先に結論:子宮筋腫の赤色変性
- 赤色変性は、子宮筋腫の静脈がつまって起こる出血性梗塞で、妊娠中・産後に多く、急な強い下腹部痛・発熱を起こします
- MRIでは筋腫のふちがT1強調像でリング状に白く(出血)、造影しても筋腫全体が染まらないのが特徴です(単純CTで高吸収のことも)
- 多くは鎮痛薬などの保存的治療で軽快しますが、有茎性筋腫の茎捻転・卵巣捻転・虫垂炎などほかの急性腹症との区別が大切です
※妊娠中や筋腫のある方で急な下腹部痛があるときは、すぐに受診してください。
子宮筋腫赤色変性
- 子宮筋腫はさまざまな変性をきたすが、その中で子宮筋腫赤色変性は臨床所見や画像所見に特徴がある変性である。
- 割面が暗赤色を呈するためこう呼ばれる。
- 筋腫の静脈閉塞による出血性梗塞。
- 妊娠中に起こりやすい。
- 変性子宮筋腫部の疼痛が強く発熱を伴うこともある。
- この赤色変性と有茎性筋腫の茎捻転は共に急性腹症の原因となりうる。
- 子宮が急激に増大する妊娠中の急性腹症の発症が多い。
- 出産や中絶直後にも起こりうる(経口避妊薬の使用に関連した出血性の筋腫の報告もある(Myles 1985))。子宮筋腫が指摘されている患者が急激な腹痛で来院した場合には必ず鑑別診断として考慮する。
【赤色変性の病態生理】
妊娠中や子宮筋腫の急激な増大などにより、筋腫の静脈還流が障害される (筋腫周囲の静脈が引き伸ばされる・圧排されることで)
→静脈圧の上昇 → 毛細血管うっ血 → 出血成分の漏出・浸潤
→動脈血流も低下し、組織が虚血状態に
→梗塞+うっ血性出血 = 出血性梗塞
→筋腫が壊死・変性し、暗赤色に変化(=赤色変性)
子宮筋腫赤色変性のMRI画像所見
- 筋腫の出血性梗塞の所見を来す。
- まず静脈性梗塞を来すため、初期には筋腫辺縁を縁取るT1WI高信号(メトヘモグロビン)、T2WI低信号(デオキシヘモグロビン)を認める。血栓閉塞した静脈内の凝血した赤血球(細胞内メトヘモグロビン)を示す。
※出血からの時期によって信号は変わる。症状出現から7〜20日の5例では、全例でT1WI高信号・T2WI低信号の辺縁リングがみられた(Kawakami 1994)。 - 筋腫内部は、出血性梗塞を反映しT1WIで時間経過とともに高信号化する。T2WIはさまざま。手術で確認された15例の検討では、病理で全例が凝固壊死で、T1強調像の辺縁高信号リングは47%にとどまり、残りは全体が高信号でしたが、磁化率強調像(SWI)では全例で辺縁の低信号リングがみられました。
- やがて動脈血も低下し、筋腫全体の造影増強効果が欠如する。
- 単純CTでは赤色変性部位が、高吸収を示す。
子宮筋腫のCT所見(単純・造影)
- 別の目的のCTで偶然見つかることが多く、子宮の輪郭を変形させる境界明瞭な腫瘤として見えます(Casillas 1990)。
- 単純CT:子宮筋層とほぼ同じ濃さで、粗い石灰化があれば筋腫を考えやすい。赤色変性では高吸収のことがある。
- 造影CT:筋層と同程度〜不均一に染まり、変性・壊死部は造影されない低吸収域になる(Casillas 1990)。
子宮筋腫の変性の種類とMRI所見
変性筋腫(変性子宮筋腫)とは、大きくなった筋腫の血流が追いつかず、内部が変化したものの総称です(Murase 1999)。
| 変性 | 頻度 | MRIの特徴 |
|---|---|---|
| 硝子変性 | 60%以上と最も多い | T2強調像で低信号のまま、造影効果が弱い |
| 嚢胞変性 | 約4% | T2強調像で水のように高信号、造影されない |
| 粘液変性 | — | T2強調像で著明な高信号 |
| 赤色変性 | まれ | T1強調像で辺縁(または全体)が高信号、全体が造影されない |
| 石灰化 | 約4% | MRIでは無信号、CTで高吸収 |
頻度はUeda 1999。
症例 40歳代女性

T1強調像でリング状に辺縁を中心に高信号を認めています。
造影剤を用いた造影T1強調像では、腫瘤には造影効果を認めておらず、子宮筋腫の赤色変性と診断されました。
あわせて読みたい:子宮嵌頓(妊娠子宮の後屈嵌頓)とは
参考文献
- Kawakami S, Togashi K, Konishi I, et al. Red degeneration of uterine leiomyoma: MR appearance. J Comput Assist Tomogr. 1994;18(6):925-8. PubMed
- Takeuchi M, Matsuzaki K, Bando Y, et al. Evaluation of Red Degeneration of Uterine Leiomyoma with Susceptibility-weighted MR Imaging. Magn Reson Med Sci. 2019;18(2):158-162. PubMed
- Murase E, Siegelman ES, Outwater EK, et al. Uterine leiomyomas: histopathologic features, MR imaging findings, differential diagnosis, and treatment. Radiographics. 1999;19(5):1179-97. PubMed
- Yoshida R, Makihara Y, Miyamoto A, et al. Acute abdomen by red degeneration of a parasitic leiomyoma: A case report and literature review. Radiol Case Rep. 2024;19(4):1533-1536. PubMed
- Myles JL, Hart WR. Apoplectic leiomyomas of the uterus. A clinicopathologic study of five distinctive hemorrhagic leiomyomas associated with oral contraceptive usage. Am J Surg Pathol. 1985;9(11):798-805. PubMed
- Casillas J, Joseph RC, Guerra JJ Jr. CT appearance of uterine leiomyomas. Radiographics. 1990;10(6):999-1007. PubMed
- Ueda H, Togashi K, Konishi I, et al. Unusual appearances of uterine leiomyomas: MR imaging findings and their histopathologic backgrounds. Radiographics. 1999;19 Spec No:S131-45. PubMed
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