 正常 | 正常 |
| Stage 1 | 自動調節で血管が拡張し、血流を保っている | 保たれる | 上昇 | 一定 |
| Stage 2 | 血管拡張が限界を超え、血流が低下(misery perfusion) | 低下 | 拡張は限界 | 上昇 |
(Maddula 2017の表に基づく。Stage 2のmisery perfusionは脳卒中のリスクを高めるとされる)
SPECT(脳血流シンチ)による評価
Kurodaらは、一側性の大脳虚血において、
- 安静時脳血流量の低下
- アセタゾラミド負荷後の脳循環予備能障害
の組み合わせから病型分類を行い血行力学的リスクを推定する。
| 分類 | 安静時脳血流量 | 脳血管反応性 |
| Type1 | → | → |
| Type2 | → | ↓ |
| Type3 | ↓ | ↓ |
| Type4 | ↓ | → |
このうち安静時血流と脳血管反応性がともに低下したType3を最もリスクが高いとした。この研究では、安静時血流と脳血管反応性がともに低下した群の内科治療下での年間脳卒中発症率は全脳卒中35.6%・同側脳卒中23.7%と他群より高く、同側脳卒中の相対危険度は8.0でした。(Stroke 32:2110-2116,2001)
症候性内頚動脈及び中大脳動脈・狭窄症に対する外科的血行再建術の有効性を検証する共同研究であるJapanese EC-IC Bypass Trial(JET study)では、
- 安静時脳血流量が80%未満かつ
- アセタゾラミド負荷後の患側の脳の脳血管反応性が10%未満
を示す脳循環予備能障害を外科的血行再建術の適応基準としている。
その後のJET-2研究でもこの血行力学的基準は妥当とされ、日本脳卒中学会の脳卒中治療ガイドライン2021では、脳循環の定量評価を行い周術期合併症が少ないことを条件に、STA-MCAバイパス術は推奨度Bとされている(Hishikawa 2022)。
また、内頚動脈狭窄に対して
- 頚動脈内膜剥離術(CEA:carotid endarterectomy)
- 頚動脈ステント留置術(CAS:carotid artery stenting)
が検討される場合にもアセタゾラミド負荷により脳循環予備能を測定する。
これが術前に行われるのはCEA後の合併症である術後過灌流症候群の発生を予測するため。
CEA前にアセタゾラミド負荷SPECTを行った内頚動脈狭窄26例では、術前の脳血管反応性が12%未満の群で術後1日目の患側血流が大きく増加し(相対増加56.6±53.2%)、12%以上の群では増加は小さかった(10.3±15.5%)。100%以上の過灌流は2例にみられた、という報告(Stroke 32:1567-1573,2001)や
頚動脈ステント留置術後の過灌流の予測因子として
- 年齢
- 術前の安静時脳血流量の患側対健側比(左右差)
- 術前のアセタゾラミド負荷による脳血管反応性
を挙げている報告(AJNR 25:1403-1408,2004)がある。
アセタゾラミド負荷SPECTの読み方:反応のパターンと盗血現象
| 負荷後の患側の反応 | 意味 |
|---|---|
| 健側と同程度に増える | 脳循環予備能が保たれている(血管にまだ広がる余地がある) |
| 増え方が小さい | 予備能の低下(すでに血管が広がっていて、これ以上広がりにくい) |
| かえって減る(盗血現象) | 健側の血管が広がる分、患側の血流が奪われる状態で、予備能の障害が高度です。頭蓋内盗血(steal)現象と呼ばれます(Sharma 2008) |
- 症候性の頸動脈閉塞でPETのPowers stage 2(酸素摂取率の上昇)だった群は、内科治療中の脳卒中が39例中12例(stage 2でない42例では3例)、同側脳卒中は11例(同2例)で、年齢補正の相対危険度は全脳卒中6.0、同側脳卒中7.3でした(Grubb 1998)。
- 負荷で血流が逆説的に下がる群は脳卒中リスクが高いとされます。ただし、Xe/CTの定量データを、SPECTのような定性的な左右比に変換して比べると、予備能低下の検出は感度61%・特異度75%・陽性的中率50%にとどまりました(Yonas 1998)。定性的な左右差だけで判断しすぎないことが大切です。
間違えやすいポイント
- 「安静時の血流が低い=予備能が低い」ではありません。安静時が低くても反応が保たれていればKurodaのType 4で、安静時と反応の両方が低いType 3が最も高リスクです。
- Tc製剤は高血流域を過小評価するため、負荷時の増加率を薬剤間でそのまま比べられません(Makino 1996)。
CEA・CAS後の過灌流症候群をどう予測するか
- CEA前に予備能を測った51例では、術前の脳血管反応性の低下が過灌流(術前比で血流100%以上の増加)の唯一の有意な独立予測因子で、反応性低下群12例中8例で術直後に過灌流がみられました。術後のSPECTで、過灌流が続いて症候化する例を拾えるとされます(Ogasawara 2003)。
- 統計画像(3D-SSP)を使った41例の検討では、脳血管反応性が保たれた26例で術後過灌流はなく、反応性が低下し血流低下も強い例で過灌流が起こりやすいことがわかりました(Hosoda 2003)。
- 過灌流症候群は、CEA後の頻度は0〜3%と報告され、同側の頭痛・高血圧・けいれん・局所神経症状を呈し、重症では脳浮腫や出血を来します。危険因子は予備能の低下、術後の高血圧、過灌流が数時間以上続くことです(van Mook 2005)。
交叉性小脳ダイアスキシス(CCD)との関係
大脳の梗塞や高度の狭窄・閉塞があると、反対側の小脳の血流が低下して見えることがあります。小脳自体の病気ではなく、大脳病変の遠隔効果です。CCDのある小脳でもアセタゾラミドへの血管反応は保たれていたと報告されており、血管の障害というより機能的な抑制と考えられます(Kim 2000)。詳しくは脳血流SPECTの遠隔効果(diaschisis)の記事をご覧ください。
脳血流が増加
- 脳梗塞亜急性期(贅沢)
- 脳塞栓の再開通時
- 発作中のてんかん(発作後もしばらくは高集積が遅延することがある。)
- 脳炎
脳血流が減少
- 脳梗塞(ただし亜急性期以外)
- 脳動脈・頸動脈の狭窄や閉塞による血流低下(血行力学的脳循環障害)
- 脳出血
- 左(右)被殻出血時の右(左)小脳
- 発作間欠時のてんかん
- 脳神経の機能低下、障害の結果として起こる血流低下(血流・酸素代謝の一致した障害)
症例 70歳代女性 急性期脳梗塞

梗塞部位に一致して、脳血流の低下が認められる。
脳血流と脳代謝の関連
- 正常ならば、脳血流と脳代謝は相関する。
- misery perfusion:代謝に比べて血流不足の状態。例)脳動脈閉塞
- luxury perfusion(贅沢灌流):代謝に比べて血流が過剰の状態。例)脳動脈閉塞再開通、脳梗塞亜急性期。亜急性期梗塞では、血流が保たれ酸素代謝が低下した領域が99mTc-ECDでは集積低下として見えることがある(Tsuchida 1994)。
認知症における脳血流シンチ
認知症を起こす疾患の典型的な血流低下部位を押さえておく必要がある。
正規化された画像を見る場合の注意点として、全脳の血流が低下する場合、全脳平均であるGLBでは、病変を過小評価することがあるので注意。
大脳半球が全体的に血流低下を認めており、小脳の血流が増大している場合は、全脳の血流が低下していると判断する。
脳血流SPECTが有用な認知症は、
- アルツハイマー病(AD)、
- FTLD、
- レビー小体型認知症(DLB)、
- 皮質基底核変性症(CBD)、
- MCI(mild cognitive impairment)など。
アルツハイマー型認知症 Alzheimer’s disease(AD)
頭頂側頭連合野(側頭・頭頂葉の外側域)の血流低下 、早期から後部帯状回・楔前部の血流低下を認める。さらに進行すると前頭連合野にも血流低下が及ぶ。
詳しくはこちらにまとめました→アルツハイマー病における脳血流シンチの画像診断は?
前頭側頭型認知症Frontotemporal dementia(FTD)・前頭側頭葉変性症(FTLD)
前頭葉、側頭葉前方部の明瞭な血流低下を認める。対照的に健常域は明瞭。
レビー小体型認知症Dementia with Lewy bodies(DLB)
後頭葉の血流低下が特徴的。あとはADほどではないが、頭頂側頭連合野の血流低下を認める。2017年のDLB国際診断基準(第4版)では、臨床的特徴と診断用バイオマーカーが明確に分けられ、レム睡眠行動異常症とMIBG心筋シンチグラフィの診断上の重みが引き上げられた。脳血流SPECTの所見は、これらと組み合わせて解釈する。
詳しくはこちらにまとめました→レビー小体型認知症(DLB)の画像診断の特徴!
皮質基底核変性症(CBD)
大脳皮質・基底核の血流低下。左右差がある。
MCI(mild cognitive impairment)
側頭・頭頂葉の外側域の血流低下。統計画像解析では、ごく早期のADで後部帯状回・楔前部の血流低下が捉えられ、MCIの段階で頭頂連合野の血流低下があるとADへ早く移行しやすいと報告されている。
ちなみにMRIが有用な認知症は、アルツハイマー病、脳血管性認知症、FTLD、正常圧水頭症、プリオン病(CJD)。
治療は、
- アルツハイマー病:アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、アリセプト®)およびケア。早期(MCI・軽度認知症)でアミロイド陽性例には抗アミロイド抗体薬(レカネマブなど)も用いられる。
- レビー小体型認知症:アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、アリセプト®)、L-dopa。
- FTLD:環境調整などの非薬物療法が中心。
- 脳血管障害:リハビリ、再発予防。
と同じ認知症でも治療法が異なるため、鑑別する必要がある。
脳血流SPECTの基本的な読影のポイント
- アルツハイマー病は認知症の原因として最多。本邦の地域調査では、次いで血管性認知症、レビー小体型認知症(DLB)の順に多い。
- 認知症の脳血流SPECTを見る上で、まず前頭葉などの前方系の血流低下が目立つか、後方系の血流低下が目立つかを見る。
- 後方系の血流低下を示す疾患は少なく、アルツハイマー病、レビー小体型認知症(DLB)、プリオン病(CJD)があげられる。一方で前方の血流低下をきたす認知症は多数あり。なので、まず後方の血流低下があるか否かをチェックする。
- 軸位断で読影するのが基本(AC-PC(前交連-後交連を結ぶ線)で再構成してもらう。)。
- まずは軸位断で診断してから、3D-SSPで答え合わせをするという流れ。
- 正常では一次感覚運動野は周りと比べてやや集積低下を認めるが、アルツハイマー病だとむしろ周りより高く写る。
- 横断像の1断面で判断せず、低下していると思うところは冠状断像や矢状断像でもチェックする。
例)DLB疑いで撮影した場合、後頭葉の低下を見に行くが、左右のずれで低下しているものかどうかをチェックするためにsagittalもチェックする。 - (びまん性に集積低下するのはアルツハイマー病では考えにくい。)
※DLBではADと類似の血流・代謝低下パターンを呈するが、認知機能障害の程度の割に、全脳での血流・代謝低下が強く、ADでは見られない後頭葉一次視覚野で低下が見られるのが特徴。MCIの段階でも、SPECTで後頭葉の血流低下を目で見て判定すると、レビー小体病によるMCIとADによるMCIを感度100%・特異度73.2%で区別できたと報告されています。後部帯状回が相対的に保たれるcingulate island signもSPECTで評価でき、最適化した比で感度92.3%・特異度76.9%でした。
脳血流シンチでよくある疑問(Q&A)
Q. IMPとECDはどう使い分けますか?
A. 脳循環予備能(アセタゾラミド負荷)の評価では、高血流域の増加をとらえやすい123I-IMPが向いています(Makino 1996)。99mTc-ECDは注射後すぐに分布が固まるため、先に注射して後から撮影でき、統計画像解析では薬剤ごとの正常データベースで比べます(Koulibaly 2003)。
Q. 正常の脳血流シンチはどう見えますか?
A. 灰白質(大脳皮質・基底核・視床)と小脳に多く集まり、白質は低く見えます。薬剤ごとに集まり方の癖があるため、同じ薬剤の正常像と比べて読みます(Ito 2006)。
Q. アセタゾラミドで血流がかえって下がる「盗血現象」とは何ですか?
A. 負荷で健側の血管が広がる一方、患側の血流が奪われて下がる現象で、脳循環予備能が高度に障害されている状態です。脳卒中のリスクが高い群として扱われます(Yonas 1998、Sharma 2008)。
Q. 脳循環予備能が低いと、なぜ術後に過灌流が起こりやすいのですか?
A. 予備能の低下はCEA後の過灌流症候群の危険因子で、自動調節の障害が関わると考えられています(van Mook 2005、Ogasawara 2003)。そのため術前にアセタゾラミド負荷で確認します。
Q. 片側の小脳だけ血流が低いのは、小脳の病気ですか?
A. 反対側の大脳に梗塞などがあれば、交叉性小脳ダイアスキシスの可能性があります。小脳の血管反応は保たれていることが多く、大脳側の病変を探します(Kim 2000)。
片側の手足の麻痺、ろれつが回らない、急なもの忘れなどがあるときは、すぐに医療機関を受診してください。
関連記事:脳血流SPECTの遠隔効果(diaschisis)とは?交叉性小脳ダイアスキシスと二次変性
脳血流SPECTを読む4つのステップ(製剤の確認から統計画像まで)
製剤によって集まり方に癖があるため、読み方には順序があります。認知症の読影を例に整理します。
| ステップ | 確認すること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 製剤と撮影条件 | 123I-IMP、99mTc-ECD、99mTc-HMPAOのどれか。撮影のタイミング | 製剤ごとに分布が違うため、正常像や統計画像の基準データは同じ製剤のものを使います(Koulibaly 2003)。IMPは分布に時間がかかり、再分布もあります |
| 2. 全体の血流と正規化 | 全脳の血流が下がっていないか | 全脳平均で正規化すると、全体が低下している場合に病変を過小評価することがあります。小脳の血流が相対的に増えて見えるときは、全脳の低下を疑います |
| 3. 目視(軸位断) | 前方(前頭)が主体か、後方(側頭・頭頂・後頭)が主体か | 後方の低下を示す疾患は、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、プリオン病(CJD) |
| 4. 統計画像で答え合わせ | 3D-SSP、eZISなどのZスコア画像 | ごく早期のアルツハイマー病と健常者の判別で、後部帯状回・楔前部を3D-SSPで解析した正確さは86.2%、目視では74.0%を超えませんでした(Imabayashi 2004) |
統計画像は目視を補う道具です。目視で気づかなかった軽い後部帯状回・楔前部の低下を見つけやすくなります。ただし、薬剤や撮影条件が違うデータを混ぜて比べると、誤った結果になるため、元の画像も見直します。
前頭側頭型認知症の診断でのSPECTの限界
前頭側頭型認知症(FTD)とアルツハイマー病を区別する脳血流SPECTの感度は56〜88%、特異度は51〜93%と報告の幅が大きく(35研究・3142人のレビュー)、SPECT単独では臨床診断より優れているとは言えません。臨床情報と組み合わせると診断の精度が上がる可能性があり、FDG-PETが使えないときなど、診断に迷う例で用いるのが勧められています(Athanasio 2024)。
間違えやすいポイント
- 血流低下の場所が似ていても同じ病気とは限りません:後方の低下は、アルツハイマー病、DLB、CJDのいずれでもあり得ます。後頭葉の一次視覚野まで低下していればDLBを考えるなど、分布の違いで絞ります。
- 正常像は製剤で違います:他院の画像や別の薬剤の正常像と比べて異常と決めつけないようにします(Ito 2006、Koulibaly 2003)。
- 統計画像の「色」だけで判断しない:正規化の方法や基準データによって、色の付き方が変わります。
脳血流シンチでよくある疑問(Q&A、続き)
Q. 認知症の検査で、MRIとSPECTはどう使い分けますか?
A. MRIは脳の萎縮や血管の病変、水頭症などの形の異常を見ます。脳血流SPECTは血流の分布から、アルツハイマー病、DLB、FTDなどのパターンを推定します。どちらか一方ではなく、臨床症状と合わせて使います。
Q. 検査は痛いですか?
A. 薬を静脈から注射して、横になって撮影します。アセタゾラミドを使う負荷検査など、検査の内容は目的や施設で異なるため、検査前の説明に従ってください。
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